CAGRなら前期比では見えない成長の実力が見える! 両者の使い分けと併用のススメ

2026年5月13日

質問

雑貨の小売業を営む「ミロク雑貨販売」では売上高が以下のように推移しており、前期比+40%が2期続いたときもあります。しかしCAGRは+20%にとどまっています。なぜでしょうか?

×1期 ×2期 ×3期 ×4期 ×5期
売上高 1,000 1,400 1,960 1,730 2,076
前期比 +40% +40% ー11.7% +20%

パターン1

前期比は短期変動に左右されやすいから。

パターン2

前期比は複利計算だから。

パターン3

CAGRは最終年度の前期比の数字のみで計算するから。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

計画
分析

CAGR(年平均成長率)の数値で成長を実感

雑貨の小売業を営む「ミロク雑貨販売」では、最近、経営会議の資料にCAGRを取り入れるようになったことで、自社の成長を数値で実感できるようになりました。
しかし、以前のミロク雑貨販売ではどのくらい成長しているのかがよく分かっていませんでした。

前期比は高いけど、会社は本当に成長している?

ミロク雑貨販売の売上高は【図表1】のように推移しています。

【図表1】売上高と前期比の推移

×1期 ×2期 ×3期 ×4期 ×5期
売上高 1,000 1,400 1,960 1,730 2,076
前期比 +40% +40% ー11.7% +20%

前期比を見る限り、いい年は40%も伸びてるし、今年もプラス! これはかなりの成長企業と言えるんじゃないか?


社長


財務部長

うーん……確かに数字は悪くないんですが……なんというか……どこか引っかかるんですよね

引っかかる?


社長


財務部長

はい。前期比って“足元の動き”をつかむには向いてるはずなんですが……。じゃあ会社が長い目で見て本当に伸びてるのかっていうと、どう判断すればいいのか、ちょっと自信がなくて

なるほど、前期比だけじゃ“長い目”が見えないってことか


社長


財務部長

そうなんです。ただ、じゃあ何を見ればいいのかと言われると……正直、まだうまく整理できなくて……。“毎年の変化”と“積み上がった成長”をどうやって区別したらいいんだろう、って

確かに単年の増減だけで判断するのは危ない気もするな


社長


財務部長

ええ。数字は出ているんですが、これをどう読めばいいのか……。もしかすると“別の見方”が必要なのかもしれません……

質問

雑貨の小売業を営む「ミロク雑貨販売」では売上高が以下のように推移しており、前期比+40%が2期続いたときもあります。しかしCAGRは+20%にとどまっています。なぜでしょうか?

×1期 ×2期 ×3期 ×4期 ×5期
売上高 1,000 1,400 1,960 1,730 2,076
前期比 +40% +40% ー11.7% +20%

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

前期比は短期変動に左右されやすいから。

パターン2

前期比は複利計算だから。

パターン3

CAGRは最終年度の前期比の数字のみで計算するから。

短期の勢いを示す前期比と、中長期の傾向を示すCAGRは別物です。たとえ2年連続で+40%の年があっても、途中に-11.7%の凹みが入っているなど、起点→終点の平均の伸び率を算出すると、+20%にとどまっています。

前期比は複利計算したものではありません。単に「前期から何%増減したか」を示すだけの単年度比較です。一方、CAGRは複利計算したものになります。

CAGRは最終年度の前期比の数字になるわけではありません。今回のケースではたまたま最終年度の前期比とCAGRがともに20%となっているだけです。

毎日じゃ見えない“成長”に気づいた瞬間

その日の夜、財務部長が帰宅すると、リビングでは小学生の娘が宿題をしていました。机の上には、学校で育てている植物の観察記録ノートが開いています。

お父さん、見てこれ。今日は昨日より1センチ伸びてたよ!



財務部長

お、順調に育ってるねぇ

でもね、先週なんて全然伸びなかった日もあったんだよ。毎日バラバラで、正直、育ってるのか育ってないのか分かんないなぁって思う


財務部長は笑って言いました。


財務部長

毎日の変化だけ見てると、そう感じるかもしれないね。でも、ほら──最初の日と今を比べてみたら?

……あ、ほんとだ! 最初は4cmだったのに、いま9cmになってる。こうやって見ると、けっこう育ってるんだね!



財務部長

そうそう。毎日の伸び方は日によって違うけど、長い時間で見た“全体の育ち方”はしっかり分かるでしょ

そっか。目の前の変化が小さくても、ちゃんと前に進んでるんだね!


このとき財務部長は気づきました。


財務部長

今日会社で考えていた“成長を見る視点”って、植物の成長観察と同じじゃないか!

CAGR(年平均成長率)とは

財務部長がこのときの気づきを踏まえ調べてみたところ、CAGRが使えることがわかり、会議の資料にCAGRの数値を入れることにしました。


財務部長

前期比だけでは中長期的な成長力は分かりません。一方でCAGR(年平均成長率)というものがあって、数期分の平均成長率を表すことができます。そこでCAGRを算出して資料に入れてみました。CAGRを使えば“成長スピード”を数値でつかめます

CAGRか。具体例で教えてくれるかい?


社長


財務部長

例えば、【図表2】のように売上高が推移している場合、起点で1,000だった売上高が毎年一定の率で伸びたとして、4年後に2,076になる率を算出することができます。これがCAGRです


【図表2】売上高の推移

×1期 ×2期 ×3期 ×4期 ×5期
売上高 1,000 1,400 1,960 1,730 2,076
前期比 +40% +40% ー11.7% +20%
CAGR +20%
一定率で成長 1,000 1,200 1,441 1,729 2,076

(注)CAGR ≒ 20.0347%となりますが、上表では20%と表記している。

図1

(参考)CAGR(年平均成長率)をExcel(エクセル)で計算する場合の計算式
    Excelのセルに次の計算式(売上の部分は金額)を入れて計算できます。
    =(N年度の売上/初年度の売上)^(1/(N年-初年))-1

「起点値=1,000、終点値=2,076、年数=5」で計算すると、CAGR ≒ 20%となります。
  (注)起点が×1期、終点が×5期のため、年数は「5」を使います。

なるほど。前期比の+40%のところについつい目が行ってしまっていたが、平均すると20%の成長にとどまっているわけか


社長

前期比とCAGR(年平均成長率)の特徴の違い

では、前期比とCAGRではどんな違いがあるのでしょうか。

■ 前年比
前年比は、「2期分を比べてどのくらい増減したか」を一目で把握できる指標です。その最大の特徴は、短期間の変化に非常に敏感であることです。
 ✔異常値の検出に向いている(急に落ち込んだ、著しく伸びたなど)。
 ✔ただし、短期的な状況によって大きく変化しやすい点に弱みがある。前期が一時的に低いと反動で大きく見え、
  前期が高すぎると翌期は不当に悪く見える。結果として、実力以上に良くor悪く見えることがある。

■ CAGR(年平均成長率)
CAGRは起点から終点までの複数年を、毎年一定割合で増えた(or減った)とみなしたときの平均ベースの年率を示します。
 ✔中長期の成長ペースが把握できる。
 ✔途中の大きな変化をならし、実質的な成長をつかみやすい。
 ✔中長期経営計画や市場予測など、中長期的な判断に向く。
 ✔ただし、途中の大きな変化がならされてしまい、実態より安定して見えることがある。

以上のような特徴から、前期比とCAGRを併せて分析することが望ましいと言えます。前期比を見ることで、短期の異常や失速に気づくことができ、CAGRを見ることで、中長期の成長速度をつかむことができるので、両輪で回せば目標未達の早期発見と早期修正にもつながります。

なるほど。前期比は短期、CAGRは中長期の成長を見える化できるってことか


社長


財務部長

うちの場合、図表2のように前期比の上下は激しいですが、実質的な成長スピードは年平均20%です

まぁ、地に足が着いた現実的な数字と言えそうだな。これならこれまでのCAGRの実績値を踏まえつつ、中期計画を策定する際にも使えそうだ


社長

CAGRを使うことで中長期的な成長速度が数値化できたことで、これからの計画も立てやすくなりそうです。現状のCAGRの数値を踏まえつつ、今後のCAGRの目標を検討していく予定です。

「前期比とCAGR(年平均成長率)」

前期比は短期の変化を敏感に捉える“現在地”、CAGRは中長期の平均成長スピードを示す“目的地までのペース”といえます。経営判断では、“前期比で揺れを見る”、“CAGRで方向性を見る”と考えることもできます。これらを併用することで成長の誤認が少なくなり、実態に近い意思決定を実現することにもつながります。

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