記事制作:税経システム研究所

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2018/08/13

質問

産業用のAIロボットを製造・販売するベンチャー企業を立ち上げようとしている経営者。自社の会計処理の基準を定めるにあたって、売上計上のタイミングを決めかねています。あなたなら、売上をいつ計上することにしますか?

パターン1

取引先から受注した段階で売上を計上する。

パターン2

自社工場から製造ロボットを出荷した時点で売上を計上する。

パターン3

取引先が当社の出荷した製造ロボットを検収した時点で売上を計上する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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増収増益で銀行借入も少ないベンチャー企業

産業用のAIロボットを製造・販売するベンチャー企業「みろくロボット」の社長は、大学院卒業後、大手メーカーでAI(人工知能)の研究員として働き、その後、仲間とともに同社を創業しました。

創業当時はなかなか売上が計上できず苦しい時期もありましたが、創業から3年が経った今では、売上も利益も順調に伸びています。また銀行借入も少なく、社長は安心して新技術の研究ができています。

今でこそ順調に成長しているみろくロボットですが、創業当時はある問題で大変悩んだものでした。

3年前の創業時 ~「売上の計上タイミング? そんなことは顧問税理士に任せますよ! 」

社長が前職を退職し、同じ研究員の仲間や営業経験のある友人らと一緒に会社設立の準備を始めたときのことです。顧問税理士から質問をされました。

顧問税理士 会社設立の諸手続きは概ね目途がつきました。ところで、売上の計上基準はどうされますか?
社長 売上の計上基準って?
顧問税理士 つまり、いつ売上を計上するか、というタイミングのことです
社長 ああ、売上の計上タイミングですか、そんなことは先生に任せますよ! 私はAIの技術者なので会計のことは全く分からないんです
顧問税理士 社長。あなたは技術者ですが、これからは経営者でもあるわけです。会計が分からないでは済みませんよ。そもそも、売上をいつ計上するかという問題は、顧問税理士ではなく経営者が判断するものですよ
社長は今まで会計の勉強などしたことがなかったので、会計処理に経営者の判断が必要などということは考えもしませんでした。

質問

産業用のAIロボットを製造・販売するベンチャー企業を立ち上げようとしている経営者。自社の会計処理の基準を定めるにあたって、売上計上のタイミングを決めかねています。あなたなら、売上をいつ計上することにしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

取引先から受注した段階で売上を計上する。

パターン2

自社工場から製造ロボットを出荷した時点で売上を計上する。

パターン3

取引先が当社の出荷した製造ロボットを検収した時点で売上を計上する。

受注残高を管理することは経営上は重要ですが、取引先から受注があっただけでは、製品を引き渡していませんから一般的な会計のルール上、売上を計上できません。売上を計上できるタイミングをもう一度よく考えてみる必要がありそうです。

製品を出荷した時点で売上を計上している会社も多いと考えられます。しかし、産業用ロボットの場合、出荷してから取引先の検収が完了するまでに相当の時間がかかり、売上計上後に問題が生じる可能性がありますから、出荷時点で売上を計上するのは少しリスクがあるかもしれません。

実は、みろくロボットの社長はパターン3を選びました。なぜ取引先の検収が終わるまで売上の計上を待つことにしたのでしょうか……。
 

先に起業していた先輩の失敗から学ぶ

社長は、顧問税理士から売上の計上基準を聞かれた翌週、同じ大学院でAIの研究をしていた先輩と食事をすることになりました。先輩は社長と同じように産業用のAIロボットを製造する企業を立ち上げて、すでに3年が経っていました。

社長 雑誌で先輩の会社の記事を見ました。猛烈に売上が伸びているそうですね
先輩 まぁ、おかげさんで順調に売上は伸びているんだが、すべてが順調というわけでもないんだよ
社長 えっ、何か問題でもあるんですか?
先輩 売上が増えるのはいいんだが、売掛金の回収が進まなくて、どんどん銀行借入が増えてしまって困っているんだ
社長 取引先が支払ってくれないってことですか?
先輩 違うんだ。取引先での製品の検収に時間がかかるんだ。産業用ロボットは、いろいろと現場での微調整が必要になるだろう。うちの会社は製品を工場から出荷した時点で売上を計上しているんだが、出荷から検収までがこんなに長くなるとは思わなかったんだ
社長 でも、先輩の会社の社員が取引先に行ってしっかり検収作業を手伝えば、すぐに検収なんて終わるんじゃないんですか?
先輩 そこが問題でね。うちの社員が皆、売上目標を達成しようと頑張ってくれるのはいいんだが、出荷して売上が計上されたら、その製品の検収を頑張って終わらせようというモチベーションは働かなくなるみたいなんだ
社長 売上が計上されれば、検収は後処理になってしまう。だから、売上が計上できても、検収が終わらず、売掛金がいつまでも入金されないってことですか……
先輩 ただ、うちの会社の売上がここまで急成長できたのは、売上を出荷基準にして、売上目標をみんなが必死に追ってくれたからでもあるんだが……
社長は先輩と会ったあと、自宅へ向かって歩きながら思いました。
社長の心の声 <出荷時点で売上を計上したほうが売上は早く計上できる。しかし検収に時間がかかる場合には売掛金がたまってしまう。うちの会社のように検収に時間がかかる製品の場合は、検収時点で売上を計上するべきなんだ。そうすれば売上の計上時期は遅くなるが、中長期的に見れば検収を早くしてもらおうとするモチベーションができて健全なはずだ>

こうして、会計基準がもたらす動機づけの効果を理解した社長は、顧問税理士に連絡し、検収基準で売上を計上することにしました。その結果、創業当初は伸び悩んだ売上もその後は順調に拡大しました。また売掛金は比較的早く入金されるので、銀行借入もそれほど増やさずに済んだのです。さらに社員が皆、検収をていねいかつスピーディに行ったため、取引先の満足度も高まりました。

一方、先輩の会社は、その後、借入の利息を支払うために借入をするという不健全な状態に陥り、また取引先からのクレームや返品も増えてしまい、すっかり勢いを失ってしまいました。

社長の心の声 <会計処理なんて何でもいいと思っていたが、実は会計処理によって経営が大きく変わることがあるんだ。経営者が会計を知らないといけないと言っていた顧問税理士さんの言葉がやっと分かったぞ>

 

【ワンポイント解説】
「会計基準がもたらす動機づけの効果」
採用する会計基準によって従業員の行動が変わることがあります。会計基準を決定する際はこの動機づけの効果を考えることも重要です。なお、売上計上のタイミング(売上の計上基準)は、業種や取引形態などによって異なりますから、自社に適した基準を採用するべきです。
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