仕入先からの原材料値上げ要請! 利益確保のためにあのパン屋はどう対応したのか?

2022年12月3日

質問

郊外のパン屋「ルート369ベーカリー」は、パンの主要な原材料である小麦粉の値上げを仕入先から要請されています。このままでは利益が確保できない状態に陥ったので、大量購入による値引きを得ようと考えています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

購入量を無理に増やすとムダになりかねないので、値上げ要請をそのまま受け入れる。

パターン2

他のパン屋さん達と協同で、まとめ買いにより購入価格を抑える。

パターン3

店舗を増やすことで仕入量を増やし、購入価格を抑える。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

パン
コーヒー

少し余裕が見られるようになったパン屋

「ルート369ベーカリー」は、郊外のいわゆるベットタウンの駅近くのパン屋で、数店舗を営業しています。先代社長が奈良市出身ということもあり、パン屋にしては代わった店名となっています。

小麦粉等の原材料の値上げ要求への対応が一段落し、ルート369ベーカリーの現社長にも少し余裕が見られるようになっています。

しかし、1年前は大変な状況にあったのです。

1年前 ~2代目社長にバトンタッチ。しかし重大問題が発生!

長年にわたりルート369ベーカリーを経営してきた先代社長は、年齢的なことも考え、息子である2代目社長にバトンタッチしました。

現社長が引き継いでしばらくしたときのことです。先代社長の頃は、長年の信用もあってか、比較的安価に小麦粉等の原材料を仕入れることができていたのですが、代替わりしたのを機に仕入先が原材料価格の値上げを要請してきたのです。この原材料価格の値上げに対して、なんらかの対策を講じなければ利益が得られないことになりそうです。

社長は、今後も様々なリスクが生じる可能性があることを思いながら、パン屋を続けられることを願っていました。

質問

郊外のパン屋「ルート369ベーカリー」は、パンの主要な原材料である小麦粉の値上げを仕入先から要請されています。このままでは利益が確保できない状態に陥ったので、大量購入による値引きを得ようと考えています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

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パターン1

購入量を無理に増やすとムダになりかねないので、値上げ要請をそのまま受け入れる。

パターン2

他のパン屋さん達と協同で、まとめ買いにより購入価格を抑える。

パターン3

店舗を増やすことで仕入量を増やし、購入価格を抑える。

原材料をムダに購入するくらいなら、値上げ要請をそのまま受け入れる方がいいかもしれません。しかし、ムダにすることなく購入量を増やすことはできないものでしょうか。

ルート369ベーカリーの社長が選択したのはパターン2でした。自社だけでは購入量を増やすのが難しいとしても、他社と協同することで、購入量を増やすことができます。

店舗を増やせば自社で購入量を増やし、購入価格を抑えることもできるでしょう。しかし、店舗を増やすには多くの時間と資金がかかりますし、いたずらに店舗数を増やせば、経営リスクが大きく高まります。


馴染みの喫茶店のオーナーとの会話

原材料の値上げ要請に悩むルート369ベーカリーの社長は、地元密着型の喫茶店のオーナーの話を思い出していました。

社長 あなたの淹れてくれるコーヒーはおいしいね
喫茶店オーナー ありがとうございます
社長 どこかで修行していたんですか?
喫茶店オーナー はい。全国展開している甲乙コーヒーで働いていました
社長 ここの喫茶店は、甲乙コーヒーの名前は出していないよね
喫茶店オーナー ええ。自分のやりたいようにできるので、独立させてもらったんです。甲乙コーヒーも、独立を応援してくれたんです
社長 せっかく育てた人材が独立するのに、応援してくれるというのは、太っ腹だね
喫茶店オーナー そうですね。応援といっても、声援だけではなく、コーヒー豆の共同購入をさせてもらっているんですよ
社長 独立したのに?
喫茶店オーナー 実は、甲乙コーヒー出身の喫茶店オーナーが集まって、事業協同組合を作っているんですよ。コーヒー豆だけではなく、店で使用する備品や消耗品もすべてではありませんが、共同で購入しています
社長 それじゃ、一人で経営している孤独感はあまりないね
喫茶店オーナー そうですね。ときどき、研修も行っているので、勉強の機会もこの組織から得られているんですよ
社長 ふ~ん

当時、社長は、この事業協同組合の話を聞いたとき、仲の良い人達が集まっているだけだろうと受け止めていました。しかし今回、原材料の値上げ要請への対応を図らなければならない状況に直面し、事業協同組合に加盟するか、設立するかを考える価値はあると思い始めました。一企業の努力だけでは対応できない原材料価格の値上げが今後も起き続けるならば、いずれはパンの販売価格を上げなければならないかも知れませんが、従業員やアルバイトの給料・賃金を確保した上で、まずは企業努力の一つとして、事業協同組合を考え始めたのです。またやれる限りのことを行った上でパンの販売価格を上げるならば、お客さんも理解してくれるものと期待しています。  

社長は、同じように地元密着型の町のパン屋さんで、ルート369ベーカリーと商圏が被らないパン屋さん達に連絡を取り始めました。

小規模の事業主との連携を強めて

これまで一人で悩んでいた社長でしたが、自らの経営方針等を変えることなく、共同での仕入を行うことで、小麦粉の購入価格を少しではあるものの引き下げることに成功しました。この引下げは、小麦粉の価格上昇を打ち消すことはできませんでしたが、仕入先の選択肢が増え、リスク管理の観点からも意味があったと、社長は考えています。一企業だけでは借り入れが難しい場合でも、組合であれば信用力が増すことで借り入れができることもありそうです。さらに、使用したい原材料ながら少量であるために購入ができなかったものも、購入できるようになりました。事業協同組合のメリットがいろいろあったのです。

今後は、パンの製造技術のブラッシュアップや、小規模企業の経営スキル向上のために、事業協同組合で教育研修を行っていくことが決まっています。単独店舗の経営者であることは変わりありませんが、助け合える関係があることで、社長の心にも余裕が出てきたようです。

ワンポイント解説

「事業協同組合のメリット」

事業協同組合は中小企業等協同組合法に基づいて設立される協同組合です。組合のメリットとしては、共同購入により購入価格引下げがしやすくなる、信用力が増して融資を受けやすくなる、組合員相互の教育や情報提供がしやすくなるといったことが挙げられます。

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