記事制作:税経システム研究所

小売業

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2017/06/13

質問

安い金額を提示してきた配送業者への切り替えを検討するように指示された、百貨店のギフト部門の担当者。ところが担当者が決めたことが裏目に出てクレームが殺到することに……。担当者が本来とるべき行動は次のうちどれだったでしょうか?

パターン1

これまでの業者との取引を継続するよう、上司を説得すべきだった。

パターン2

新しい業者とこれまでの業者を並行して取引することを提案すべきだった。

パターン3

上司の意向を忖度(そんたく)して、新しい業者へ切り替えるべきだった。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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顧客からのクレーム対応に大慌て

「ミロク百貨店」は、これまで中堅の地方都市で堅実に営業し、地元のお客さまに愛されてきた老舗の百貨店です。

そんなミロク百貨店ですが、繁忙期であるお中元シーズンのある日、ギフト部門にかかって来る電話が鳴りやみません。その電話の内容はと言うと、ほとんどがお客さまからのクレームでした。

クレーム電話1 え? 絶対にこの時間までに届けてほしいとお願いしていたはずなのにまだ届いていない? 大変申し訳ございません。すぐに配送業者に確認いたします
クレーム電話2 忙しい早朝の配達は避けてほしいと何回も伝えてあったのに、また早朝に? 本当に申し訳ございませんでした
クレーム電話3 お客さまのおっしゃる通り、同姓の方が多い地域のため、間違えてお届けしてしまったのかもしれません。すぐに引き取りに向かわせます

ミロク百貨店のギフト部門に一体何が起こったのでしょうか。

実は、このトラブルが発生した原因は、ギフト部門が行ったある判断ミスによるものなのですが、その時の様子を振り返ってみましょう。

今年の5月 ~大手の宅配業者から配送費削減につながりそうな提案を受ける

春のお祝いシーズンの繁忙期を乗り切った後、次の繁忙期であるお中元シーズンに向け、計画通りに各種準備を進めていたミロク百貨店のギフト部門に、大手宅配業者から期間限定のキャンペーンの案内がありました。

どうやら、これまでこの地方であまりシェアを取れていなかった大手の宅配業者が、シェア拡大のために他の業者よりも安い価格を提示してきているようです。

課長 部長、このキャンペーンどう思われますか?
部長 やっぱり大手はすごいな。本当にこの単価で配送してもらえるなら、相当コスト削減が見込めるんじゃないか? よし、前向きに検討してみてくれ
担当者 え? でも、これまでの業者さんはどうするんですか? 今の業者さんは現場のことをよく分かってるので仕事がやりやすいですし、配送も丁寧でお客さまからの評判もいいです。そもそも繁忙期に切り替えるのはちょっとリスクがあると思うんですが……
課長 一度内容を聞いてみる必要はあるけど、大手なんだからそんなに対応も悪くはないだろう。それより何かとコストがかさむ繁忙期に配送費を削減できれば、ギフト部門の貢献が際立つだろ!
部長 ということで、早速、詳しい話を聞きたいと連絡してみてくれ
担当者 はぁ。分かりました
確かに、繁忙期は売上も大きくなる反面、臨時のアルバイトを雇ったり、イベントを行ったり、広告宣伝を強化したり、売り場に装飾を施したりと、通常営業の時とは比べ物にならないほど、費用もかかります。

その繁忙期に費用を抑えることができれば、課長の言う通りギフト部門の評価は高まるでしょう。現場担当者として一抹の不安を抱えつつも、部の方針に従って、大手の宅配業者から話を聞いてみることにしました。
課長 予想していた通り、何か特別なサービスがあるわけではないですが、必要最低限の宅配サービスが含まれてこの金額なら、やはりどう考えてもお得ですよ
部長 君もそう思ったか。それじゃ、次のお中元シーズンから配送業者を切り替える方向で話を進めて行こうか
担当者 確かに安くはなりますが、それで決めてしまっていいんでしょうか……
課長 何なんだ君は? 逆に聞くが、こんなに安くなるのに切り替えない方がいい理由は何かあるのかね?
担当者 それは……

質問

安い金額を提示してきた配送業者への切り替えを検討するように指示された、百貨店のギフト部門の担当者。ところが担当者が決めたことが裏目に出てクレームが殺到することに……。担当者が本来とるべき行動は次のうちどれだったでしょうか?

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パターン1

これまでの業者との取引を継続するよう、上司を説得すべきだった。

パターン2

新しい業者とこれまでの業者を並行して取引することを提案すべきだった。

パターン3

上司の意向を忖度(そんたく)して、新しい業者へ切り替えるべきだった。

実はミロク百貨店のギフト部門の担当者に選んでほしかった選択肢はパターン1でした。担当者は上司に食い下がることができず、この選択をしなかったのですが、もし、この選択をすべき理由を理解した上で、諦めずに上司を説得できていれば、ひょっとすると冒頭にあったようなクレーム電話はかかってこなかったかもしれません。

徐々に切り替えることでリスクを分散できるということも考えられますが、手続き面で手間が増える、ボリューム面で価格交渉力が弱くなるなど、さまざまな面で非効率になることが考えられます。一社に集約できるのであれば、それにこしたことはないかもしれません。

ミロク百貨店のギフト部門の担当者が選択したのはパターン3でした。上司を説得できるだけの材料も見つけられなかったため、一抹の不安を感じつつ安い金額を提示してきた業者へ切り替えることになったのですが……

見落としていたのは金額には表れない『スイッチングコスト』だった

担当者は不安な気持ちを抱えていたようですが、最終的にミロク百貨店は「パターン3」の新しい業者への切り替えを選んでしまいました。なぜ、配送金額を抑えるためのこの選択が、クレーム発生の原因となり、当初見込んでいたようなコスト削減につながらなかったのでしょうか。

業者の切り替えに伴うコストを比較する上では、提示される金額以外の要素も含めて考える必要があることに注意してください。ミロク百貨店の場合、その視点が抜け落ちていたようです。

例えば長い間、取引を繰り返してきた業者の場合、細かいことまで指示しなくても、こちらの意図をくみ取って自発的に動いてくれる部分があります。しかし、取引を始めたばかりの業者には、そういった対応は難しいでしょう。
 
依頼内容を正確に伝えるために、いちいち細かく指示をしなければならないと、それだけで当然、手間が増えます。また、丁寧に気を回していられないような繁忙期の場合、指示が漏れてしまう確率も高くなりますが、万一、指示漏れ等によるトラブルが発生してしまうと、冒頭にあったような、クレーム対応のための時間や手間といった余計なコストも負担しなければなりません。

さらにお客さまからの信頼も失ってしまいます。一度失った信頼を回復させるのは相当なコストがかかる上に、悪いうわさがSNS(Social Networking Service)などを通じてあっという間に広がってしまうことも……。もちろん事前にしっかりと品質などが確認できれば良いのですが、このようなトラブルを起こさない安心できる業者かどうかをしっかり見極めるにも、ある程度の時間と手間がかかります。

これまで何度も取引を繰り返してきた元の業者は、丁寧な配送をすることなどで、金額に表れないところでミロク百貨店が負担すべき、あるいは負担しなければならなくなるかもしれないコストを削減してくれていたということです。表面的な配送料の金額だけではなく、こうしたスイッチングコストも含めて比較検討しなければ、ミロク百貨店のように思わぬ判断ミスにつながる可能性もあります。

ミロク百貨店のその後

さて、一連のトラブルを受け、ミロク百貨店は慌てて元の業者にもう一度宅配業務をお願いできないか相談しに行きました。これまで、長い付き合いをしてきた“お得意さま”であるミロク百貨店だからこそ、その業者は別途費用を請求することなくいろいろなサービスを提供してくれていたのです。それにもかかわらず、その関係を突然断ち切ったわけですから、元の業者にとってミロク百貨店は既にお得意さまではなくなっていました。その結果、もちろん仕事は引き受けてくれるとのことですが、料金は以前と同じというわけにはいかず、少し高めの値段で改めて見積もられるようです。

切り替えによって発生するさまざまなコストを見落とし、目に見える金額だけで判断してしまったミロク百貨店。どうやらそのツケは、削減できた費用とは比べ物にならないコスト負担になって跳ね返ってきそうです。

【ワンポイント解説】
「スイッチングコスト」
スイッチングコストとは、現在利用している製品・サービスから他の製品・サービスに切り替える際に利用者が負担しなければならないコストのことで、切り替えにかかる金銭的な負担だけでなく、使い方に慣れるための手間暇や心理的な負担なども含みます。
自社の製品・サービスから他社の製品・サービスへのスイッチングコストを高めることで、顧客離れを生じにくくすることができます。
 
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