記事制作:税経システム研究所

飲食業

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2017/05/13

質問

消費者の節約志向や競争の激化を背景に、居酒屋業界は厳しい環境におかれています。その居酒屋チェーンの中で、焼き鳥を中心としたメニューで増収増益を続けている企業があります。その企業の打ち出してきた経営方針とは?

パターン1

居酒屋業界の成熟化を認識し、合併・買収(M&A)により経営の多角化を図る。

パターン2

食材の調達先を再検討し、コストダウンを強力に推進する。

パターン3

普通の居酒屋はアルコール類がもうけの源泉だが、発想の転換を図る。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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店の開店前から顧客が集まり、開店して間もなく店は若者客でにぎわっています

居酒屋業界の企業が軒並み厳しい経営環境にさらされている中で、当社は若者客に歓迎され、毎晩、満席の状態です。若者たちによるネットや口コミでの高い評判が広がって、出店数もどんどん増やし、さらに業績を拡大しています。

経営環境の厳しい居酒屋業界-8年連続のマイナス-

2017年1月25日に、日本フードサービス協会が公表した2016年の外食売上高(全店ベース)によると、対前年比2.8%増と、2年連続で前年を上回る結果となった模様です。その内訳は、ファストフード+6%(4年振り前年を上回る)、ファミレス+0.4%(伸び率は減少)、パブ・居酒屋-7.2%(8年連続の減少)となっています。パブ・居酒屋の低迷ぶりが顕著で、大手の居酒屋チェーンでもマーケットの縮小により業績の伸び悩みや下降に苦戦している状態です。

質問

消費者の節約志向や競争の激化を背景に、居酒屋業界は厳しい環境におかれています。その居酒屋チェーンの中で、焼き鳥を中心としたメニューで増収増益を続けている企業があります。その企業の打ち出してきた経営方針とは?

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パターン1

居酒屋業界の成熟化を認識し、合併・買収(M&A)により経営の多角化を図る。

パターン2

食材の調達先を再検討し、コストダウンを強力に推進する。

パターン3

普通の居酒屋はアルコール類がもうけの源泉だが、発想の転換を図る。

居酒屋業界は、消費者の節約志向や、同業他社との競争等により、売上高の伸び悩みや利益の減少に苦しんでいます。居酒屋業界の市場の成熟化を認識し、M&A戦略による経営の多角化を図ることも考えられるでしょう。しかし、経営の多角化戦略は、いつでも成功するとはいえません。失敗の懸念も含む、いわゆる「諸刃の剣」となるリスクもあります。

利益は収益と費用の差額です。売上高(収益)が伸び悩む場合には、各種費用の削減も必要不可欠です。同社も食材の調達先を再検討し、コストダウンに真剣に取り組んでいます。ただし、コストダウンを強力に推進するために食材の質を落としてしまうと、顧客に「安かろう悪かろう」と受け止められ、集客に苦戦することにもなりかねません。また、質を下げずに大幅なコストダウンを図るのは限界がありそうです。

同社の経営者が選んだ方針はパターン3でした。通常の居酒屋は、焼き鳥などのフード類よりも、ビールや酎ハイなどのアルコール類で一定の利益を確保するのがビジネスモデルといわれていますが、同社は、それとは異なる逆転の発想の戦略をとりました。その逆転の発想とは?

伸び悩む居酒屋の業績を回復させた発想の転換とは?

● 主な収益源の発想を転換させる!
通常の居酒屋は、焼き鳥などのフード類を収益源とするというよりも、ビールなどアルコール類を主な収益源とするビジネスモデルを採用しているといわれています。そのような世間の居酒屋の経営方針とは逆に、ドリンク類ではあまり利益を追求せず、全商品メニューの価格を300円以下の低い均一価格に設定し、若者の利用者にアピールするような、いわゆる逆転の発想に基づく経営を推進してきました。その基本戦略に立って、その他にもさまざまな経営上の工夫を重ねてきています。
   
● 客単価は可能な限り低く設定する
客単価が低いほど市場の規模は大きいと考え、客単価は可能な限り低く設定しています。居酒屋での客単価も店により3,000円超となると、若者や年金生活者にはリピーターとなるのは厳しいと思われます。若者はアルコール類の価格に敏感であり、若者のビール離れや節約志向の消費傾向や価格競争の激化を考慮し、すべての商品300円以下の均一価格としました。

同社は、客単価を平均2,000円/人と想定しています。駅前での立ち飲み居酒屋も増加していますが、立ち飲み以外の居酒屋としては最低の価格設定といえます。客単価を上げると、料理や内装に凝らなければならず、またブームに乗らなければ、じきに飽きられてしまう可能性が高いと考えました。

日本人は「焼き鳥」が大好きな国民なので、安定した需要があります。安くて品質の良い焼き鳥を提供し、さらにアルコール類を一般に想定されている水準より安い価格に設定することにより、若者に強くアピールしていく。価格追求という基本的な部分を常に磨くことにより、価格以上の価値・満足感を提供しようというものです。

価格を低価格に統一することで、〈え! 全商品この安い価格?〉というサプライズは、〈アルコール類が安い店だね!〉と若者たちに強く印象付けているかもしれません。

ただどれも価格相応の商品ばかりでは魅力がありません。100円ショップと同じで、商品の原価率はさまざまです。顧客の側からは、「どれがお得かな」と、検討・吟味しながら飲食を楽しむことができます。店側もメニューのなかで粗利益率の高い商品もラインナップにいれています。常に「目玉商品」をどう開発していくかが、均一価格業態のカギのようです。また、通常の居酒屋では一般に80~120あるメニュー数を、60台に絞り込んでいるのも特徴です。
 
● 消費者の安全・安心に対する信頼性を重視
しかし、安かろう、まずかろうでは顧客はリピーターにはなりません。安い割においしく、消費者の安全・安心に対する信頼感も重視する必要があります。そのため焼き鳥・野菜類など国産食材にこだわり、顧客の信頼を高める努力をしています。もともと焼き鳥食材は日本国内からの調達にこだわってきましたが、さらに野菜なども100%国内産とするようになりました。

焼き鳥も各店舗内で串に刺して調理することにし、食材の新鮮さを保持するように努めています。居酒屋チェーンは、海外で調達した食材を現地で製造し、冷凍したものを使用しているとか、硬い、まずいといううわさもありますが、そのようなマイナスイメージとの差別化を図ろうとしています。

● 個々のメニューの原価にこだわらず、全体で一定の売上原価率をめざす
当然のことながら、コスト面の経営合理化、効率化も図られています。食材の大量調達、生産者からの直接調達により中間マージンの削減等。個々のメニューの原価は、それぞれにさまざまですが、個別の仕入原価にこだわらず、メニュー全体で売上原価率を適正化するように努力しています。実は、売上原価率の高い目玉商品ばかり注文されると、店側にとっては痛しかゆしかもしれません。これも店と顧客との間での楽しいゲーム感覚といえるかもしれません。

● 販管費等の経費合理化を図る
店舗立地は、最寄りの駅付近に出店していますが、ビルの上層階や地下、あるいは路地の裏通りなどにも多く出店しています。その方が賃借料を安くできます。多少不便であっても、ネットでの評判の口コミが広がり、若者であればそのハンディをいとわずに来店してくれます。
 
● 東南アジアの人々を積極的に採用し、人材育成の面を意識する
ベトナムやバングラディシュなど東南アジアの若者を積極的に採用しています。彼らを単にアルバイトと考えずに、人材育成の面を意識し、厨房(ちゅうぼう)・接客にできる限り意欲や自主性を重んじる労働環境を目指しています。支払いレジも彼らに任せる場合もあるようです。彼らが母国に戻ったときのため、日本流のおもてなしの心や細かなビジネスノウハウを蓄積させ、将来、自らの起業の可能性をも期待して、積極的に経験を積ませるという方針です。

どの企業も同じですが、激しい競争や技術革新の波に常にさらされています。業績好調という現況に甘んじることなく、顧客にあきられぬよう日々努力し、進化していくことが求められます。<世間の非常識は、われわれの常識!>という逆転の発想のなかに、将来の明るい発展につながるヒントがありそうです。

【ワンポイント解説】「売上原価率」売上高に対する売上原価の割合をいいます。売上原価には、販売した商品の仕入原価や、販売した製品の製造原価などが計上されます。
中小企業の売上原価率の平均値(平成26年実績)は、製造業79.2%、卸売業85.2%、小売業70.4%、全体75.5%となっています。
(「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)のデータに基づき算出)
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/index.htm
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