記事制作:税経システム研究所

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2018/09/03

質問

中規模の化学薬品工業を営む「ミロク・ケミカル」。この会社では、2年前に転売する目的で100万円で仕入れた特殊な原料が、この2年間に値崩れして、卸売価格は60万円前後で推移しています。そこに、ある会社からこの原料を70万円で購入したいというオファーが来ました。あなたが経営者ならば、この商談にどう対応しますか?

パターン1

100万円で買った原料を70万円で売っては、30万円の損失なので断る。

パターン2

卸売価格が平均60万円のところ、70万円で販売できるのだから受ける。

パターン3

100万円で買った原料はそのままにして、新たな原料を60万円で仕入れ、70万円で売却する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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投資と回収のルールが明確に

中規模の化学薬品工業を営む「ミロク・ケミカル」では、様々な投資とその回収に対して明確なルール作りを行うことができ、業績も着々と伸ばしています。

しかし、半年前のミロク・ケミカルはこのような状態ではありませんでした。

半年前 ~売るべきか? 売らざるべきか?

半年前のある日のことです。

従業員 社長、2年間塩漬けになっているあの原料、あれを買いたいってお客さんから問い合わせが来ています!
社長 えっ、それは本当かい? で、いくらで買いたいって?
従業員 70万円です
社長 70万円? あの原料は確か……
従業員 先ほど確認したら100万円で購入しています
社長 ありゃあ、こりゃ大損だな
従業員 でも、卸売価格は60万円に下がっているんですが……
社長 おいおい、売るべきか? 売らざるべきか? どっちにしたらいいんだろう?
 

質問

中規模の化学薬品工業を営む「ミロク・ケミカル」。この会社では、2年前に転売する目的で100万円で仕入れた特殊な原料が、この2年間に値崩れして、卸売価格は60万円前後で推移しています。そこに、ある会社からこの原料を70万円で購入したいというオファーが来ました。あなたが経営者ならば、この商談にどう対応しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

100万円で買った原料を70万円で売っては、30万円の損失なので断る。

パターン2

卸売価格が平均60万円のところ、70万円で販売できるのだから受ける。

パターン3

100万円で買った原料はそのままにして、新たな原料を60万円で仕入れ、70万円で売却する。

100万円で買った原料を70万円で売ると、30万円の損失となります。確かに、オファーを断れば、決算書上30万円の損失が計上されるのを回避することはできます。しかし、この計算を根拠に断ってしまってよいのでしょうか?

ミロク・ケミカルが選んだのはこのパターンでした。売る・売らないの意思決定は、過去に支出してしまった100万円に影響されてはならないのです。売る・売らないを決める場合の計算には、機会原価を使用します。どういうことかというと……

この方法であれば、確かに10万円の利益を得ることができますが、過去に購入した100万円の原料は塩漬けになったままです。目先の利益を追求し、過去の意思決定の失敗に決着を付けないことは、正しい経営判断といえるでしょうか?

社長を動かしたのは築地市場の移転問題だった

社長の心の声 <あー困ったな。来週中には返事すると言ったが、どうしよう>
社長は自宅でビールを飲みながら、何気なくテレビを見ていました。
コメンテーター 築地市場が2018年の10月に豊洲に移転することになりましたが、これはね、当然なんですよ。だって、豊洲市場にこれまでいくら税金を注ぎ込んだのか。もったいなくてしょうがない
経済学者 おっと、それは聞き捨てなりませんね。新しいことを決めるのに、過去の支出額は問題にならないんです。豊洲に移転するのは、将来のことを考えて、豊洲の方がいいと決めた訳で、過去の税金の投入額は関係ないんです
コメンテーター もう、訳の分からないこと言わないでちょうだい! ふん

このとき社長は思ったのです。

社長の心の声 <コメンテーターの方が分かりやすいが、なんでこの先生、こんなに自信たっぷりなんだ? 過去の支出額は関係ないだって? これは話を聞かなきゃな>

このコメンテーターが社長と出身校が同じというよしみで、すぐに経済学者に話を聞くことができました。

経済学者 お話はよく分かりました。社長は会計上の利益と経済的な利益の違いがよくお分かりになっていないようですね。会計上の利益は利害調整に向いていますが、意思決定には向いていないのです
社長 すいません。もう少し分かりやすくお願いします
経済学者 会計上の利益の計算は次のようになります

そう言って見せたのがこの表です。

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社長 会計上の利益で見れば、売却しない方がいいようですが……
経済学者 これは100万円の支出がおもてに出ることを先送りにしているだけで、根本的な解決になっていないんですよ!
社長 えっ、そうなんですか?
経済学者 売却すると過去に支出した100万円が費用として表に出てしまいますが、この100万円の支出は既に行われてしまっている訳でして、売却しようがしまいが今更消しようがないんです。つまり、意思決定には無関係なんですよ。そういう意味で“埋没原価”なんて呼ばれるんですがね
社長 そうなんですね
経済学者 さて、次に経済的な利益なんですが、こちらの計算は次のようになります

そう言うと、今度は別の表を見せたのです。

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経済学者 この計算では、選択しなかった方の選択肢から得られるはずの収益を原価として認識します。“機会原価”というんですが、この機会原価は意思決定に関係するんです。「売却する」を選択すると「売却しない」が選択できない、逆もまたしかりです。意思決定にあたっては、機会原価を考慮した経済的な利益が優先されます
社長 ということは、70万円で売るというのが、正解ということですね?
経済学者 そういうことです
社長 なるほど、分かりました。そういえば、うちには塩漬けになっている案件が他にもあったな、よし、改革だ!

 

【ワンポイント解説】
「機会原価」
経営資源をある目的に使用すると、他の目的で使用することは断念せざるを得ません。機会原価は、ある選択肢を選ぶことで断念する選択肢から得られるはずの最大価値(最大の逸失利益)に基づいて測定されます。
関連リンク本記事の中に出てきた「埋没原価」(サンクコスト)について知りたい方はコチラの記事もご覧ください。「新規エリアへの営業拡大をするか否か、正しい判断に導いた経理部長の一言とは?」(経営センスチェック 2017/8/23号) 「製造ライン存続か撤退か。社長を決断させた、クリスマス前の出来事とは?」(経営センスチェック2016/11/23号)
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