第32回 社会保険の適用拡大2

2022年8月31日

 前回の労務管理トピックスでは、2022年10月1日より一部のパート・アルバイト等(以下「パート等」という)の社会保険の加入義務化について解説いたしました。今回は、同じく社会保険の加入が義務化される、士業の個人事務所について、また、その他の問題点について解説いたします。 

 社会保険の強制適用事業所(現行)

 現行の制度では、法人の事業所については、常時使用される従業員(役員を含む)が1人以上いれば、業種を問わず社会保険の強制適用事業所となります。この場合、代表者1人しかいない事業所でも、報酬を受けていれば当然に強制適用事業所として、代表者本人も被保険者となります。一方で、個人事業所については、法定16業種に該当する事業所で、常時5人以上従業員がいる場合のみ強制適用事業所となります。またこの場合、代表者本人は報酬を受けていたとしても被保険者にはなりません。

 新たな強制適用事業所

 前述の法定16業種に加え、2022年10月1日から常時5人以上の従業員がいる士業の個人事務所についても、新たに強制適用事業所となります。適用の対象となる士業及び被保険者となる者は図表2の通りです。
 元々士業の事務所は、法人化に際して制度上一定の条件があったり、そもそも法人化が不可能な業種(公証人、海事代理士)もあることから、多くの従業員が社会保険に加入できずにいます。

 このような現状を踏まえて、2020年改正法により2022年10月から「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」が社会保険の適用業種に含まれることになりました。

社会保険の適用拡大における問題点

 社会保険の適用拡大は、「将来の年金額が増える」「傷病手当金等の給付金が受けられる」等の被保険者にとってのメリットがあります。また、配偶者が自営業の場合は、世帯で支払う保険料が少なくなる可能性が高いです。一方で、配偶者がサラリーマン等である場合は、扶養から外れてしまい、さらに扶養家族がいる場合に支給される家族手当等が支給されなくなってしまう等のデメリットもあります。このあたりは、前回の労務管理トピックスでも説明した通り、事前に新たに被保険者となる従業員と十分に話し合う必要があります。
 社会保険の適用拡大による企業側のメリットとして考えられるのは、従業員のモチベーションアップや、今まで扶養の枠にとらわれて仕事をセーブしていた優秀なパート等が、これを機に大きな戦力となる可能性があることです。
反面、毎月の保険料の会社負担分が増加するデメリットがあります。新たに被保険者となるパート等に支払っている給与額の、およそ15%の負担増になりますので、パート等を多く雇用する企業にとっては、死活問題になる可能性があります。
 このように社会保険の適用拡大は、被保険者にとっても企業にとっても少なからず影響を及ぼすことが予想されていますので、企業としてどのような対策を講じればよいか、1日も早く様々な角度から検証することをお勧めいたします。

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