決算書の読み方 ~貸借対照表の資産の区分②:流動資産と固定資産を区分する理由

2026年6月23日

質問

「貸借対照表で資産を流動資産と固定資産に区分する理由はなにか?」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?

パターン1

所有資産の増減や所有数を記録するのを便利にするため。

パターン2

資産と負債との対比で、負債の支払能力を見るため。

パターン3

所有していることで税金がかかる資産とかからない資産とに区分して、税金の金額を計算するため。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

決算書
クエスチョン

なぜ貸借対照表で資産を流動資産と固定資産に区分するのか?

「スーパー・ミロク」の二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。自分の後継者を決めるにあたっては、経営センスを最も重要視する方針です。そこで松太郎社長は折に触れて息子たちに試験を課すことにしました。
前回は「貸借対照表の資産は流動資産と固定資産に区分される」ことを学びました。今回は「なぜそのように区分するのか?」という理由に焦点を当てます。


社長

資産を大きく流動資産と固定資産の2つに区分することについては理解したな。さて、それでは今回はもう少し資産の区分について深く勉強しよう。今度は、『なぜ資産を区分するのか』という問題だ

なぜって? 資産の種類がいっぱいあるからでしょう?


長男


社長

それはそうだが、資産を区分するにはそれなりの理由がある。種類が多いとして、それをどうして流動資産と固定資産に区分するのか、という観点はとても重要だな

うちは会社法の制度に従わなければならないから、法令の決まりで資産を区分して貸借対照表に記載するんじゃないの?


次男


社長

法令で決まっているから、といえばそりゃそうだ。しかし、なぜ法令で資産を区分して表示すると決めているんだ? その意味を考えることが今回の試験だ

資産の種類がいっぱいあるから、現金とか売掛金とかは金額を確認しなくてはならないし、商品は在庫の数を確認しなくてはならないよね? 店舗が複数あれば店ごとに記録をとっておかなくてはならないし、仕入や配達で使う車両だって何台かあるし……、種類ごとに増減や数を記録したほうが便利だからじゃない?


長男

借金に関係があるんじゃないかな? だから、負債との対応関係じゃないかな?


三男

おいおい、資産の区分の話だろう。何で負債が関係するんだよ?


長男

だって、借金を返済するのには、お金がなければ支払えないじゃない。だから、借金の金額とお金の額を見比べる必要があるからじゃないかな


三男

税金を支払わなくてはならない資産があるじゃない? 土地とか建物の固定資産とか、あと、車両。そうだ! 税金の支払額を計算するのに、資産を区分しておいたほうが便利だからじゃない?


次男


社長

さあ、どうかな?

質問

「貸借対照表で資産を流動資産と固定資産に区分する理由はなにか?」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

所有資産の増減や所有数を記録するのを便利にするため。

パターン2

資産と負債との対比で、負債の支払能力を見るため。

パターン3

所有していることで税金がかかる資産とかからない資産とに区分して、税金の金額を計算するため。

企業にはさまざまな資産があります。所有資産の増減や所有数を記録するには、資産の特徴に応じて区分して記録するほうが便利であることは理解できます。ただし、資産の増減や現有数の管理は、補助簿(現金出納帳、商品有高帳、固定資産台帳など)で行うため、貸借対照表の資産区分の主目的ではありません。

資産を区分(流動資産と固定資産)するのは、負債の区分(流動負債と固定負債)ごとに支払が可能であるかどうかを見極めるためです。返済期限が近い借入金を支払うためには、確実に支払えるように資金の準備をしておかなくてはなりません。一方、長期契約の借入金であれば、現段階で手元に資金がなくても、返済期限までの期間で資金を用意すれば間に合います。負債の区分ごとの支払期限に対応して、資金が十分に用意できるかどうかを見るために、資産を区分して管理する必要があるのです。つまり、流動資産は流動負債の支払いに、固定資産は固定負債や純資産の調達に対応しているかを見比べることで、企業の支払能力や財務の健全性を判断しやすくなります。

資産には、これを所有することにより税金がかかるものがあります。特に、土地や建物などの不動産、自動車などの車両を所有する場合には、それぞれ登記・登録の届け出をし、固定資産税や自動車税などがかかります。ただし、税金の計算は資産の種類ごとに行われることがあるとしても、貸借対照表の資産区分の主目的は税金計算ではありません。

「負債の支払期限に応じて資産を管理する必要性」に気づいた!


社長

どうだ? 回答は決まったか? では、説明を始めるぞ。資産を区分するのは、もちろん種類別に資産の増減や現有数を記録するという目的では重要だ。でも、資産については勘定科目に対応した補助簿で記録しているから、その情報をもとに所有資産の増減や現有数を把握できる

現金出納帳とか商品有高帳とか?


三男


社長

そう、現金の収支については現金出納帳で、商品の入庫と出庫、そして在庫量については商品有高帳で記録するわけだ

売掛金はどうするの?


次男


社長

得意先元帳または売掛金元帳で、売掛金の発生、売掛金の回収、売掛金の残高を、販売先別に記録するんだ

固定資産はどうするの?


長男


社長

固定資産は、固定資産台帳に種類と数量を記載している。だから、所有資産の増減や現有数の把握という目的は、補助簿で果たせる。固定資産関連の税金を計算するときの資産の種類と数量についても、固定資産台帳で確認できる。むしろ、税金の支払いについて通知がきたら、固定資産台帳で所有している資産と照合して確認するぐらいでないといけない

そうなんだぁ


三男


社長

いずれにせよ、貸借対照表の資産区分は、資産管理や税金計算のための区分が主目的ではないんだ

貸借対照表の区分と配列の意味 ~流動資産・固定資産・流動負債・固定負債・純資産


社長

貸借対照表というのはこんな感じに並んでいる

図1


社長

左側の資産は、流動資産と固定資産に区分することになっている。これに対して、右側の負債は、流動負債と固定負債に区分する。なんでこんな風に並んでると思う?

……


長男

……


次男

資産と負債を見比べるためってことなのかな? これだと、流動資産と流動負債とか、固定資産と固定負債というように、左側と右側を見比べるのに便利だね


三男


社長

そのとおりだ。 流動資産は固定資産と比べて、早く現金化できることが多い。だから支払期限が短い流動負債の支払に対して十分な流動資産があるかどうかを見極めることが大事だ

それって、流動資産と流動負債を見比べることだよね? 固定資産は、土地とか建物とか車両だけど、固定負債の支払に対しても、売却して現金化することを考えるの? でも売っちゃったら店とかトラックとかなくなっちゃうじゃない?


三男


社長

固定資産は、長い時間使う資産だから、購入するときのお金を支払期限が短い流動負債で借りてしまうと、固定資産の使用期間よりも支払期限がかなり先に来てしまい、資金繰りが厳しくなる。流動負債の支払ができなくなるとすれば、車両や建物や土地を売却して現金化しないと借金の返済ができなくなる懸念もある。だから、固定資産を購入するときに支払うお金を借りる場合には、支払期限が長い固定負債として借りたほうがいい

そうか。資産を買うにはお金を支払うけど、そのお金の出どころを考えないといけないんだ。いろいろと制約条件があるんだね


長男


社長

そうだ。流動資産については、流動負債の支払期限と支払額を見て、それに十分な流動資産があるかどうかを見比べることが重要なんだ。そして、固定資産については、固定資産を購入するときに支払うお金の出どころが、固定負債として借りたお金、あるいは、資本金や留保した利益なども含めた純資産でまかなえているかどうかを見比べるんだ。そのために、資産と負債をそれぞれ流動と固定に区分していると私は理解している

借金については、貸し借りの契約を守るだけではなく、資産の状況も見ないといけないんだね


次男

貸借対照表の資産区分は、「負債の支払期限に対応して資産を管理する必要性」から生まれたものです。これにより、企業が短期・長期の負債に対して十分な資産を持っているかどうかを判断できるのです。

前回と今回の試験によって、「資産の大きい2つの区分が何か」「資産を流動資産と固定資産に区分する理由」が理解できました。社長は次は“資産を流動資産の固定資産に区分する基準”について考えさせることにしようと思っています。

「貸借対照表で支払能力を見極める」

貸借対照表では、借方(左側)の資産と貸方(右側)の負債を比較して、支払能力を見極めることができます。支払能力は、短期に支払期限のくる負債に対して、支払のタイミングと支払額に応じて、支払い可能となる資産を十分に所有しているかどうかによって判断します。流動資産については、流動負債の支払期限と支払額を見て、それに対応できる十分な流動資産があるかどうかを見比べて支払能力を検討します。一方、固定資産については、固定資産を購入するときに支払うお金の出どころが、固定負債として借りたお金、あるいは、資本金などの純資産として調達したお金でまかなえているかどうかを見比べます。そのために、資産と負債をそれぞれ流動と固定に区分しているのです。

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら