記事制作:税経システム研究所

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2019/02/23

質問

赤字が続いているメーカー。思い切って大赤字の事業から撤退することで黒字にすることができると思っています。この経営者が見落としていることとは?

パターン1

事業から撤退することで顧客からの信用を失うことを見落としている。

パターン2

事業から撤退することで社員のモチベーションが下がることを見落としている。

パターン3

事業から撤退しても削減できない費用があることを見落としている。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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3年ぶりに黒字化した会社

「みろく精密工業」の社長が、集まった社員を前に、ついに3年ぶりに黒字化したことを発表しました。社員たちは皆、大喜びです。
 
新規事業を縮小し配置転換を行うなど既存事業の強化に取り組んだことで、今でこそ息を吹き返すことができたみろく精密工業ですが、2年前に赤字事業から撤退しようとしたときは大変だったのです。

2年前 ~赤字事業から撤退すれば黒字になるはずだ!

当時のみろく精密工業では、新たな顧客を開拓しようと数年前に始めた新規事業が曲がり角に来ていました。この新規事業を始めたとき、そのための設備を新たに購入するとともに、数名の技術者を中途採用したのですが、その後売上が思うように伸びていなかったのです。

既存事業が好調だったこともあり、全社で利益は計上できていたのですが、ついに前期は全社合計で赤字になってしまったのです。そのため、銀行から追加融資が難しくなってきていると言われ、社長はついに不振の新規事業から撤退することも考え始めました。ただし、社員のリストラなどはせず、撤退のタイミングなどは関係者と調整しつつ決めようと考えてはいました。

みろく精密工業では全社の業績はつかんでいましたが、事業別に精緻な業績をつかんではいませんでした。そのため、経理部長にザックリとではありますが新規事業の損益状況を算出してもらいました。

社長の心の声 <前期は全社の赤字が20百万円。そのうち新規事業の赤字がだいたい30百万円か。残念だが新規事業から撤退して10百万円の黒字にするしかないんじゃないのか?>
赤字事業から撤退することで黒字化できると思っている社長。彼が見落としていることとはいったい何でしょうか。

質問

赤字が続いているメーカー。思い切って大赤字の事業から撤退することで黒字にすることができると思っています。この経営者が見落としていることとは?

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パターン1

事業から撤退することで顧客からの信用を失うことを見落としている。

パターン2

事業から撤退することで社員のモチベーションが下がることを見落としている。

パターン3

事業から撤退しても削減できない費用があることを見落としている。

事業から撤退することで、顧客には迷惑や不便をかけることもあり得ます。みろく精密工業の場合、撤退する事業の顧客は既存事業とは異なっており、また撤退時期など顧客に十分配慮した上で決めようとしているため、顧客からの信用を失うことを見落としているわけではないようです。

事業から撤退することでリストラが行われたりすると、残った社員もモチベーションを落とし、それが既存事業の収益性にも影響を与えることがないとは言えません。しかし、みろく精密工業ではその点に十分配慮した上で撤退しようと考えているようです。

実は、社長が見落としていたことはパターン3でした。撤退したのに削減できない費用があるとはいったいどういうことでしょうか……
 

撤退で売上総利益が吹き飛ぶだけ?

不振の新規事業からの撤退を考え始めました社長、どうしたものかと考えながら、新規事業の現場へ向かいました。すると、新規事業で働く社員のAさんに会いました。

社長 おおっ、Aさん、がんばってるな~
社員A ありがとうございます。なかなかこの事業、軌道に乗らなくて申し訳ないです
社長 その点は私も頭の痛いところで、方向性に悩んでるところだ
社員A まさかクビですか?
社長 いやいや心配しなくていい。うちの会社は絶対に社員のリストラはしないから安心してくれ。ただし、万が一撤退するようなときには配置転換などはあるかもしれないが……。いずれにせよ、Aさんの技術力には大いに期待しているよ
社員A はい、がんばります! でも社長、新規事業から撤退したらその分だけ売上が減るのに、私たち新規事業の社員の給料はそのままで、会社の利益は大丈夫ですか?
社長 うん??? 確かに……

そのとき社長は嫌な予感がしました。経理部長に指示を出して、新規事業から撤退しない場合と撤退した場合の損益をザックリと比較した表を作ってもらいました。

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社長 なるほど。新規事業から撤退することで売上がなくなる。そして、30ある売上総利益がすべて吹き飛ぶのに、人件費や減価償却費などの販管費がほぼそのまま残ってしまうから、赤字が拡大するってことか……
経理部長 そういうことになります
社長 撤退する前に、赤字事業からの撤退による損益インパクトを試算しておいてよかった……

事業撤退による損益インパクトについて思い違いをしていた社長はホッと胸をなでおろすとともに、新規事業は規模を縮小してコストを圧縮するなど別の方策を考えていくことにしたのでした。

【ワンポイント解説】
「赤字事業からの撤退による損益インパクト」
赤字事業から撤退することで、その赤字額がゼロになると思いがちですが、現実には多くの費用が残ってしまうため、かえって赤字が拡大することがあります。撤退を検討する際は、その事業の撤退前後の損益を比較して、撤退による利益改善額を試算するようにしましょう。
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