なぜ、あの経理若手スタッフは、業務改善の提案ができるまでに成長できたのか?

2017年9月13日

卸売業

  • 卸売業
2017/09/13

質問

事業が拡大基調である一方、社内の業務管理体制の整備が遅れているため、管理部門のスタッフにも積極的に業務改善の提案をしてほしい「ミロク電子」。あなたが管理部長なら次のうちどれを優先的に学ばせますか?

パターン1

会計・税務処理など業務の専門知識のことを勉強させる。

パターン2

業務プロセスのことを勉強させる。

パターン3

表計算ソフトなど業務管理がしやすくなるツールのことを勉強させる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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数々の改善提案をしたことで、社内での評価が高まった経理マン

「ミロク電子」は電子部品の専門商社で、営業には特に力を入れており、多くの得意先と取引があります。

ある日、得意先であるT社に対する売掛金が滞留していることが判明し、そのことはすぐに、管理部門で経理を担当する若手女性スタッフAさんの耳にも入りました。そのときAさんは考えました。

Aさんの心の声 <T社に対する売掛金、なぜ滞留しているのかしら?>

そして、Aさんの頭にはいくつかの可能性が思い浮かんでいました。

Aさんの心の声 <①T社の資金繰りが厳しくて回収遅延になっているのかしら?
  ②営業担当が計上した売上、本当に計上して良かったのかしら?
  ③営業担当はT社に対して請求しているのかしら? >

今のAさんは、原因を突き止めた上で再発を防ぐような改善案も提案してみようかと、既にいろいろ考え始めていました。

Aさんはこの1年の間で、こんなふうに業務改善を提案できるまでに成長することができたのですが、1年前はどうだったのか、その頃の様子を見てみましょう。

1年前 ~滞留売掛金が判明! そのときの経理スタッフの反応は……

ミロク電子は電子部品の専門商社で、営業に注力してきたことで事業は拡大基調で推移しています。その一方で、社内の業務管理体制の整備は遅れています。社長をはじめ幹部たちは、今後の成長のためには、営業活動に注力するだけでなく、管理体制も整えていく必要があると認識しており、社員には積極的に業務改善の提案をするよう呼びかけています。しかし、これはというような改善提案はほとんど出てきません。
 
そんな状況にあった1年前のある日のことでした。ミロク電子の管理部で、得意先のS社に対する売掛金が滞留していることが判明しました。その場にいた経理担当の若手スタッフAさん、「S社に対する売掛金に貸倒引当金を積まないと……」と反応したのですが、この件はこれでおしまい。その後もAさんからは何ら改善提案は出てきませんでした。その結果、他のいくつかの得意先に対する売掛金にも滞留が見られるようになるなど、徐々に問題が広がり始めました。

そんな状況を見て、管理部長は思いました。

管理部長の心の声 <経理若手スタッフのAさんには期待しているが、いろいろと改善提案をしてもらうにはまだ力不足なのかな。今回の滞留売掛金の問題は、業務改善の提案をするのにいいチャンスかもしれないが……。どうしたものか>

質問

事業が拡大基調である一方、社内の業務管理体制の整備が遅れているため、管理部門のスタッフにも積極的に業務改善提案をしてほしい「ミロク電子」。あなたが管理部長なら次のうちどれを優先的に学ばせますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

会計・税務処理など業務の専門知識のことを勉強させる。

パターン2

業務プロセスのことを勉強させる。

パターン3

表計算ソフトなど業務管理がしやすくなるツールのことを勉強させる。
 

会計・税務処理など専門的な業務知識のことを勉強させることで、貸倒引当金の計上や税務上の対応の検討など、業績や税金計算への影響を的確につかむことができるでしょう。ただし、今後、いろいろな業務改善の提案ができるような人材になってもらうためには、会計・税務処理以外のことも勉強してもらうと良いかもしれません。

ミロク電子の管理部長が選択したのはパターン2でした。業務改善の提案ができるようになるためには、販売・回収などの業務プロセスを理解することが必要と考え、そのためにどうしたかというと……

表計算ソフトなど管理に役立つツールのことを勉強させることで、未整備だった「売掛金の滞留状況一覧表」など、経営管理に有用な帳票も作成できるようになり、管理のレベルが向上することでしょう。ただし、今後、いろいろな業務改善の提案ができるような人材になってもらうためには、管理用のツール以外のことも勉強してもらうと良いかもしれません。

ターニングポイントは、業務を俯瞰(ふかん)したことだった

思ったようにスタッフたちから業務改善の提案が上がってこないことに頭を悩ませていた管理部長が、とあるセミナーに参加したときのことでした。セミナー資料と一緒に配られた書籍案内のチラシに目を向けました。

「販売-回収サイクル」とか、「購買-在庫-支払サイクル」とか、「経費-支払サイクル」とか、会社の業務の流れに合わせた切り口で、業務処理や内部統制のポイント、会計処理や税務まで解説してある本のようです。

管理部長 おー、これだ! こんな切り口で書かれた本がほしかったんだ
管理部長は早速、この本を注文しました。そして手元に届いた本にざっと目をとおし、この本はうちの管理部門のバイブルになると感じていました。そして、Aさんにはこんな指示を出したのです。
管理部長 今回、滞留売掛金が発生したのって、どこにどんな問題があったのかな?
Aさん えっと……、正直そうした観点では全く考えていませんでした
管理部長 ちょっとこの本を見てほしいんだ。今回の滞留売掛金の問題はこの本の『販売-回収サイクル』について書かれている部分が関連してくると思うんだよ
Aさん そうなんですか
管理部長 だから、まずはその部分をよく読んでみてくれるかな
Aさん はい、分かりました。……。さっと見た限り、他の部署に関することもいろいろ書かれているみたいなので、分からないことが出てきましたら、いろいろ教えてください!

管理部長から指示を受けたAさん、早速この本に目をとおし始めました。本の「販売-回収の業務処理」の箇所には、「販売-回収サイクルの業務フローチャート」が載っており、「与信・受注→出荷→売上計上・請求→回収」といった販売・回収にかかわる一連の業務の流れが説明されています。そこには、経理部門だけでなく、得意先・営業部門・物流部門といった、販売・回収業務にかかわる各部署が、どのタイミングでどの書類を使って何をしているのかが書かれているのです。また、これら一連のプロセスの中のどこでどのような間違いが生じやすいのか、主要なチェックポイントも書かれています。
 
この頃のAさんは、まだこうした業務プロセスのことを理解せず、単に提出された証憑(しょうひょう)から仕訳を起こすことに一生懸命で、滞留売掛金の問題に当たったときも、貸倒引当金を積むという会計処理のことしか思い浮かびませんでした。

最近のAさんは……

その後の1年の間に、Aさんは、折に触れこの本を参照しながら仕事をするようになっていきました。例えば、売掛金の回収にかかわる業務に取り組む際は、この本の「販売-回収の業務処理」の箇所や「内部統制のポイント」の箇所を読み、自社に当てはめた場合どうなのかも考えるようにつとめました。

その結果、最近のAさんは、滞留売掛金の問題についても、
①T社の資金繰りが厳しくて回収遅延になっているであれば、「そもそもT社と掛取引して良かったのか?」、つまり「受注」に関する問題なのか?
②営業担当が計上した売上が、本当に計上して良かったのかということであれば、「ルールどおりに売上計上されていたのか?」、つまり「売上計上」に関する問題なのか?
③営業担当がT社に対して請求しているのかということであれば、「T社に請求書を渡していなかったのか?」、つまり「請求」に関する問題なのか?
といった具合に、頭が働くようになってきていました。

一連のプロセスとそこで生じやすい間違いを意識して経理業務をこなすようになった最近のAさんには、売掛金が滞留するいくつかの原因が思い浮かび、再発を防ぐべく業務の改善のことまで考えることができるようになったのでした。

【ワンポイント解説】

「業務プロセス」

業務プロセスとは、販売や購買など、経営の目的を達成するために行われる一連の活動のことで、各業務における一連の手続や処理の流れなどをいいます。
主な業務プロセスには、「販売-回収サイクル」・「購買-在庫-支払サイクル」・「経費-支払サイクル」・「財務-資金サイクル」などがあります。

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