赤字決算を回避せよ! 家賃支払いを来期に回した社長が勘違いしていたこととは?

2021年10月13日

卸売業

  • 卸売業
2021/10/13

質問

売上が低迷し、今期は赤字が見込まれる「ミロク商事」。本社の家賃を支払う月末が近づいていますが、社長が、家賃の支払いを引き延ばして費用を減らすよう経理担当者に指示しています。あなたが経理担当者なら次のうちどう対処しますか?

パターン1

社長の指示通り、家賃の支払いを遅らせ、今期の費用を減らす。

パターン2

社長に対し、家主が怒らないよう、家賃の半分を支払い、その分費用を減らしてはどうかと説明する。

パターン3

社長に対し、家賃の支払いを来期にしても今期の費用は変わらないと説明する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
イメージ01
イメージ02

経費をしっかり期日に支払っている会社

「ミロク商事」は、加工食品等を扱う卸売業です。景気変動の影響で業績が苦しくなり、取引先に支払いを先延ばしにしてもらわざるを得ない時期もありましたが、ここ数年はそのようなこともなく、しっかり期日に支払いができています。
 
今でこそ、資金繰りに問題がないミロク商事ですが、数年前は業績が低迷し大変だったのです。

数年前 ~このままでは今期は40万円の赤字です!

その月はミロク商事の期末月でした。ある日のこと。社長室に経理担当があわてた様子で飛び込んできました。

経理担当 社長、大変です!
社長 どうした、そんなに血相変えて!
経理担当 先ほど、今期の売上と利益の着地予想を計算してみたのですが、このままでは40万円の赤字となりそうなのです
社長 何だって? 赤字! 赤字はまずいぞ。株主や銀行に何と言われるか……
経理担当 社長、何とか売上を増やすことはできませんか?
社長 あと1カ月足らずではちょっとむずかしいな~
経理担当 今からでも減らせる経費があればいいんですが……
社長 そうだ! 確か月末に今月分の家賃の支払いがちょうど40万円あっただろ。その家賃の支払いを来期にずらしてもらおう。そうすれば費用が40万円減って赤字を回避できるぞ
 

質問

売上が低迷し、今期は赤字が見込まれる「ミロク商事」。本社の家賃を支払う月末が近づいていますが、社長が、家賃の支払いを引き延ばして費用を減らすよう経理担当者に指示しています。あなたが経理担当者なら次のうちどう対処しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

社長の指示通り、家賃の支払いを遅らせ、今期の費用を減らす。

パターン2

社長に対し、家主が怒らないよう、家賃の半分を支払い、その分費用を減らしてはどうかと説明する。

パターン3

社長に対し、家賃の支払いを来期にしても今期の費用は変わらないと説明する。

確かに経費の支払いを遅らせれば、それだけ資金繰りにゆとりが出てきますから、その点では会社には良いかもしれません。しかし、家賃の支払いと家賃の費用計上は関係ないので、赤字は回避できそうにありません。
 

確かに家主に迷惑がかかりますから、支払いを遅くするべきではありませんが、問題は家賃の支払いと家賃の費用計上には関係がないという点です。
 

経理担当が選んだのはパターン3でした。なぜ、家賃の支払いを来期にしても今期の費用は変わらないのでしょうか……。
 

社長が学んだ現金主義と発生主義の違い

社長から、家賃の支払いを来期に遅らせ、その分だけ今期の費用を減らすよう指示された経理担当は、困った顔をしながら自分の席に戻りました。

経理担当の心の声 <困ったな~。社長に現金主義と発生主義の違いをどうやって説明したらいいんだろう……>

と、そのとき、今度は社長が顔を真っ赤にして、経理担当の席にやってきました。

社長 やったぞ。さっき、得意先のA社に電話して、追加で30万円の契約が取れたぞ! 原価が10万円だから、これで20万円の利益だ。明日には納品して、入金は2カ月後だ
経理担当 本当ですかっ! さすが社長ですね!
社長 まぁな、この数分で20万円も利益をもってくるなんて、そう簡単じゃないぞ。昔は俺も電話営業の天才と呼ばれたんだ
経理部長 ということは、赤字が40万円ですから、あと20万円の利益で黒字ですね
社長 それなら、家賃が40万円だから、半分の20万円だけ払っておくとするか
経理担当 社長、そのことなんですが、今月の支払いを来期にずらしても、今月本社建物を使った分の家賃費用40万円は今月計上しなければいけないんです
社長 何だって? それはおかしいだろう。お金を払っていないんだから費用じゃないだろう?
経理担当 現金を払ったときに費用に計上するのを現金主義と言いますが、会計では費用は使ったとき、つまり発生したときに費用に計上するのです。これを発生主義と言います
社長 そりゃあ、おかしいだろう。お金を払っていないものは費用にならないと考えるのが自然だろう
経理担当 でも、社長が今、営業してくださった40万円の売上は、来期の入金ですが、今期に売上を計上しますよね
社長 うぅ……、確かにその通りだ……
経理担当 売上も費用もお金の動きとは関係ないのです。では、あと利益20万円、頑張って電話営業してください!
 
ワンポイント解説

「発生主義」

会計上の費用を、現金の支出時点ではなく、発生した時点(使用した時点)で計上するという考え方です。発生主義による場合、費用の対価をいつ支払ったかは関係ありません。なお、現金の支出時点で費用を計上する考え方は現金主義と言いますが、企業会計上は適正な費用計上とは言えません。

おすすめ情報

MJS税経システム研究所『公式Xアカウント』を開設しました!

税経X

経営センスチェックの最新記事が公開されたらXでお知らせします。
また、経営に役立つさまざまな情報もXから気軽にお届けしていきますので、ぜひフォローをよろしくお願いいたします!

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら