2026年10月からカスハラ対策が義務化! 大幅な値引き要求、どう対応する?

2026年10月3日

質問

「MJSリビング」の営業担当者は、契約上は問題ないものの、顧客から「画面で見た商品のイメージと実物が違う」として、代金の大幅な値引きを要求されています。カスタマーハラスメント対策を踏まえ、MJSリビングがとるべき対応として最も適切なものは、次のどれでしょうか?

パターン1

顧客との関係を優先し、営業担当者の判断で値引きに応じるようにする。

パターン2

商品に不具合はないため、顧客からの要求には一切応じない方針とし、その対応は営業担当者に一任する。

パターン3

顧客の申出内容や要求の程度を確認し、あらかじめ定めた社内ルールに沿って、上司などを含めて組織的に対応する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

ハラスメント
不満

店舗もインターネット販売も順調

「MJSリビング」は、生活雑貨を店舗やインターネットで販売する会社です。オリジナリティのある品ぞろえが評判で、各店舗は盛況です。インターネット販売でも、まとまった数量の注文が入るなど、売上は順調に推移しています。

さまざまなお客様に利用していただいているけれど、店舗販売もインターネット販売も、おおむね順調のようだね


社長


経理部長

そうですね。インターネット販売では実物を手に取って確認できないという面もありますが、担当者もその特性を踏まえて、お客様からの問い合わせなどにきめ細かく対応していますからね

しかし、1年前は、担当者がお客様への対応に追われ、小さなトラブルも頻発している状況でした。

1年前 ~顧客から思わぬ要求が

1年前、MJSリビングでは、インターネット販売で、ある顧客から同じ商品の大量注文を受けました。ところが商品の配送後、顧客から「画面で見た商品のイメージと実物が違う」との連絡が入りました。この取引を受け持った営業担当のAさんは、早速、商品の状態やインターネット上の掲載内容を確認しました。


営業担当のAさん

商品そのものに不具合はないんだけれど……。お客様の閲覧環境によっては、画面で受けたイメージと実物とで多少の違いを感じてしまうこともあるかもしれない

Aさんは、商品の状態やインターネット上の掲載内容に問題がないことを確認した上で、その旨を顧客に説明しました。また、返品についても説明しましたが、顧客は納得せず、「イメージと違うので、この商品は使えない。代金を大幅に値引きしてほしい」と繰り返し非常に強く要求してきました。その後も社会通念上許容される範囲を超えるような要求は続き、Aさんは対応に追われて本来の営業活動にも支障が生じるようになっていました。


Aさん

困ったな……。お客様からの連絡が続いていて、業務にも影響が出ている。このまま対応を続けるべきなのだろうか……。一人で判断してよいのだろうか……

質問

「MJSリビング」の営業担当者は、契約上は問題ないものの、顧客から「画面で見た商品のイメージと実物が違う」として、代金の大幅な値引きを要求されています。カスタマーハラスメント対策を踏まえ、MJSリビングがとるべき対応として最も適切なものは、次のどれでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

顧客との関係を優先し、営業担当者の判断で値引きに応じるようにする。

パターン2

商品に不具合はないため、顧客からの要求には一切応じない方針とし、その対応は営業担当者に一任する。

パターン3

顧客の申出内容や要求の程度を確認し、あらかじめ定めた社内ルールに沿って、上司などを含めて組織的に対応する。

要求された値引きにそのまま応じることが適切とは限りません。営業担当者に一定の値引き権限が与えられている場合、その範囲内で担当者が判断すること自体が問題になるわけではありませんが、今回のように顧客から強い要求が続き、担当者の業務にも支障が生じている場合には、担当者だけで対応を続けるのではなく、会社として状況を把握しながら対応することが重要です。顧客からの要求がどのような内容なのかを確認し、必要に応じて上司などに相談しながら、組織として対応することが大切です。

商品そのものに不具合がないからといって、顧客からの申出を一律に拒否すればよいわけでもありません。顧客からの苦情や要望には正当なものもあるため、申出の内容や要求の程度、要求の仕方などを踏まえて、対応を判断する必要があります。また、今回のように強い要求が続いている場合には、担当者だけで抱え込まず、必要に応じて組織として対応することも重要です。

顧客から強い要求を受けた場合には、営業担当者だけで抱え込まず、あらかじめ定めた社内ルールに沿って上司などに相談し、組織として対応することが重要です。顧客対応の方針や相談先などを事前に決めておくことで、担当者も判断に迷ったときに適切に相談しやすくなります。

身近な値引きにもルールがある

そんなある日、経理部長は、営業担当のAさんが顧客から大幅な値引きを求められ、対応に苦慮しているという話を耳にしました。


経理部長

営業担当は大変だな……。何か解決策はないものか

その日の帰宅途中、経理部長がスーパーに立ち寄ると、総菜売場の商品に次々と「20%引き」のシールが貼られていました。


経理部長

そういえば、こうした値引きは、店員さんがその場の判断だけで決めているわけではないんだろうな。時間帯や商品の状況などに応じて、あらかじめ一定の基準が設けられているのだろう。……顧客から値引きを求められた場合も、担当者に任せきりにせず、どのような場合は担当者が判断し、どのような場合は上司や責任者に相談するのかを、会社として決めておくことができるのでは?

2026年10月からカスタマーハラスメント対策が義務化

顧客からの苦情や要望に適切に対応することは、企業にとって大切です。一方で、要求の内容やその伝え方が行き過ぎると、対応する従業員に大きな負担がかかることがあります。

こうした「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策を強化するため、2025年6月に労働施策総合推進法等が改正されました。2026年10月1日からは、事業主に、カスタマーハラスメントを防止するために必要な措置を講じることが義務付けられました。

改正後の労働施策総合推進法と、これを具体化した厚生労働省の指針では、職場におけるカスタマーハラスメントについて、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。

1.顧客等の言動であること
2.その言動が、労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
3.その言動によって、労働者の就業環境が害されること

ここでいう「顧客等」には、商品を購入する顧客だけでなく、取引の相手方や施設の利用者なども含まれます。また、対面で行われる言動だけでなく、電話やSNSなどによる言動も対象となります。

なお、顧客から寄せられる苦情や要望のすべてが、カスタマーハラスメントになるわけではないという点には留意が必要です。商品やサービスに問題があれば、顧客が企業に改善や説明を求めることには正当な理由があります。客観的に見て社会通念上許容される範囲で行われる申入れは、カスタマーハラスメントには当たりません。

一方、要求の内容が契約内容から見て相当性を欠く場合や、要求する際の手段・態様が相当でない場合などには、「社会通念上許容される範囲を超えた言動」に該当する可能性があります。指針では、その典型的な例として、暴行や脅迫、暴言、執拗な要求などのほか、今回のケースとも関連する「契約金額の著しい減額の要求」も挙げられています。

今回の法改正で重要なのは、カスタマーハラスメントへの対応を個々の従業員だけに委ねるのではなく、会社としてあらかじめ対応方針や体制を整えておくことが求められる点です。

厚生労働省の指針では、事業主が講じるべき措置として、カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護するという方針を明確にして従業員に周知すること、カスタマーハラスメントへの対処内容をあらかじめ定めておくこと、相談窓口を整備することなどが定められています。また、カスタマーハラスメントが発生した場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた従業員への配慮や再発防止を行うことも必要です。


経理部長

社長、カスハラ対策は、問題が起きた際に担当者がその場で何とかするのではなく、会社としてあらかじめ対応方法を決めておくことが大切です

そうだね。今回のように値引きの要求がある場合には、顧客対応だけでなく、会社の売上や利益にも影響する。値引きや返金について、誰がどこまで判断するのかという点も含めて、ルールを考えておく必要がありそうだ


社長

値引きや返金にも、あらかじめルールを設けておこう

顧客から値引きや返金を求められた場合、その対応は顧客との関係だけでなく、会社の売上や利益にも直接影響します。そのため、要求を受けた担当者が、その場の判断だけで多額の値引きや全額返金に応じるような運用は避けることが望ましいと考えられます。

たとえば、「一定額までの値引きは担当者が判断できる」「それを超える場合には上司の承認を得る」「全額返金や大幅な減額を求められた場合には責任者に報告する」といったように、誰がどこまで判断できるのかをあらかじめ決めておく方法があります。

また、金額だけで機械的に基準を設ければよいというものでもありません。顧客からの申出内容や要求の程度、商品やサービスに実際に問題があったかどうかなどを確認し、どのような場合に上司や責任者へ相談するのか、社内で一定の判断基準を共有しておくことも重要です。

さらに、値引きや返金を行った場合には、その理由や承認者、金額などを記録しておくとよいでしょう。


経理部長

こうした記録があれば、経理部でも値引きや返金の内容を確認したうえで、適切に処理しやすくなりますね

そうだね。それに、同じ顧客から同様の要求が繰り返されていないか、特定の担当者に対応が集中していないかなどを、後から確認する手掛かりにもなりそうだ


社長

このような承認や記録の仕組みは、カスタマーハラスメント対策として法律が直接求めているものではありません。しかし、顧客から強い要求を受けた際に担当者一人で抱え込ませないという観点と、会社の売上や利益に影響する取引を適切に管理するという観点の双方から、あらかじめ社内のルールを整えておくことには意味があります。

カスタマーハラスメント対策を考える際には、相談窓口や顧客への対応方法に加えて、値引きや返金など、会社の数字が動く場面で誰がどのように判断するのかについても、あわせて確認してみましょう。

「カスハラ対策と値引き・返金の社内ルール」

2026年10月から、改正労働施策総合推進法により、事業主にはカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止するために必要な措置を講じることが義務付けられました。相談窓口を定めることや、カスハラへの対処内容をあらかじめ定めておくことなどが求められます。

値引きや返金について承認ルールや記録方法を設けることまで、法律で直接求められているわけではありませんが、カスハラ対策を検討する際には、こうした社内ルールも併せて確認しておくと、担当者だけに判断を委ねず会社として適切に対応しやすくなります。

カスタマーハラスメント対策等の義務化についての参考資料:
■厚生労働省リーフレット(簡易版)
「2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策等が義務化されます!」

制度の概要や必要な対応を簡潔に確認できます。
■厚生労働省リーフレット(詳細版)
「2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策等が義務化されます!」

義務化の内容や事業主が講ずべき措置について、より詳しく確認できます。

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