記事制作:税経システム研究所

飲食業

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2017/08/13

質問

食材の仕入原価が上昇した結果、粗利益が落ちつつある「弥勒寿司」。あなたが親方なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

よく売れるネタだけを仕入れてメニューの種類を絞る。

パターン2

要予約の宴会/コース・メニューを新設してお客さんにすすめる。

パターン3

品質が落ちても安いネタを仕入れて原価率を大幅に下げ、低価格路線に移行する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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お値ごろの寿司屋

「弥勒寿司」は、新鮮なネタで評判が高い老舗店です。今日も開店時間になると多くのお客さんが駆けつけます。カウンターに座った二人組が話をしています。

客1 この寿司屋、景気良くなってるみたいだね……
客2 親方に聞いてみたら、一時期よりだいぶ良くなったみたい
客1 まぁ、おいしくて料金が値ごろだから、また繁盛してきたんだろうけど、何か他の理由があるのかもしれないね

寿司を握りながらこの会話が耳に入った3代目親方も、心の中で満足しています。

2年前 ~ネタの仕入原価が上昇しはじめた

弥勒寿司は、50年前に開業しました。先代・先々代の親方の時代から通うなじみ客などで繁盛してきました。ところが、ここ2年くらい、魚介類の水揚げ量がさまざまな理由で減少していることもあって、ネタの仕入原価が上昇し、粗利益が落ちつつありました。水産業におけるこの傾向は今後も続きそうで、親方となって5年の3代目も、この状況に何らかの手を打たなければと考えていました。

質問

食材の仕入原価が上昇した結果、粗利益が落ちつつある「弥勒寿司」。あなたが親方なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

よく売れるネタだけを仕入れてメニューの種類を絞る。

パターン2

要予約の宴会/コース・メニューを新設してお客さんにすすめる。

パターン3

品質が落ちても安いネタを仕入れて原価率を大幅に下げ、低価格路線に移行する。

よく売れるネタだけを仕入れて、メニューの種類を絞ることも考えられます。そうすれば、売れ残りによる食材の廃棄ロスを減らすこともできるでしょう。しかし、旬の魚や珍しい食材を楽しみにしているなじみ客も多いはずです。

弥勒寿司の親方が選んだのは、パターン2でした。宴会/コース・メニューだと料理の品数が増えて食材のロスが増えるようにも思われます。しかし、予約制の宴会/コース・メニューは、別の観点から粗利益を増やす手段でもあり……

品質が落ちても安いネタを仕入れて原価率を大幅に下げ、売価も他店より安くして、低価格路線に移行することも考えられます。しかし、半世紀もの長きにわたって地元に愛され続けた寿司屋さんが低価格路線に移行するのは、なじみ客が遠のく大きなリスクをともないます。

ターニングポイントは食材の「廃棄率」に目をつけたことだった

ある日、3代目は先代である父親に、粗利益の減少に対する打開策について、相談してみることにしました。

3代目 おやじ、ちょっと店のことで相談に乗ってほしいんだけど……
先代 おいおい、5年前にお前に店を任せて以来、こっちは楽隠居のつもりで包丁を握っちゃいないぞ。最近の魚の仕入に関することならお前の方が詳しいはずだ
3代目 いや、そうじゃなくてさ、まぁ聞いてよ。この2年間、粗利益が落ちてきているんだけど、何かいい手はないかな? なじみのお客さまが2世代・3世代にわたって通ってくださっているおかげで、売上は横ばいなんだけど、この2年、魚介類の水揚げ量が少なくなってネタの原価が高止まりしているんだ。とはいえ、まさか安いネタを仕入れて低価格路線に移行するなんてことはできない
先代 当ったり前だ! そんなことをしたら、初代のじいさんに俺が顔向けできねぇや
3代目 それは俺もわかっているよ
先代 いいかい。粗(あら)利益を増やしたいんだったら、……うん、そうだなぁ、魚の“あら”を無駄にしない、これが大事だ
3代目 もう、シャレいってる場合じゃないんだけど……
先代 まぁ聞けよ。要するにネタを無駄にしないことが大事だってことだ。あらだって、あら汁にしてお出しすることもできるわけだ。つまり、余りそうなネタは何か別の料理にできればいいんだ
3代目 そもそも、何とかネタを余らせないようにできれば、原価も下げられるんだろうけど……。いっそ、売れ筋のネタに絞って仕入れることにして、ネタの廃棄を減らすっていうのはどうかな?
先代 いやぁ……、それじゃあ、お客さまは満足しないんじゃねぇのかい? お客さまにとっての寿司っていうのは、旬の魚を召し上がることも楽しみの1つだ。あるいは、珍しいネタがあったら食べてみたいって期待なさるお客さまもいらっしゃる。それに応えているからこそ、お客さまも飽きずに弥勒寿司の看板を支持してくださるんじゃねえのか? それを忘れちゃいけねえぞ
3代目 うん、それはわかってるよ
先代 いいかい、ネタが余るのはなんでなんだ?
3代目 そりゃー、見込みどおりにお客さまに来ていただけるわけでも、見込みどおりのネタを注文していただけるわけでもないからね
先代 そのとおりだ! じゃあ、できるだけ見込みどおりにするには?
3代目 え、何だろう、……
先代 宴会だよ
3代目 え、宴会? 宴会って、コースだったらある程度の品数をそろえなくちゃならないよね。それじゃあ、かえって無駄になるネタが増えない?
先代 お前、さっきの話、もう忘れたのか? 粗(あら)利益を増やしたいんだったら、大事なのは?
3歳目 ???
先代 “あら”だよ。ただし同じ“あら”でも“あらかじめ”の“あら”だけどな
3代目 えっ、あらかじめ?
先代 お前、飛び込みのお客さまで宴会ってぇ話を聞いたことがあるか? 宴会なら皆さん予約なさってから来店される。そうすりゃ、その宴会の売上は食事だけでも確実に見積もることができる。予約に合わせてネタを仕入れるようにすれば、売れ残ってしまうネタもかなり少なくなる。場合によると、飛び込みのお客さまよりネタの原価率を多少上げたっていい。そうすりゃいい品を出せるからお客さまも喜んでくださる
3代目 なるほど。飲み物は在庫で保管できるからこっちは無駄にならない
先代 できるだけ宴会のご予約を多くとると、それだけで売れ残って無駄になるネタを減らせるってわけだ
3代目 なるほど。だとすると、必ずしも人数が多い宴会じゃなくたっていいよね
先代 何だって?
3代目 予約方式で宴会と同じような内容のコース・メニューを始めれば、家族連れなどの少人数のお客さまや1~2人の個人客のお客さまでも廃棄率が下がるよね。よし、じゃ、要予約のコース・メニューをやってみようかな。おやじ、ありがとう
先代 しかし、お前の話にゃいっつも“オチ”がないんだよ、ったく。落語好きの俺には物足りねぇなぁ
弥勒寿司の新しい方向性は見えてきました。これを機に「弥勒寿司」は、飛び込みで来るより魅力的な要予約のコース・メニューを設定し、宣伝もしました。やがて、なじみ客も親戚や友人を連れての多人数の宴会や家族数人の会食の予約をしてくれるようになりました。その結果、多くの宴会や少人数のコース・メニューの予約がとれるようになり、廃棄ロスを減らすことができました。

弥勒寿司は、“あら”かじめにこだわり、粗(あら)利益が“オチ”ない店になったのでした。……。おあとがよろしいようで。
【ワンポイント解説】 
「粗利益」
「粗利」という言葉を耳にすることはあるかもしれませんが、これは粗利益、つまり売上高から売上原価を差しい引いた利益のことで、売上総利益ともいいます。
粗利益率は、売上高に対する粗利益の割合(粗利益率=粗利益÷売上高)で、売上総利益率ともいい、重要な経営指標の1つです。
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