ROAとは? 儲ける力の測り方を競馬で学ぶ兄弟社長

2018年10月3日

※本記事は2025年10月30日にタイトル及び内容の一部を更新しました。
旧タイトル「兄弟社長対決! 優れているのはどっち? 競馬に学ぶ"儲ける力"のはかり方」

製造業

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2018/10/03

質問

兄弟関係にある二つの会社の社長。「どちらの会社のほうが儲ける力があるのか?」でもめています。あなたならどのような基準で比べますか?

パターン1

利益の金額の大きさで比べる。

パターン2

資産に対する利益率の大きさで比べる。

パターン3

売上に対する利益率の大きさで比べる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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ROAの向上を意識して切磋琢磨するようになった二人の社長

ミロクホールディング㈱にはアニキ㈱とオトウト㈱という二つの子会社があります。

アニキ㈱の社長はアニキ社長、オトウト㈱の社長はオトウト社長。二人は、どちらが将来、親会社の社長になるかを競い合っている良きライバルです。
 
今日も地元の居酒屋でROAの向上を意識した経営に関して激しい議論を交わしています。

ROAは、企業が持つ資産をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す重要な経営指標です。「利益が出ているからうちは優秀だ」と思っていても、実は資産の使い方が非効率で、真の“儲ける力”が低い可能性もありますので、ROAの考え方とその意味をしっかり理解しておく必要があるのです。

アニキ社長 うちの会社は今期は得意先が10件も増えたぞ。大したものだろう! 新規顧客の獲得によって売上が伸びただけでなく、既存の設備や資産を最大限に活用して利益率の向上にも取り組んでいる。資産の効率的な運用ができ、ROAも着実に上がってきているぞ!
オトウト社長 そりゃあ素晴らしい。しかし、うちの会社は優秀な技術系の社員を3人も採用できたんだ。来期は業界をひっくり返すような新製品を出していくぞ

今ではお互いに経営者のライバルとして切磋琢磨していますが、1年前の居酒屋での議論は様子が違っていたのです。

ROAを知らずに「儲ける力」の測り方で口論を始めた二人の社長

1年前のある日、アニキ社長とオトウト社長はいつものように居酒屋でお酒を飲みながら話をしていました。

アニキ社長 あれっ、オトウト社長は今日もジーンズにTシャツか。まるでIT企業の社長みたいになってきたな~
オトウト社長 いやいや、アニキ社長にはかなわない。ところで、ついに球団のオーナーになったそうじゃないか?
アニキ社長 がはは。まぁ、近所の少年野球チームのスポンサーになっただけだがな
オトウト社長 球団をもったという点ではアニキの会社に負けたが、うちの会社の儲ける力はすごいぞ。今期の利益は1千万だぞ
アニキ社長 何を言ってるんだ。うちの会社は利益が2千万だぞ。うちの会社のほうが儲ける力があるってことだ
オトウト社長 くそ~、何を言う。そもそも儲ける力って、一体どうやって測るんだ? 利益が大きければ儲ける力があるってことなのか?
アニキ社長 えっ、利益が大きければ儲ける力があるってことだろう。違うのか??

二人は、どのように会社の「儲ける力」を測れば良いのか、首をかしげてしまいました。

このやり取りは、企業の「儲ける力」をどう測るかという本質的な問いにつながります。
単に利益の大小だけで比べていいのか、資産の使い方に注目する必要があるか、売上に対する利益率に注目するのか、皆さんはどう考えますか?

質問

兄弟関係にある二つの会社の社長。「どちらの会社のほうが儲ける力があるのか?」でもめています。あなたならどのような基準で比べますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

利益の金額の大きさで比べる。

パターン2

資産に対する利益率の大きさで比べる。

パターン3

売上に対する利益率の大きさで比べる。

利益の金額が大きければ確かに「儲かって」はいます。しかし、効率よく儲けることができているのかはわかりません。「儲ける力」を測るには、もう少し財務的な分析が必要です。
 

実は、二人の社長が選んだのはパターン2だったのです。なぜ資産に対する利益率で比べることにしたのでしょうか……。
 

売上に対する利益の割合を示す売上高利益率は重要な収益性の指標です。しかし、売上高利益率は損益計算書だけの分析ですから、貸借対照表も含めて分析してみたいところです。
 

ROA(総資産利益率)の意味が分かった! ~競馬に学ぶ“儲ける力”の測り方

アニキ社長とオトウト社長が居酒屋でどちらの会社のほうが儲ける力があるか議論した翌日、二人は親会社の切れ者社長室長に相談することにしました。

社長室長 なるほどね。お二人のどちらのほうが儲ける力があるか知りたいってことね。それならついていらっしゃい
アニキ社長とオトウト社長が連れてこられたのは、“馬券売り場”でした。そこで社長室長は二人の社長に封筒を手渡して言いました。
社長室長 その封筒のお金を元手に、今日一日でいくら儲かるか競争よ
アニキ社長 競馬でどちらが儲ける力があるか試そうってわけですね
オトウト社長  しかし……、私の封筒には2万円しか入ってないのに、アニキ社長の封筒には5万円も入っているんですが……
社長室長 まぁ、細かいことは気にしないで、さぁ、レースが始まるわよ

やがて最終レースが終わると、二人は社長室長のもとに帰ってきました。

アニキ社長 社長室長。私は何と2万円も儲けましたよ!
オトウト社長 くそ~。私は……、1万円でした
アニキ社長 やっぱり私のほうが儲ける力があるってことだな
すると、社長室長は説明を始めました。
社長室長 確かに利益の大きさではアニキ社長の勝ちね。でも、元手に対して何パーセント儲かったか、という投資利回りではどうかしら?
アニキ社長 私は、儲けが2万円で元手が5万円なので、2万円÷5万円で40%です
オトウト社長 私は、儲けが1万円で元手が2万円なので、1万円÷2万円で50%です
社長室長 儲ける力を測る方法の一つに投資利回りがあるのよ。今回はオトウト社長のほうが儲ける力があったってことね
アニキ社長 くやし~。でも、投資利回りと、会社の儲ける力にどんな関係があるんですか?
社長室長 この競馬対決は、企業の資産運用効率を測るROAの考え方を体験的に理解するための比喩です。『元手=総資産』、『儲け=利益』と考えることで、ROAの意味が明確になります

ROA(総資産利益率)の定義と計算式

ROAとは、企業が保有する総資産に対してどれだけの利益を上げているかを示す指標で、計算式は以下のとおりです。

ROA = 利益 ÷ 総資産 × 100(%)

社長室長 会社の場合、最初に封筒に入れて渡された元手が“総資産”よ。貸借対照表の左側に載ってる資産の合計ね。そして、儲けたお金が“利益”。だから利益を総資産で割ったものが会社の儲ける力、ROAよ。さぁ、二人の会社のROAは何パーセントかしら?
アニキ社長 うちは利益が2千万で、総資産が2億。ROAは2千万÷2億で10%
オトウト社長 うちは利益が1千万で、総資産が5千万。ROAは1千万÷5千万で20%
アニキ社長 くそ~。競馬も会社もこっちの負けか~
残念がるアニキ社長と、大喜びをするオトウト社長に向かって、社長室長が言いました。
社長室長 まぁ、まぁ、二人とも。ROAは会社の総合的な収益性を測る一つの指標だけど、会社の評価は、ROAだけで決まるものでもないはずよ。良い製品を作って多くのお客さんに喜んでもらえているか、従業員も満足しているか、そういうところも大切なんじゃないかしら?
両社長 確かにその通りだ……

ROA(総資産利益率)の実務への応用と注意点

ROAは企業の収益性を測る有力な指標ですが、業種によって基準値は異なります。例えば、製造業やインフラ業界では資産が大きいためROAは低くなりがちですが、これは非効率とは限りません。

一方、サービス業やIT企業では少ない資産で高い利益を出すため、ROAが高くなる傾向があります。
また、ROAだけで企業の評価を決めるのではなく、ROE(自己資本利益率)やキャッシュフローなど他の指標と併用することが重要です。

あなたの会社のROAは何%ですか? 利益だけでなく、資産の使い方にも目を向けてみましょう。ROAは、企業の「儲ける力」を客観的に測るための有効なツールですので、是非、有効活用してみてください。

【ワンポイント解説】

「ROA」(総資産利益率)

ROAはReturn On Assetsの略で、総資産利益率とも言い、会社の総合的な収益性を判断する指標です。一般的に次の算式で算出されます。

 損益計算書の経常利益(もしくは当期純利益)÷ 貸借対照表の総資産

ROAが低い場合、資産を有効活用できていない可能性があります。

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