労働生産性を高める取り組みとは? 政府が中堅企業成長ビジョンを策定

2025年12月23日

質問

2025年2月21日、政府は中堅企業成長ビジョンを策定し、2030年までに中堅企業のうちの1割にあたる約1,000社の労働生産性を、平均して年間10%以上向上させるという数値目標を掲げました。中堅企業の成長を実現するために、政府は多くの支援を検討しているようです。これを契機に、中堅企業である「MK社」も労働生産性を高めたいと考えていますが、そもそも労働生産性を高めるためには何をすればよいのか、よくわかりません。次のうち、労働生産性を高める取り組みとして適切なのはどれでしょうか?

パターン1

値引きをして市場シェアを拡大し、売上高の向上を図る。

パターン2

従業員数を減らし、少ない人数で業務を行う。

パターン3

デジタルツールを導入し、業務の自動化とデータ活用を促進する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

企業
成長

中堅企業の成長に向けた労働生産性向上策

2025年2月21日、政府は「中堅企業成長ビジョン」を策定し、2030年までに中堅企業(注)の1割(約1,000社)において年間10%以上の労働生産性向上を達成することを目標に掲げました。当該目標の達成に向けて、政府は中堅企業に対する多岐にわたる支援策を検討しています。MK社は、政府の掲げる「中堅企業成長ビジョン」を契機として、労働生産性の向上に取り組むことにしたのです。

(注)中堅企業の定義
 常時使用する従業員の数が 2,000 人以下の会社等(中小企業者を除く)を言います。
 なお、中小企業者の定義についてはコチラをご参照ください(中小企業庁ホームページ)。

労働生産性を向上させるために何をすればいい?


社長

これを契機に、我々も本腰を入れて労働生産性の向上に取り組もう。だが、労働生産性の向上と言っても、いったい何をすればよいのだろうか…

労働生産性は「付加価値 ÷ 従業員数」と表現されます。つまり、会社が生み出す付加価値を大きくするか、同じ付加価値をより少ない人数で生み出すことで、向上することになります。またこの式は、(付加価値 ÷ 売上高」 × (売上高 ÷ 従業員数)と分解できるため、製品・サービスの利益率を高めるか、従業員一人当たりが稼ぎ出す売上を大きくすることが重要です


経理部長

それでは、競争力強化のために、市場シェアの拡大が重要ではないでしょうか。たとえば、積極的に値引きをして、売上高を増やすという戦略も考えられます


営業部長

従業員数を見直し、少人数で業務を回すことで効率性を高めることができるかもしれません


人事部長

多くの企業がデジタルツールを導入し、業務の自動化やデータ活用を進めています。これにより、業務の効率化や迅速な意思決定が可能になります


IT部門長


社長

なるほど。ただ、どの施策が労働生産性の向上に寄与するのか、よく検討する必要があるな

これらの議論を受けて、MK社は労働生産性の向上に向けた検討を進めることにしました。

質問

2025年2月21日、政府は中堅企業成長ビジョンを策定し、2030年までに中堅企業のうちの1割にあたる約1,000社の労働生産性を、平均して年間10%以上向上させるという数値目標を掲げました。中堅企業の成長を実現するために、政府は多くの支援を検討しているようです。これを契機に、中堅企業である「MK社」も労働生産性を高めたいと考えていますが、そもそも労働生産性を高めるためには何をすればよいのか、よくわかりません。次のうち、労働生産性を高める取り組みとして適切なのはどれでしょうか?

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パターン1

値引きをして市場シェアを拡大し、売上高の向上を図る。

パターン2

従業員数を減らし、少ない人数で業務を行う。

パターン3

デジタルツールを導入し、業務の自動化とデータ活用を促進する。

市場シェアの拡大は、企業の成長にとって重要です。しかし、値引き戦略は利益率を低下させるため、長期的な労働生産性向上にはつながらない可能性があります。持続的な競争力を高めるためには、他の方法を検討する必要がありそうです。

コスト削減のために従業員数を減らしてしまうと、従業員個々人の業務負担が増え、労働生産性向上には逆効果となる可能性があります。むしろ、業務プロセスの見直しや、社員のスキル向上を支援する方が効果的であると考えられます。

労働生産性を向上させるためには、業務の効率化が不可欠です。生成AIやRPA(Robotic Process Automation)などのデジタルツールを導入することで、業務の自動化やデータを活用した意思決定の迅速化が可能になります。政府の「中堅企業成長ビジョン」でもDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が強く推奨されており、労働生産性向上の重要な手段として位置づけられています。

労働生産性を向上させるヒント ~久しぶりに訪れて気づいた「回転寿司屋の秘密」

社長は、MK社の労働生産性を向上させる方法を模索していました。「市場シェアを拡大するための値引き」や「従業員数の削減によるコスト削減」などが候補に挙がっていましたが、本当にそれでよいのか確信が持てずにいました。

そんなとき、久しぶりに訪れた回転寿司屋で、思いがけないヒントを得ることになったのです。以前は、スタッフ数が多いわりに、あまり繁盛していなかった同店でしたが、改装後は大繁盛店となっているようです。少人数のスタッフにもかかわらず注文ミスもなく、お客さんは皆大満足で店を後にしています。不思議に思った社長は、思わず回転寿司屋の店長にその秘密を訪ねてみることにしたのです。


社長

このお店、こんなに混んでいるのに、待ち時間も少ないし、スタッフも少人数で、よく回っていますね

ありがとうございます。うちはデジタルオーダーシステムと自動配膳レーンを導入していますので、スタッフが少なくても、お客様をお待たせせずにサービスを提供することができるんです


店長


社長

すごいですね! ちなみに、失礼ながら、以前はこんなにたくさんのお客さんが入っていなかったと思うのですが、値引きで客数を伸ばすことは考えなかったんですか?

値引きをすれば一時的に客足は増えますが、利益率が低下し、長期的な成長にはつながりません


店長


社長

なるほど……。では、コスト削減のために従業員を減らすことは?

単純に人を減らせば、スタッフの負担が増え、接客の質が下がります。結果的に、客足が遠のき、売上高が減ることで、労働生産性が低下してしまうんです。重要なのは業務を最適化し、少ない人数で高い生産性を実現することだと考えたんですよ


店長

DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した労働生産性の向上

社長は、自社の業務にもデジタルツールを導入すれば、無駄を省き、効率的な働き方が実現できると考えました。回転寿司店のように、業務のデジタル化によって作業の無駄をなくし、リアルタイムで最適な情報を共有できる環境を整えれば、従業員の負担を軽減しつつ生産性を向上させることができるはずだと考えたのです。

翌週の経営会議で、社長はこの気づきを共有し、DXの推進と業務の自動化の推進による労働生産性向上に舵を切ったのでした。

「中堅企業成長ビジョン」

中堅企業成長ビジョンは、政府が中堅企業の競争力強化と持続的成長を促進するために策定した戦略です。2030年までに1,000社の労働生産性を年間10%以上向上させることを目標とし、DXの推進、イノベーション投資の支援、人材確保・育成、M&Aを活用した企業の成長促進などの施策が柱となっています。特に、付加価値向上や業務効率化を通じた持続的成長を重視し、企業が自律的に成長できる環境整備を目指しています。

詳細については、以下をご参照ください。
中堅企業政策(経済産業省)


お知らせ

次号は、2026年1月5日に公開となります。引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

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