損益分岐点とは? 経理スタッフ必見! 損益分岐点の計算方法と活用例

2023年1月13日

質問

経理部のスタッフから「損益分岐点って何のことでしょうか?」と聞かれたら、経理部長であるあなたは何と答えますか?

パターン1

キャッシュの増減がゼロとなる売上のことである。

パターン2

利益がゼロとなる売上のことである。

パターン3

黒字部門の売上と赤字部門の売上との差額のことである。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

経理
電卓

損益分岐点を理解し、損益分岐点分析を使いこなせるようになった経理スタッフ

「みろく家具販売」は家庭向けに家具を販売する会社です。ある日のこと、経理部長が経理スタッフTさんに相談しています。

経理部長 Tさん、うちの損益分岐点を算出してくれてありがとう。それで、この結果を見てどう思う?
経理スタッフ 正直、損益分岐点が結構高くて危ない水準だと思うんです。なかなか売上が増えない今の状況では、なんとか損益分岐点を引き下げる方法を考えないといけないのではないでしょうか
経理部長 そうだよなぁ。損益分岐点を引き下げる何かいい方法はないだろうか?
経理スタッフ 1つには……

今でこそ損益分岐点のことを理解し、いろいろな改善提案もできるようになった経理スタッフTさんですが、新人の頃は分からないことだらけだったのです。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

損益分岐点とは? 何に使えるの? 疑問を抱える新人時代の経理スタッフ

数年前、経理スタッフTさんがまだ新人だった頃のことです。

経理部長 Tさん、忙しいところすまないが、うちの会社の現状での損益分岐点がどの辺りにあるのかを算出してもらいたいんだ
経理スタッフ す、すいません。損益分岐点? どうもピンと来なくて……。損益分岐点って何のことでしょうか? 何に使えるのでしょうか?

質問

経理部のスタッフから「損益分岐点って何のことでしょうか?」と聞かれたら、経理部長であるあなたは何と答えますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

キャッシュの増減がゼロとなる売上のことである。

パターン2

利益がゼロとなる売上のことである。

パターン3

黒字部門の売上と赤字部門の売上との差額のことである。

確かに企業経営においてキャッシュが増加するか減少するかは重要です。しかし、損益分岐点はキャッシュの増減がゼロとなる売上のことではありません。

損益分岐点は「損失」と「利益」の分岐する点ということで、利益がゼロとなる売上のことを言います。では、損益分岐点をどのように計算し、どのように活用できるのかと言うと……

確かに企業経営において黒字部門と赤字部門を把握することは重要です。しかし、損益分岐点は黒字部門の売上と赤字部門の売上との差額のことではありません。

損益分岐点とは?

損益分岐点とは何か分からないという経理スタッフTさんに対して、経理部長が説明をはじめます。

経理部長 損益分岐点というのは、「損失」と「利益」の分かれ目、つまり「利益がゼロ」となる売上水準のことを言うんだ。うちの会社も今は利益が出ているけど、今より売上がグッと減ってしまったら赤字になってしまうかもしれない
経理スタッフ 逆に今は赤字の企業でも売上が増えることで黒字の企業になり得る
経理部長 そうだね。だから、経営者だったら、これから期末に向けてどの位の売上を上げれば利益が出るのか、どの位の売上しか上げられなかったら赤字になってしまうのかをつかんでおきたいよね?
経理スタッフ なるほど、それが損益分岐点をつかむということなんですね!

損益分岐点の計算方法 ~その考え方と計算式

経理スタッフ でも、どうやったら損益分岐点って分かるのでしょうか?
経理部長 仮に、80万円で仕入れた商品を100万円で売っている会社があって、今100万円の赤字だったとしよう。今の人員・店舗設備のままで売上を増やすとして、いくら商品を売れば赤字じゃなくなる?
経理スタッフ 100万円……でしょうか?
経理部長 いやいや違うよ
経理スタッフ そうでした。商品を100万円売ったって、それが丸々利益になるわけではないですね。原価80万円の商品を100万円で売ったら、利益は20万円だけですね。ということは、100万円の利益を上げるには……500万円の売上を上げないといけません!
経理部長 そういうことだ。100万円÷利益率20%で500万円の売上が必要ってことだ。一方で、給料や店舗の賃借料なんかは売上が500万円増えてもそのままだ
経理スタッフ なるほど
経理部長 大事なのは、商品の売上原価のように売上が増えるとそれに応じて増える費用がある一方で、給料や賃借料みたいに、売上が増えてもそのまま変わらない費用があるってことなんだ。前者が変動費、後者が固定費で、費用をこの2種類に区分することが損益分岐点算出のポイントだ
図1
図2
経理部長 話をシンプルにするために、簡単な例で説明しよう
(前提)
 ・1台を80万円で仕入れた商品を100万円で転売する商売を行っている。
 ・社員給料や事務所賃借料等の費用が5,000万円かかっており、売上があろうとなかろうとかかってしまう(=固定費)。
経理部長 この場合、いくら分の売上があれば赤字にならないかな?
経理スタッフ 売上がゼロでも5,000万円はかかってしまう。1台売れるごとに「100万円-80万円」で20万円の利益が出るってことですから……、こんな感じになりますでしょうか?
固定費 ÷ 販売1台当たりの利益 = 赤字にならない販売台数
 5,000万円÷20万円=250台
 
売上高=販売数×販売単価=250台×100万円=2億5,000万円
                       →これだけ売れれば元が取れる
経理部長 そういうことだね。実は「売上高-変動費」のことを限界利益、「限界利益÷売上高」のことを限界利益率って言うんだ。上のケースだと、限界利益率は?
経理スタッフ 20万円÷100万円で20%ってことですね。
経理部長 そして、損益分岐点の売上高を計算式で表すとこんな感じになる
損益分岐点=固定費÷限界利益率
図3

損益分岐点分析の活用例とメリット

経理スタッフ 実際の損益分岐点分析の活用って、イメージが今一つ分からないのですが、例えばどんなものがあるんですか?
経理部長 例えば、ある会社の社長が、年度決算で何としても黒字を達成したいと考えている。今のところ黒字なのでこの調子が続けば年度決算も黒字を確保できそうだが、今後売上が落ち込んだら赤字になってしまうかもしれない
経理スタッフ 心配でしょうね……
経理部長 でも、今の売上水準よりも5%落ち込んだら赤字になってしまうのと、40%落ち込まないと赤字にならないのとでは大違いだろ?
経理スタッフ 40%ならまだ余裕がありますが、5%だったらもう余裕がありませんね……
経理部長 そうなんだよ。実はこの5%とか40%とかのことを“安全余裕率”(または“経営安全率”)と言って、損益分岐点分析を使って計算できるんだよ
経理スタッフ そうだったんですか!
経理部長 これが分かれば自ずと対応策も変わってくる。5%落ち込んだら赤字になってしまう水準なら、期末に向けてもっと販売を強化しないといけないかもしれないし、費用を削減しないといけないかもしれないだろ? うまく費用を削減できれば、赤字になってしまう売上水準を引き下げることもできるんだ
経理スタッフ なるほど、今後の対応策の検討にも役立つんですね!

安全余裕率(経営安全率)の計算とその意味合い

実際の売上高が損益分岐点とどの位離れているのかを表す指標で、次の計算式で計算でき、これが高いほど良い状態と言えます。

 
 安全余裕率 =(実際の売上高-損益分岐点)÷ 実際の売上高×100
 
例えば、実際の売上高が200、損益分岐点が180だとすると、安全余裕率は10%(注)となります。これは今の水準よりも10%売上が落ちると赤字になってしまうことを表しています。
 (注)(200-180)÷200×100=10%
図4

(参考)「損益分岐点比率」を使う場合
   損益分岐点分析では、以下の計算式で計算される損益分岐点比率が使われる場合もあります。
    損益分岐点比率=損益分岐点÷実際の売上高×100
     または
    損益分岐点比率=固定費÷限界利益
   「損益分岐点比率=1-安全余裕率」となりますので、損益分岐点比率100%が赤字ライン、100%超だと赤字、
               比率が100%を上回り、大きければ大きいほど赤字になりにくいということになります。

経理部長 損益分岐点分析は他にもいろいろな活用ができる。新規事業・新商品などを投入しようとする場合に、どの位まで売上が増えれば採算が取れるようになるのかをシミュレーションするとかもその1つだが、それらについてはまた別の機会に説明するよ

損益分岐点を引き下げるには

経理部長 ところで、損益分岐点が高い場合と低い場合だと、どちらが少ない売上でも黒字になる?
経理スタッフ それは損益分岐点が低い場合です!
経理部長 そのとおりだ。だとすると、赤字になりにくいようにするために損益分岐点を引き下げようとしたら、どうしたらいいだろう
経理スタッフ えー、費用を削減するとか……
経理部長 それも1つだけど、他にもあるんだ

そう言うと経理部長は次の3つを挙げたのです。

損益分岐点を引き下げるには

①固定費を削減する
 (例)水道光熱費や消耗品のムダ遣いをやめる、非効率による残業を削減する、業務のアウトソーシングにより人員を削減するなど
②変動費率を下げる
 (例)商品や材料のまとめ購入による仕入価格引下げ、廃棄ロスの発生抑制、製造工程の見直しによる材料費の削減など
③販売単価を上げる
 (例)商製品・サービスの値上げ、商製品・サービスの見直しによる高価格化など

経理部長 でも①から③で影響し合うところがあるから注意が必要だけどね。これについてもまた別の機会に説明するよ

ワンポイント解説

「損益分岐点」

損益分岐点とは、営業利益(経常利益を使うこともある)がゼロとなる売上水準のことを言い、次の計算式で算出することができます。
  損益分岐点=固定費÷限界利益率

関連リンク

財務会計のデータを活かした効率的な損益分岐点分析を実施しよう!

MJSシステムでは、損益分岐点にかかる帳票も用意していますので、財務会計のデータを活かした効率的・効果的な管理会計の実施が可能です。興味のある方はコチラもご覧ください。

「MJSLINK DX 財務大将」の紹介

税務DX

おすすめ情報

MJS税経システム研究所『公式Xアカウント』を開設しました!

税経X

経営センスチェックの最新記事が公開されたらXでお知らせします。
また、経営に役立つさまざまな情報もXから気軽にお届けしていきますので、ぜひフォローをよろしくお願いいたします!

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら