経理部長のシミュレーション力で救われた! 売上急回復の企業がはまる落とし穴とは?
2022年5月23日
質問
飲食店向けの酒類卸売りを営む「ミロク酒類販売」は、コロナの収束により注文が増え、売上の急回復が見込まれています。この状況で経営者が見落としていた大事なことは何でしょうか?
パターン1
余裕資金の運用先の検討
パターン2
新たな資金調達の検討
パターン3
借入金返済の検討
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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売上急回復に落ち着いて対応
新型コロナ感染拡大時に売上が大きく落ち込んでいた「ミロク酒類販売」ですが、コロナ収束によりようやく飲食店での酒類提供が再開し、売上が急回復に転じています。予めこの状況を想定して対応を検討していたお陰で、大きな混乱なく対応できているようです。
数カ月前 ~売上急回復に備えよ!
ミロク酒類販売は飲食店向けの酒類卸売りを営んでいます。これまで切り開いてきた調達ルートで、他社にはない酒類も取り扱っており、多くの飲食店に納入しており、販売代金は概ね納入月の翌月末となっています。
コロナの影響で長らく売上が落ち込んでいましたが、ここに来てコロナの収束傾向が強まり、ようやく酒類提供再開も視野に入ってきていました。そんなある日の幹部会でのこと。あいにく経理部長は所用のため欠席しています。
営業部長 | どこのお得意先さんも、ようやく店でお酒を提供できると喜んでいらっしゃいます |
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社長 | うちも長い間、苦しい状況が続いてきたが、やっと先に光が見えてきたな |
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営業部長 | はい! これから一気に売上回復に持っていきます! |
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社長 | おー、頼もしい限りだ。頼んだぞ。 |
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購買部長 | 今は在庫も相当絞り込んでしまってますから、今後は仕入も増やさないといけませんね |
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社長 | うん、そうだな。質のいいものをできるだけ安く調達できるよう工夫してみてくれ |
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購買部長 | 分かってます。うちは現金でのまとめ買いで安く調達できるのが強みなのは社長もご存じじゃないですか。在庫として1カ月位は保有する感じになりますが |
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社長 | そうだったな。うちも一時はどうなるかと思ったが、今後が楽しみだ。うちは利益率は決して高くはないが、売上が伸びれば業績もぐーっと良くなるだろう。借入金もさっさと返して、皆にもボーナス出せるように頑張ろう |
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こうしてミロク酒類販売は、コロナ禍の収束により今後は売上の急拡大に向けて舵を切ることになったのです。今後しばらくは売上が毎月2割増のペースで拡大することも十分見込めそうです。
この状況でミロク酒類販売の社長が特に検討すべきことは何だったのでしょうか。
質問
飲食店向けの酒類卸売りを営む「ミロク酒類販売」は、コロナの収束により注文が増え、売上の急回復が見込まれています。この状況で経営者が見落としていた大事なことは何でしょうか?
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パターン1
余裕資金の運用先の検討
パターン2
新たな資金調達の検討
パターン3
借入金返済の検討
売上の急拡大によって十分な余裕資金が生じるのであれば、その運用先を検討することも大事でしょう。ただ、ミロク酒類販売は売上の急拡大によって逆に資金繰りが悪化することが見込まれる状況のようです。
ミロク酒類販売の社長が見落としていたのは、資金調達の検討をすることでした。実は、ミロク酒類販売は売上の急拡大によって逆に資金繰りが悪化することが見込まれる状況のようです。どういうことかと言うと……
売上の急拡大によって十分な資金が生じるのであれば、借入金返済を検討することも大事でしょう。ただ、ミロク酒類販売は売上の急拡大によって逆に資金繰りが悪化することが見込まれる状況のようです。
シミュレーションしたお陰で助かった!
経理部長が所用を済ませて会社に戻ると、ちょうど社長と会いました。すると、ご機嫌な様子で今日の幹部会の様子を話してくれたのです。売上急回復が見込まれることなど、事細かに説明を受けていたのですが、話を聞きながら経理部長は気付いたのです。
経理部長の心の声 | <大変だ。社長は大事なことを見落としている> |
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そして、簡単な設例を用意して社長に説明し始めました。
経理部長 |
仮に、2月目110万円の売上が見込まれ、以降は毎月20%ずつ拡大すると見込まれるとしましょう。このときの売上見込額は【図表1】のようになります |
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社長 | うん |
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経理部長 | うちは、売上に備えてだいたい1カ月前に商品を調達しておきます。約10%の利益を乗せて販売しています |
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社長 | うん、そうだな |
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経理部長 | そうすると、2月目に110万円売り上げるには、1月目にその商品(原価100万円)を仕入れておくことになります。同様に計算すると仕入見込額は【図表1】とようになります |
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経理部長 | 問題は資金繰りへの影響です |
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社長 | ん? 何か問題があるのか? |
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経理部長 | 大ありなんです |
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そう言うと、経理部長は社長に【図表2】を見せて説明したのです。
社長 | うーん、売上はどんどん伸びても、現金預金は逆に雪だるま式に減ってくってわけか…… |
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経理部長 | そうなんです。ですから、その前提で運転資金の調達について銀行と相談しておかなければなりません! |
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売上が急拡大すれば業績は大きく改善するかもしれません。しかし、資金繰りの面から見ると、商品を仕入れればその代金の支払いが生じる一方、それが現金預金として回収されるまでには、仕入れた商品を売るまでの期間、そして売った後にその代金を回収するまでの期間を要することになります。これが長くなれば、その分資金繰りを圧迫することになります。
特に売上が急拡大している場合、入金よりも出金が多くなって資金繰りの悪化が加速してしまうおそれもありますので、十分注意する必要があります。
社長 | 経理部長のシミュレーション力で本当に助かったよ。資金繰りのことを考えずに突っ走っていたら、大変なことになっていた |
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ワンポイント解説
「運転資金」
運転資金とは、企業が事業を続けていく上で必要となる資金のことを言い、次のように計算することができます。
運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務
売上拡大局面では運転資金が増え、資金繰りが悪化することが少なくありません。
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