「満足」しているのに解約される謎:サブスクの利益を守る先行指標とは?

2026年9月13日

質問

「ミロク・セキュリティ」は、オフィス向けスマートロック(入退室管理システム)の製造・販売を行っています。サブスクリプション型のビジネスモデルへと転換した同社ですが、最低契約期間が過ぎた顧客の解約が新たな課題となっています。LTV(顧客生涯価値)を最大化し、長期的な利益を確保するために、社長は顧客のロイヤルティを測る「究極の質問」を新たな管理指標として導入することを提案し、幹部たちに意見を求めました。どのような指標を用いるのが適切でしょうか?

パターン1

自社のサービスを親しい同僚や他社に勧めたいかを測定し、解約リスクを予測する管理指標とする。

パターン2

解約率をモニタリングし、数値が悪化した際に顧客の引き留めを行う管理指標とする。

パターン3

顧客満足度を定期的に測定し、「満足」と答えた顧客の割合を管理指標とする。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

解約
満足

LTV(顧客生涯価値)を最大化し、長期的な利益を確保するための管理指標を導入

「ミロク・セキュリティ」は現在、LTV(顧客生涯価値)を最大化し、長期的な利益を確保するための管理指標を導入がされました。しかし、以前は、満足度は高いのに、解約が増える状況に悩んでいたのです。

半年前 ~満足度は高いのに、解約が増える謎…

ミロク・セキュリティが打ち出した製品ゼロ円戦略は見事に的中し、初期費用のハードルがなくなったことで新規契約数は飛躍的に伸びました。

当記事は次の記事の続編となります。
ミロク・セキュリティが打ち出した製品ゼロ円戦略については、コチラをご確認ください。
「モノを売るか、サービスを売るか。LTVでビジネスを考える」(経営センスチェック2026613日号) 

しかし、戦略導入から2年が経過すると、新たな課題が浮き彫りになってきました。最低契約期間の2年が終了した途端に、契約を更新せずに解約してしまう顧客が一定数現れ始めたのです。定期的に実施している顧客満足度調査の結果は良好であるにもかかわらず、なぜか解約は増える一方です。継続的なサービスの提供を通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化するという社長のビジョンに、暗雲が立ち込めてしまいました。

ある日の経営会議でのことです。

社長が提案された製品ゼロ円戦略のおかげで新規契約の獲得は順調です。しかし、2年の最低契約期間を満了したお客様から、契約を更新せずに解約したいという申し出が増えておりまして……


営業部長


社長

どうして解約が増えているんだ!? 顧客満足度調査の結果は良好と報告を受けたばかりなのに

短い契約期間での解約が増えてしまうと、顧客から得られる利益は小さくなってしまい、製品ゼロ円戦略の前提が崩れてしまいます


財務部長


社長

たしかにそのとおりだ。長い期間、わが社の製品を使い続けてくれなければ、LTV(顧客生涯価値)は小さくなってしまう。LTVに加えて、他の指標も組み合わせて管理する必要がありそうだな

既存のお客様に長く使い続けていただくために、どのような目標を掲げて顧客のフォローを行うべきでしょうか?


営業部長


社長

長期的な利益を確保し続けるために、お客様の真のロイヤルティ(愛着や信頼)を測る必要がある。実は先日、経営者仲間の間で、顧客の離脱を的確に予測するある究極の質問が話題になっていてな。わが社にも新たな管理指標として導入したいと考えているのだが。皆なら、顧客の真のロイヤルティを測るために、どのような指標を用いるのが適切だと思う?

質問

「ミロク・セキュリティ」は、オフィス向けスマートロック(入退室管理システム)の製造・販売を行っています。サブスクリプション型のビジネスモデルへと転換した同社ですが、最低契約期間が過ぎた顧客の解約が新たな課題となっています。LTV(顧客生涯価値)を最大化し、長期的な利益を確保するために、社長は顧客のロイヤルティを測る「究極の質問」を新たな管理指標として導入することを提案し、幹部たちに意見を求めました。どのような指標を用いるのが適切でしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

自社のサービスを親しい同僚や他社に勧めたいかを測定し、解約リスクを予測する管理指標とする。

パターン2

解約率をモニタリングし、数値が悪化した際に顧客の引き留めを行う管理指標とする。

パターン3

顧客満足度を定期的に測定し、「満足」と答えた顧客の割合を管理指標とする。

他者に勧めたいかを問う指標は、単なる満足度よりも顧客の強い愛着(ロイヤルティ)を的確に測れます。推奨意向の高さは継続利用に直結するため、解約リスクを事前に察知する「先行指標」として機能し、LTVの最大化と長期的な利益確保に向けた最適な管理指標となります。

解約率(チャーンレート)はサブスクリプションビジネスにおいて極めて重要な指標とされます。しかし、これは過去の行動の結果を示す「遅行指標」です。解約率の悪化に気づいた時点では、すでに顧客の心は離れてしまっていることが多く、そこから引き留めようとしても手遅れになるリスクがあります。

顧客満足度は重要な指標ですが、「満足している」と答えた顧客が必ずしも契約を継続するとは限りません。現状に不満はないが、他社にもっと安いサービスがあれば乗り換えるという受動的な状態が含まれやすいため、将来の継続行動を予測する管理指標として顧客満足度は十分ではない場合があります。

解約を防ぐ「先行指標」とは?

社長、その究極の質問とは何なのですか?


営業部長


社長

質問はこうだ!「親しい友人や同僚に、ミロク・セキュリティのサービスを勧める可能性はどのくらいありますか?」。これを0点から10点で評価してもらうんだ

「満足していますか」と「勧めたいですか」…。似ているようで、何かが違う気がしますね


営業部長


社長

大違いだ! 満足は自分だけの感情だ。まあ、悪くはない(満足)と答えた顧客でも、翌月には安い他社に乗り換えてしまう。しかし、勧めるという行為は、自分の信用を賭けることになる。本当に良いと思い、信頼していなければ、他人には勧められないはずだ

なるほど…。責任が伴うわけですね


財務部長


社長

その通りだ。だからこそ、解約という結果(遅行指標)が出てから慌てるのではなく、この質問によって将来の行動意図という先行指標を測るんだ。評価が低い顧客に対して解約される前にフォローを行うことが、わが社のLTVを最大化することにつながるんだ!

結果(過去)を追うか、意向(未来)を測るか

これまでのモノを売るビジネスでは、売上高や利益といった過去の「結果」を示す財務指標(遅行指標)が重視されてきました。しかし、サービスを継続利用してもらうことで収益を得るサブスクリプションモデルでは、顧客の離脱がビジネスの命取りになります。結果が出てからでは手遅れになるため、顧客の心理や将来の行動意図を示す「先行指標」を業績管理に組み込む必要があります。

社長が提案したこの指標は「NPS(ネットプロモータースコア)」と呼ばれ、現代の経営管理において広く普及しています。顧客のロイヤルティを可視化し、未然に解約を防ぐアクションに繋げることが、LTVを最大化するための鍵となるのです。

「遅行指標と先行指標」

経営管理において、業績評価指標は大きく「遅行指標(Lagging Indicator)」と「先行指標(Leading Indicator)」の2つに分けられます。遅行指標は、売上高や利益、解約率など過去の活動の結果を示す指標です。最終的な目標達成度を測るのに適していますが、事後的な数値であるため、悪化に気づいてから対策を打っても手遅れになりやすいという弱点があります。一方、先行指標は、今後の業績の推移を予測するための指標です。この先行指標に働きかけることで、将来の遅行指標(結果)をコントロールすることが可能になります。

「NPS(ネットプロモータースコア)」

ストーリーの中で社長が提案した指標は「NPS(Net Promoter Score)」と呼ばれます。「あなたはこのサービスを親しい友人や同僚にどの程度すすめたいと思いますか?」という問に対し、0〜10点で評価を求めます。

・ 推奨者(9〜10点):ロイヤルティが高く、継続期間が長い。
・ 中立者(7〜8点):満足はしているが、競合へなびきやすい。
・ 批判者(0〜6点):早期解約のリスクが高い。

NPSは一般的に、推奨者(9〜10点)の割合から批判者(0〜6点)の割合を差し引いて算出されます。NPSは、数ヶ月先の解約リスクや継続意向を予測する「先行指標」として機能します。批判者や中立者に対して早期にヒアリングを行い問題解決を図ることで、LTVの最大化を実現することができます。

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