記事制作:税経システム研究所

卸売業

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2019/02/13

質問

「弥勒木材」の新社長は、本業を活かした新事業を始めたいと思っています。しかし、資金がありません。あなたが経営者なら次のうちどの手段で資金調達を行いますか?

パターン1

取引銀行に新事業の説明をして、木材を担保に追加融資を受ける。

パターン2

クラウドファンディングを利用して、資金を調達する。

パターン3

木材置き場として使用している土地の一部を売却して資金を捻出する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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新たな事業の展開に向けて、活気が出てきた会社

老舗の木材問屋の「弥勒木材」は、本業の木材の卸売りに加え、現在は観光ビジネスも展開しています。

弥勒木材のあるみろく町は、山間部の自然が豊かな場所にあります。原生林が残る森や、深い渓谷に流れる清流など、都市部では見られない景色がたくさん。知る人ぞ知る“秘境”と言われていました。

弥勒木材が中心になって立ち上げた観光プロジェクトは、美しい自然を守りながら、自然を楽しんでもらおうというものです。関連事業者と提携して、深い渓谷に橋をかけて景観を楽しめる場所をつくったり、森の中にウッドチップを敷いて歩きやすくしたハイキングコースを整備したり、お手洗いや休憩所を設けたりしました。大手観光会社と組んで行う秘境をめぐるツアーも好評です。それらの通行料や利用料などを、運営や自然保護活動にあてています。

さらに、自分たちもみろく町のようなプロジェクトをやりたいというほかの地域の人たちからも、弥勒木材に声がかかるようになりました。橋の設置に使う木材の受注をはじめ、架橋工事の受注、メンテナンス事業などを行い、全国展開も視野に入れています。

今でこそ、新事業が好調の弥勒木材ですが、3年前は事業立ち上げに苦労していました……。

3年前 ~社長交代時には……

弥勒木材は、120年以上の歴史を持つ関東では老舗と言える木材問屋です。5代目の社長が引退し、その息子の6代目に引き継がれた頃、日本の木材は海外の安い木材に押されて、その需要は縮小傾向にありました。それに輪をかけて、木材がインターネットで直接売買されることが増えてきたために、これまでの経営を抜本的に見直さなければならない状態にありました。6代目新社長は、新規事業の立ち上げの必要性を感じていました。

また、弥勒木材の新社長は、もう一つの思いを抱いていました。ふるさとであるこの町に人を集め、活気を取り戻したいと思っていたのです。弥勒木材があるみろく町は手つかずの豊かな自然が魅力ですが、目立った観光施設があるわけではないため観光客も少なく、住民の過疎化も進んでいました。その理由には、山道が舗装されていなかったり、深い谷に橋がかけられていなかったりと、足元が険しく行き来しにくいことが考えられました。

そこで新社長は、みろく町の豊かな自然と自社の扱う木材を活用した観光プロジェクトの構想を考えました。大きなレジャー施設などではなく、手を入れるのは最小限にして自然環境への影響を少なくし、秘境の自然を守りながら楽しんでもらおうというものでした。

どれくらい観光客が来てくれるかどうかが未知数であることを除けば、新事業の計画には自信があります。

ただ、一つ問題が。新事業の立ち上げに必要な資金が十分に手元にありません。保有する不動産は既に銀行借入の担保に供されており、担保余力はあまりありません。

質問

「弥勒木材」の新社長は、本業を活かした新事業を始めたいと思っています。しかし、資金がありません。あなたが経営者なら次のうちどの手段で資金調達を行いますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

取引銀行に新事業の説明をして、木材を担保に追加融資を受ける。

パターン2

クラウドファンディングを利用して、資金を調達する。

パターン3

木材置き場として使用している土地の一部を売却して資金を捻出する。

取引銀行に新事業の成否の見込みを打診することにもなります。もっと収益性の高いビジネスモデルを求められ、新社長の思うプロジェクトでは融資が認められないことも考えられます。不動産は既に担保提供されており、追加融資を受けるためには取引銀行から新たな担保の提供を求められる可能性がありますが、木材を担保としてもらうのは難しいかもしれません。

新社長が選んだのはパターン2でした。この方法なら、新社長の思いに共感し、新事業に賛同してくれる人からの資金提供を広く募ることができます。また、資金提供をしてくれた人たちに、利用料金の割引が受けられる特別会員になってもらうことで、この事業を気に入ってもらえれば、いずれリピーターになってもらえることも期待できます。

この案は、木材問屋の事業を縮小して、新事業に挑むことを意味しています。新事業が成功するか確証がない中で、本業である卸売りの事業を縮小していくのはリスクが高いかもしれません。また、この土地が担保に供されている場合には売却のハードルは高くなります。

きっかけは、地元の名士へのグチだった

新社長は、社長就任前より、地元の青年会等に積極的に参加してきました。今年から青年会のリーダーを勤めています。地元の青年会は、お祭りやイベントの主催、クリーンキャンペーンなど、地元を盛り上げる活動を行っています。それらは非営利活動なので、活動に対して寄付や行政からの補助金はあるものの、十分な資金はありません。

みろく町には、代々この町に住んでいる、土地持ちの名士で、会社もいくつか経営しているXさんがいます。Xさんは、いつも厚意で資金を援助してくれて、とても助かっています。しかし、この名士がことあるごとに催し物に口を出してくるのです。

お祭りの運営のときには……

Xさん うちの姪の知り合いがアイドルをやっているんだが、来月のお祭りで1ステージ設けてやってくれないか
新社長 え、えぇ……検討してみます <地域のお祭りなんだから、もっと地域に縁が深い人を呼びたいのになぁ>

クリーンキャンペーンのときには……

Xさん 我が家の周りは念入りに掃除してくれよな。クリーンキャンペーン用のゴミ袋だって、うちが制作費を結構持っているんだし。それと、しっかりゴミ袋を広げて街中を歩いてくれよな。スポンサー会社の名前や商品名が印刷されてるゴミ袋を持って街中を歩いてくれれば、うちの会社のいい宣伝にもなる。はっはっは」
新社長 はい……呼びかけてみますね <それはクリーンキャンペーンの趣旨と違うよぉ~>

ある日、新社長と青年会の役員3人が、飲みながら青年会の運営について話し合っていました。

新社長 Xさんが資金援助してくれて青年会の運営は助かっているけれど、彼の要求にはいつも困らされているよ……この前のお祭りの件も、クリーンキャンペーンの件も
青年会役員A Xさんの援助のおかげで催し物の運営が充実していると思うと、彼の発言は無視できないからなぁ……
青年会役員B そうだな。だけどさ、催し物の趣旨と違うところで、時間や人員を割かなきゃいけなくて、このままじゃ思うようなイベントができなくなりそうだよ。せっかくこの町のためになるようなイベントを僕らが全力で考えているのにね
青年会役員C そういえば、大学教授が研究資金を集めるために、クラウドファンディングを使ったなんて話もあるみたいだぜ。研究の資金も国や特定のスポンサー頼みになるといろいろと顔色を伺わなきゃいけないかもしれないけど、社会全体のためにっていう思いに共感してお金を出してくれる人の援助で実現したんだってさ
青年会役員A なるほど。それなら我々も使えそうだな。地域の催し物の趣旨や目的をもっとアピールして、それに共感してくれる人から、資金を集めるんだ
青年会役員B そうだな。僕らの思いに共感してくれる人からの資金調達を試みてみよう。地域の人はもちろん、旅で訪れた人や、この町に住んだことはないが何か縁がある人も協力してくれるといいな

新社長は、はっとしました。

新社長の心の声 <なるほど。これってうちの新事業にも当てはまるんじゃないか? 銀行は資金回収を確実にしたいがために、融資先のビジネスにも口を挟んでくる。それよりも、うちの新事業の思いに共感してくれて、可能性にかけてくれる人からの資金提供を募ったほうが、ブレずに思い通りの事業展開ができるんじゃないか>

 

従業員の説得と長期的顧客の確保に向けて

新社長はさっそく、クラウドファンディングに目を付け、既にいろいろなクラウドファンディングのサイトが運営されていることも調べました。集まった資金の額の一定割合を手数料として支払うものの、新事業への社会的需要が低ければ新事業への進出を断念し、必要な資金が集まるほどに期待を寄せてくれる人たちがいるなら、新事業のリスクにかけてみることを、会社の従業員たちにも説得しやすいと考えました。資金提供者には、特別会員として開業後しばらくは利用料金を無料として、その後長期にわたって割安の利用料金とすることにしました。
 
また、融資を受けて新事業を始めて、万が一失敗に終わった場合、借入金だけが残ってしまうリスクもありますが、クラウドファンディングには寄付型・購入型・投資型など、集めた資金の返済が不要のものもあり、返済リスクを回避することができます。思いに共感してくれた人たちからの資金提供であるため、資金提供者側もある程度のリスクは織り込み済みのはずです。
 
その後、クラウドファンディングによる資金調達は成功し、弥勒木材は観光ビジネスを展開していったのでした。

【ワンポイント解説】「クラウドファンディング」インターネットを通して、不特定多数の者から資金を獲得する方法の一つ。例えば、ある事業に対して一定額が集まったら実行することとし、賛同する人たちから資金調達の約束を取り付けます。一定額が集まったら賛同した人たちからクレジットカード等を通して実際に資金調達し、起業するという仕組みです。
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