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飲食業

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2021/05/13

質問

レストラン・チェーン「Mirocグループ」は従来18時から24時まで営業していますが、新型コロナ感染拡大で、自治体からは20時以降の営業自粛を要請されました。20時以降の営業自粛に協力すれば一定の協力金が支払われます。あなたが経営者なら次のうちどの方法をとりますか?

パターン1

要請にはしたがわず、従来どおりの営業時間で営業を続ける。

パターン2

営業時間を変更して、昼3時間夜3時間営業する。

パターン3

20時以降の営業を自粛し、18時から20時だけ営業する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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地元の人気店

「Mirocグループ」は、開店以来10年、東京下町の地元で5店舗を展開するレストラン・チェーンで、18時から24時まで営業しています。地元に基盤を置いて、リーズナブルな価格でおいしい料理を提供することで、顧客を増やしてきました。地元徒歩圏内の常連客はもちろん、店が沿線の駅前にあるので、少し離れた地域に住んでいる人も途中下車して来店するほどの人気店です。ところがこの度、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年の春に続いて再び、飲食店等の夜間の営業自粛が求められ、閉店時刻を20時とすることが要請されました。
 
このような状況の中、Mirocグループでは昨年春先の時短要請のときに起きた大混乱の経験を踏まえて、今回は冷静に対応できそうです。
 
では、1年前の時短要請のときは、どんな状況に陥っていたのでしょうか。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

寝耳に水の「時短要請」

各店舗20~30席の規模ですが、客席の間隔を開けなくてはならないので、連日5割程度の客席の稼働率です。密の状態を避けるためにこれ以上1日当たりの客席数を増やすことは考えられません。その上で、営業時間の短縮となると……。
 
感染症が国内に拡大する中、Mirocグループも何とかしのいで営業を続けてきました。しかし、ついにこの度、コロナの感染が拡大し、20時以降について時短営業を要請されることになったのです。この状況では夜の来店客を確保するのはなかなか厳しそうです。
 
なお、時短に協力する場合は、1日1店舗当たり協力金6万円が支払われるということです。月間営業日数は25日で、協力金は1カ月で1店舗当たり150万円になります。一方、店舗の家賃40万円と人件費150万円、その他の経費20万円と、1カ月の1店舗当たりの固定費は合計210万円と見込まれます。利益を確保するためには、協力金では足りません。

質問

レストラン・チェーン「Mirocグループ」は従来18時から24時まで営業していますが、新型コロナ感染拡大で、自治体からは20時以降の営業自粛を要請されました。20時以降の営業自粛に協力すれば一定の協力金が支払われます。あなたが経営者なら次のうちどの方法をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

要請にはしたがわず、従来どおりの営業時間で営業を続ける。

パターン2

営業時間を変更して、昼3時間夜3時間営業する。

パターン3

20時以降の営業を自粛し、18時から20時だけ営業する。

従来どおりの時間帯で営業すると、協力金を得られないばかりか、非協力店として店名を公表されてしまう懸念もあります。さらに、夜間の行動を控えるようにという要請もあるので、20時以降に店を開けていても開店休業の状況になる可能性も高くなります。

オーナーが選択したのはパターン2でした。協力金収入も含めた損益のシミュレーションをした結果、この方法を選択したのですが、どういうことかと言うと……
 

協力金がもらえるなら、休業することも考えられま。しかし、Mirocグループの規模では協力金だけでは家賃や人件費などの固定費をカバーすることができません。不足分をまかなえなければ、利益が出ないどころか、従業員への給料の支払いもできなくなります。

ターニングポイントは協力金が収益と同様に固定費回収に貢献すると気づいたときだった

オーナーと各店舗の店長が集まり、店長会議が始まりました。もちろん、議題は緊急事態宣言中の営業方針についてです。

オーナー みんな、お疲れ様。来週からの営業方針について検討しよう
K店長 通常どおり18時開店だとして、まさか20時閉店なんて、とてもじゃないけどやっていけません
L店長 ただでさえ、客席を間引いているんだから、2時間の営業じゃ客席が1回転もしませんよ
M店長 仕込みに3、4時間かけておいて、営業が2時間だけなんて、笑い話ですよ
オーナー そうだな。それならいっそのこと休業した方がいいかもしれないからな……。やはり、ある程度の営業時間を確保しないと、売上を上げることはできないよな

そして、オーナーは言いました。

オーナー じゃ、店舗ごとの損益計算のシミュレーションをしてみよう。状況は各店舗で違うだろうから、まずK店をモデルとして検討してみよう

そして、K店をモデルとした検討をしてみた結果は、以下のようなものでした。
 
時短営業や休業をしてもかかってしまう家賃や人件費などの固定費が210万円あります。一方、20時以降の営業を自粛する場合や休業する場合は、1店舗当たり150万円(6万円×営業日25日)の協力金収入が得られます。完全休業とする場合は、固定費210万円に対して協力金収入が150万円だから、1カ月で60万円の赤字を出すことになります。

◇今までどおり夜6時間営業する場合の損益
 損益をシミュレーションした結果(末尾の【参考-パターン1】参照)、20時以降の来客があまり伸びそうもないので、達成はかなり厳しそうという結論となりました。

◇20時以降の営業を自粛し、夜2時間だけ営業する場合の損益シミュレーション
 損益をシミュレーションした結果(末尾の【参考-パターン3】参照)、達成はできそうな気はするものの、仕込みに何時間もかかるのにわずか2時間の営業というのは納得がいかず、他にいい方法はないか検討することにしました。

◇昼と夜に3時間ずつ営業する場合の損益シミュレーション

オーナー 粗利益は60万円稼がないといけないよな。営業1日当たり4万円以上の売上が必要ってことか。この場合の客数は……

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オーナー 昼の3時間で20人以上、夜の3時間で8人以上の来客が必要ってことか……
K店長 数字が具体的になったのでイメージが付きやすいですね! これなら十分達成できそうですし、頑張れそうです

こうしてオーナーと店長たちとで“助成金等を考慮した採算シミュレーション”をした結果、翌週からの営業時間の変更を決め、チェーン店のホームページに情報をアップロードしました。ディナータイムの常連だった地元の客が、テレワークで自宅勤務になったので夫婦連れで昼食を食べに来ました。また、ディナーの時間帯には来店したことのない客層が来店してくれました。駅前に店舗があることもあり、買い物に来た帰りに、子供連れの主婦、年配の夫婦が昼食を食べに寄ってくれるようになりました。中には、緊急事態宣言が解除されたらディナータイムの時間帯にも来ると言ってくれるお客さんも増えました。

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【参考】パターン1とパターン3の損益シミュレーション

 パターン1: 今までどおり夜6時間営業する場合の損益
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 パターン3: 20時以降の営業を自粛し、夜2時間だけ営業する場合の損益
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ワンポイント解説「助成金等を考慮した採算シミュレーション」政府や自治体から支給される休業補償協力金、雇用調整助成金や家賃支援給付金などは、売上高と同じように収益と考えられますが、材料費などの費用はかかっていないので、支給額がそのまま家賃や人件費などの固定費をまかなうことに支出できます。助成金等を考慮して採算のシミュレーションをすると良いでしょう。ただし、助成金の支給は一時的なものであることも多いので、支給がなくなったときにどうするかにも注意しましょう。
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