やる気あふれる若手社員ばかり退職! 社長の対策とは?

2017年7月3日

不動産業

  • 不動産業
2017/07/03

質問

会社のことを真剣に考えてくれる期待の若手社員が、部長や課長のパワハラを口に出せずに辞めていく会社。あなたが経営者なら次のうちどのような対策をしますか?

パターン1

社長と若手社員のランチ会を定期的に開催し、意見交換をする。

パターン2

目安箱を作り、社長が定期的に中身をチェックする。

パターン3

社内の問題を、顧問弁護士に通報できる制度を採用する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
イメージ01
イメージ02

社員の離職率が改善し、ノウハウが定着している会社

「みろく不動産」は、社長が、大学卒業後に大手不動産会社に就職し、7年前に気の合う仲間たちと一緒に創業した会社です。全ての取締役が創業メンバーで、会社の中長期的な成長のために活発な議論をする、風通しの良い会社です。また若手社員は、大企業に負けない会社にしたいと、高い志を持って頑張っています。社員の離職率は極めて低く、その結果、社内にノウハウが蓄積され、既に証券会社から株式上場の提案なども受け始めています。
 
このように、順風満帆のみろく不動産ですが、ほんの2年前までは熱意ある若手社員の退職が止まらず役員が頭を悩ませていたのです。

2年前 ~部長と課長のパワハラに耐え切れず、若手社員が次々と退職

2年前のある日、社長が一人で取引先から会社に戻る途中、3カ月前にみろく不動産を退職した若手社員に声をかけられました。

A君 社長、お久しぶりです! お元気ですか?
社長 あっ、A君。久しぶりだね。その後、転職先は決まったのかい?
A君 はい。おかげさまですぐに良い会社が見つかり、今は毎日がとても楽しいです
社長 それは良かった。君が退職したあと、うちでは若手社員が5人も退職してね。うちは若手に希望を与えられない会社なんじゃないかと心配してるんだよ
A君 いえ、社長はじめ創業メンバーの役員の皆さんは私の憧れでした。ただ……
社長 ただ、何だい?
A君 私から聞いたことにしないでいただきたいのですが、実は部長や課長のパワハラに耐えられなくて……
社長 えっ、パワハラ?
A君 私は毎月何十時間も残業していたのに、部長から3万円分以上の残業はつけるな、って言われたんです。他にも、頑張って獲得した受注を課長に横取りされたり、予算達成できないやつはクズだって罵倒されたり……
社長 何てことだ……。以前から部長や課長の離職率は低いのに、その下の若手社員ばかり退職するので、彼らの指導に何か問題があるのかと気にはなってたんだが……
A君 社長、ぜひ、若手がパワハラやセクハラを口に出せる仕組みを作ってあげてください。労基署や裁判所に駆けこまれるリスクもありますし、それが世間に広まるとブラック企業と呼ばれる可能性もあります

質問

会社のことを真剣に考えてくれる期待の若手社員が、部長や課長のパワハラを口に出せずに辞めていく会社。あなたが経営者なら次のうちどのような対策をしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

社長と若手社員のランチ会を定期的に開催し、意見交換をする。

パターン2

目安箱を作り、社長が定期的に中身をチェックする。

パターン3

社内の問題を、顧問弁護士に通報できる制度を採用する。

社長が定期的に若手社員を数名集めて、ランチをしながら意見交換をするのは、良いコミュニケーションの場になります。しかし、その場で上司のパワハラなどの問題を話すことは勇気が必要かもしれません。

パワハラの問題や不正などの発見につながるよう、社内に目安箱を設置することも考えられます。社員の意見やアイデアを募るためにも良い方法です。ただ、社内設置のため投書に気付かれたり情報がもれたりするなどして、上司に握りつぶされ改善につながらないおそれや、投書した本人がかえって不利益をこうむるおそれもありますので、その辺りの配慮をしないと効果が得られないかもしれません。

実は社長が行ったことはパターン3でした。社長は社内ではなく社外に通報できる制度を作ることにしたのですが、その理由は何だったのでしょうか……

言いたいことを言えず、辞めるしかなかった

翌週の取締役会の場で、社長は創業メンバーである役員らに、A君から聞いた部長や課長のパワハラの話をしました。すると……。

マーケティング担当役員 なるほど。若手が申告してくる残業時間が少な過ぎるんじゃないかって思っていたんだが、そういう理由だったのか
営業担当役員 実は、営業部長が会議室で若手を怒鳴り散らしてるってうわさは聞いたことがあったんだが……。もっとしっかり注意するべきだったか……
社長 もしかしたら、全ての問題は、われわれ役員が業績アップを求め過ぎたことにあったのかもしれないな……
管理担当役員 うちの事業は十分成長性があるから、少し成長スピードを落としてでも、社員が働きやすい会社にすることを考えたほうが良さそうだ
社長 そうだな。そのためにも、助けを求める社員を救える仕組みが必要だと思うんだが、何かアイデアはないか?
管理担当役員 私の知り合いの社長は、若手社員数名を集めて月に一度ランチ会をして、そこで意見を聞くということをやっているそうだが、うちでもやってみてはどうだろう
営業担当役員 得意先で目安箱を置いたところがあるんだが、どうだろう。結構いろいろな意見が出るらしい
マーケティング担当役員 顧問弁護士に通報できる内部通報制度はどうだろう。大企業の不正が内部通報で発覚するそうじゃないか
社長 どの方法も良さそうだが、社員同士が監視し合ったり、告げ口したり、そんなことを助長しないようにしないとな
管理担当役員 しかし、もし不正や不祥事が防止できずに、発覚したときには大きな問題となっていたら、相当な損失が出ることになって、会社の存続にもかかってくる。実際、大手上場企業でも、不正が発覚して大変な赤字を計上し、存続の危機にひんしている会社があるからな……
社長は、ことの重大さを改めて感じながら、役員から出てきた「若手とのランチ会」、「目安箱」、「内部通報制度」のどれが良いのか、次回の取締役会までじっくり考えることにしました。

若手の気持ちは、若手に聞く

その週末、社長が自宅に帰ると、社会人になりたての息子と娘がちょうど遊びに来ていました。

社長 ちょっと二人に聞きたいんだが、もし会社で上司からパワハラやセクハラを受けたら、どうやってそれをやめさせたらいいと思う? 例えば、社長と若手社員のランチ会議で社長に話すとか、目安箱に投書するとか、顧問弁護士に内部通報するとか
息子 ランチ会は社長の考えを聞いて、自分の意見を言う場でしょ。パワハラの話をしても、今はそんなことを話すときじゃない!ってしかられそうで躊躇(ちゅうちょ)するかもな
目安箱も悪くないけど。上司のセクハラを目安箱に入れたりしにくいわ。だって、当人が、その投書を見つけて、握りつぶすかもしれないし、投書する姿を見られたら“いじめ”にあうかもしれないじゃない
息子 パワハラやセクハラは、社内の人に訴えても、握りつぶされそうだからね。確かに外部の人に通報するっていうのは、いいかもしれないな
社長 でも、外部の人に通報なんて勇気がいると思うが、できそうかい?
息子 むしろ、外部の人にだからこそ、気にせず訴えられるんじゃないかな
そうよね。まぁ要するに、社長とのランチも目安箱も、内部通報制度も全部あればいいんじゃないの? 社員にとってはいろいろな形で、自分の意見を言ったり、助けを求めたりできる仕組みがあるというだけで心強いはずよ
息子 問題は、その仕組みがあることを社員にしっかり知らせることだよ。結構、会社のそういう仕組みを知らない社員は多いから。例えば、社内に大きなポスターを貼って、困ったことがあったらここへ連絡を、って書くとかね

社長は次の取締役会で、内部通報制度を導入することを伝えました。そして、内部通報制度に加えて、社長とのランチ会や目安箱など、社員が意見やアイデアを発言しやすい仕組み作りと、それを社員に周知徹底させる方法について、夜遅くまで議論しました。

【ワンポイント解説】

「内部通報制度」

通報窓口を設置し、社員がそこにパワハラやセクハラ、また不正や不祥事などを通報できるようにする制度で、通報窓口は会社外部の弁護士や通報窓口運営会社などにする場合があります。外部に窓口を置くことで、経営陣自らの不正などにも効果があります。また、問題の発見だけでなく、問題発生の予防にもつながります。

おすすめ情報

MJS税経システム研究所『公式Xアカウント』を開設しました!

税経X

経営センスチェックの最新記事が公開されたらXでお知らせします。
また、経営に役立つさまざまな情報もXから気軽にお届けしていきますので、ぜひフォローをよろしくお願いいたします!

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら