自己資本比率の計算と高める方法とは?

2025年12月3日

質問

「ミロクドラッグストア」の自己資本比率は、低下傾向にあります。あなたが経営者なら、「自己資本比率を高める」ことを主眼とした場合、利益の増加以外でどのような改善策を講じますか?

パターン1

自社株買いを行う。

パターン2

不要な資産を売却し、売却資金で負債を返済する。

パターン3

株主への配当金を多くする。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

救急セット
融資

自己資本比率の上昇で安全性も良好

「ミロクドラッグストア」の自己資本比率(注)は、数年前に比べて上昇し、安全性も高まりました。銀行融資に際しても、特段の問題はありません。しかし、数年前は、自己資本比率が低下の一途を辿り、安全性に黄色信号が灯っていました。

(注)自己資本比率は、次の算式で求めます。一般的に自己資本比率が高い方が財務的な安全性が高いと言われます。

図1

数年前 ~大変だ!自己資本比率が低下し続けている

ミロクドラッグストアの社長は、経理部長からある報告を受けました。

社長。自己資本比率が低下し続けています


経理部長



社長

それはまずいな。銀行から融資を受ける際に結構重視される指標だ。早急に改善策を講じなければ

今の株主や新たに株主から出資を受ける“増資”も自己資本比率を高める有効な方法ですが、中小企業の場合は新たな出資を受けるハードルが高く、現実的にはすぐに実行できないことが多いです


経理部長



社長

確かにそうかもしれないな

そこで現状では二本柱で対応しようと考えています。一つ目は、何と言っても利益を増加させることが重要です


経理部長



社長

そのとおりだ

まずは、現状のコスト構造や業務の流れを見直し、無駄を減らすことが大切だと考えています。例えば、業務効率化やDXを推進させて固定費の削減を目指します。また、今後の成長を見据えて、高収益性事業への集中投資ができないかを検討します


経理部長



社長

分かった。その方向で進めてくれ

二つ目は、資産や負債の中身の見直しです


経理部長



社長

ちょっと待ってくれ。なぜ資産や負債の中身の見直しが、自己資本比率に影響するんだね?

質問

「ミロクドラッグストア」の自己資本比率は、低下傾向にあります。あなたが経営者なら、「自己資本比率を高める」ことを主眼とした場合、利益の増加以外でどのような改善策を講じますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

自社株買いを行う。

パターン2

不要な資産を売却し、売却資金で負債を返済する。

パターン3

株主への配当金を多くする。

自社株買いを行うと、自己資本が減少するので、自己資本比率は低下します。一方で、自社株買いを行うと、収益性指標であるROE(自己資本利益率)の上昇につながります。

不要な資産を売却し、売却資金で負債を返済すると、総資本に占める負債の割合が小さくなるので、自己資本比率は上昇します。また、総資産(総資本)が小さくなるので、収益性指標であるROA(総資産利益率or総資本利益率)の上昇にもつながります。

株主への配当金を多くすると、自己資本が減少するので、自己資本比率は低下します。一方で、株主還元に積極的な企業と評価される面もあります。

自己資本と他人資本(負債)

社長は、大学時代に会計サークルに所属していた友人に相談をしました。


社長

わが社の自己資本比率が低下傾向でね。経理部長と、その改善策について検討している最中なんだ

中小企業だと、自己資本比率は銀行融資の際に重視されることがあるからな


友人


社長

経理部長は、利益の増加、資産と負債の中身の見直しを提案してきた。前者は理解できたが、後者がよく分からないんだ

企業の元手、つまり資本は、2つに大別できる。ひとつは、他人資本とも呼ばれる負債だ。当然、これは返済義務がある。もうひとつは、自己資本と呼ばれるもので、こちらは返済義務がない


友人


社長

自己資本について、もう少し教えてくれないか

ざっくりいうと、株主からの出資金とこれまで稼いだ利益の蓄積分を合計したものだ。純資産とほぼ同じと考えても大丈夫さ


友人


社長

なるほど

負債と自己資本を合計した総資本に占める割合で考えると、どちらかの割合が小さくなれば、どちらかの割合は当然大きくなる


友人


社長

たしかに。通常、負債の割合は小さい方が倒産リスクは小さくなる。ということは、負債の割合が小さくなるような策を講じればよい。これが、資産と負債の中身の見直しという意味か!

完全に理解できたようだな。ちなみに、配当を出しすぎると自己資本が減るから、配当政策のバランスも大事だよ


友人

負債の圧縮に向けた調査と改善策の実行


社長

資産と負債の中身の見直しと自己資本比率の関係が理解できたよ。例えば、負債が90万、自己資本が10万円、言い換えれば資産が100万円の場合、自己資本比率は10%だ。ここで、極端な例として、帳簿価額10万円の不要な資産を10万円で売却し、得た資金と同額の負債を返済すれば、負債が80万円、自己資本が10万円になり、総資本に占める負債の割合が低下する。その結果、自己資本比率が約11%に上昇する

■負債の圧縮による自己資本比率の改善

図2

そのとおりです


経理部長



社長

不要資産や遊休資産がないかの調査から始めるか

それでしたら調査が終わっており、売却候補の資産がいくつか挙がっています。銀行とも相談したところ、借入金の繰上返済に応じてくれるとのことです


経理部長



社長

では、その線で進めてくれたまえ。ROAROEといった収益性指標とのバランスも考慮しながら、利益増加の改善策も引き続きよろしく

「自己資本比率」

自己資本比率は、企業の長期的な安全性を測る指標です。自己資本比率が高いほど、負債の割合が低く倒産リスクが低いことを意味しますので、安全性が高いと判断されます。自己資本比率は、次の算式で求めます。

図3

 自己資本比率を高める方法には、次のようなものがあります。
 ① 当期純利益を増やす。
 ② 負債を減らす。
 ③ 増資をする。

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