お金をもらったのに売上にならないってどういうことだ? 粉飾を疑われた社長の言い分
2019年10月13日
質問
顧客からサービス代金を前払いしてもらい、それをすべて売上に計上したところ、銀行から粉飾じゃないかと疑われた「みろくITサポート」の社長。あなたが経営者なら、この前払いしてもらったお金をどう計上しますか?
パターン1
お金をもらったのだから売上で良い。
パターン2
サービスの提供前なので売上に計上せず、預り金とする。
パターン3
サービスの提供前なので売上に計上せず、前受金とする。
|
|
販売代金を前払いしてもらうようにしたことでキャッシュリッチになった会社
「みろくITサポート」はITに係る保守・運用サービスを提供する会社で、社長の妻が経理を担当しています。創業から10年が経ちますが、3年前からサービス代金を前払いしてもらうように方針転換をしたことで、猛烈に現預金が増えはじめ、それをもとに設備投資をしたことで急成長に成功しました。
経理担当(妻) | あなた、今期もまたすごい現預金の残高になっているわ。この資金をわずかな金利しか生まない預金にしておくのはもったいないわね |
---|---|
社長 | 確かにそうだな。でも、銀行からの借入の返済に苦労していた時期を考えると今は経営が楽しくて仕方がない |
経理担当(妻) | まったくね。3年前に思い切って方針転換したのが正解だったわね |
サービス代金の前払いが今の成功のきっかけになっていますが、方針転換したときの決算ではちょっとした騒ぎが起こったのです。
3年前 ~銀行から粉飾を疑われた!
3年前、みろくITサポートは、サービス提供後に受領していた販売代金を、サービス提供前に受領するよう方針転換をしました。そのことで契約数は一時的に減少したものの、かなり資金に余裕が出てきて、それを銀行の借入の返済に充てるようにしました。
その期が終わり、決算報告のために銀行を訪問したときのことです。銀行の担当者が不機嫌そうな表情で話をはじめました。
銀行の担当者 | 今期は随分と貸付を返済していただきましたが……、実は当行としてはもっと御社に融資させていただきたいと思っているのですよ |
---|---|
社長 | それは大変ありがたいお話ですが、借入をもうちょっと減らさないと、私は心配で夜もまともに寝れないんです |
銀行の担当者 | いや~。ここまで融資残高が減ったら私も上長になんて言われるか不安で夜も寝れませんよ…… |
社長 | ところで、これが前期の決算書です。販売代金を前払いしてもらうようにしたことで、かなり売上が増えました |
銀行の担当者 | えっ、前払いしてもらった販売代金を売上に計上したんですか? |
社長 | ええ。だって……、お金をいただいていますから売上になりますよね |
銀行の担当者 | 何を言ってるんですか、それじゃあ粉飾じゃないですか! |
社長 | 粉飾なんて人聞きの悪い。借入を減らしたからって、変な言いがかりはやめてくださいよ! |
質問
顧客からサービス代金を前払いしてもらい、それをすべて売上に計上したところ、銀行から粉飾じゃないかと疑われた「みろくITサポート」の社長。あなたが経営者なら、この前払いしてもらったお金をどう計上しますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
お金をもらったのだから売上で良い。
パターン2
サービスの提供前なので売上に計上せず、預り金とする。
パターン3
サービスの提供前なので売上に計上せず、前受金とする。
お金をもらったのだから売上だ、という気持ちは分かります。しかし、売上は商品を引き渡したり、サービスを提供したりしたときに計上するものです。お金をもらっただけでサービスを提供していない場合、そのお金は売上に計上するべきではありません。他の勘定科目で計上しておく必要がありそうです。
サービス提供前なので売上に計上しないのは良いのですが、預り金はお金を一時的に預かった場合に使う勘定科目です。つまり預り金は後日支払うことが予定されているものです。今回は支払う義務はないので預り金以外の勘定科目を検討する必要がありそうです。
実は、社長がとった行動はパターン3だったのです。なぜ売上に計上してはいけないのでしょうか……
売上はお金の授受とは関係なかった!
銀行の担当者と大喧嘩をした社長、その日の夜は大学時代のゼミの仲間と同窓会でした。
社長 | お~、みんな変わらないな~ |
---|---|
同級生A | お前も変わらないな~。そういえばお前、起業したんだってな。大したもんだ |
社長 | そういうお前も銀行で支店長になったそうじゃないか。えらくなったもんだな |
同級生A | 今の銀行は大変だぞ。何しろAIで人が要らなくなるだの、新卒の採用数を減らすだの、もっと違う業界を目指すべきだったな~ |
社長 | ところで、今日、銀行の担当者からサービス提供前に受け取ったお金は売上に計上してはいけないって言われたんだけど、そんなことないよな |
同級生A | 何寝ぼけたことを言ってるんだ、お前社長だろ。商品を引き渡したり、サービスを提供したりしてはじめて売上は計上できるんだ。事前にもらったお金は売上の前に受け取ったお金ってことで、前受金だ |
社長 | 何だって? でもお金はもらってるんだぞ |
同級生A | それなら売掛金はどうだ? お金をもらってなくても売上を計上しているだろ。売上の計上とお金の授受は別問題なんだ |
このとき社長は思いました。
社長の心の声 | <確かにそのとおりだ……。悔しいが、明日、決算書を作り直して、銀行の担当者に謝りにいかないといけないな……> |
---|
「前受金」
代金の一部や全部を受領したとしても、商品やサービスの提供がまだされていない場合には、やるべき義務をまだ果たしていないので、その段階では売上となりません。前受金(負債)は、顧客に対して商品やサービスを提供しなければならない状態を表す勘定科目で、その後、商品やサービスの提供があった時点で売上を計上します。セミナー情報
経理実務の「3大困りごと」 仕訳入力・経費精算・給与計算の業務効率化の考え方
【LIVE配信】10月24日(木)13:30~15:30
【アーカイブ配信】10月29日(火)~11月29日(金)
「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」から362件の経理担当者のリアルな声が聞けました!
その中でも実務において経理担当者が困っている「仕訳入力」「経費精算」「給与計算」の「3大困りごと」を改善するためのセミナーを開催します。
本セミナーでは、数々の経理業務の代行や業務改善コンサルティングを行っている講師が、それぞれの業務から見た改善ポイントを考察します!
【講師】MJS税経システム研究所 客員講師
外波 達也 氏
経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!
関連リンク
-
情報通信業
サブスクリプション型ビジネスの採算はどう考える? 家庭菜園との意外な共通点とは?
-
情報通信業
業務委託経費削減のヒントは思わぬところにあった。経営者がとった方法とは?
-
情報通信業
目標達成部門がゼロ……。 鬼と呼ばれた営業部長に教わった目標達成の秘訣とは?
-
情報通信業
耐えられない量のルーチンワーク! 文句を言わずにやってくれる人とは?
-
情報通信業
社長は僕らをクビにするつもりか? 業務マニュアル作成の真の目的とは?
-
小売業
店先に吊り下げた“のれん”が1億円!? 社長が恥をかいた会計用語とは?
-
製造業
売上より売掛金が大きいと何がおかしいんだ? 新卒君が新卒先生に格上げになったわけ
-
情報通信業
働き方改革! 採用した中途社員が3日で辞める会社。社長が料理に学んだ対策とは?
-
情報通信業
働き方改革を後押し! 残業削減に効果を発揮した方法とは?
-
情報通信業
残業削減と月次決算早期化が両立?! 疲弊する経理部員を救ったその方法とは?
X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています
Tweets by mjs_zeikei