売上目標を達成した後も、営業努力を継続させる方法とは?

2023年8月23日

質問

「MRC社」では、営業担当者の営業努力を引き出すために、各営業部門に対して達成すべき年間売上目標額を提示しています。しかし、設定された売上目標額を達成したとたん、営業担当者は営業努力をやめてしまい、その結果多くの販売機会が失われていることが社内で問題視されています。経営者であるあなたは、営業努力を継続させるためにどのような策を講じますか?

パターン1

現場の努力を継続させようとしない営業部門長を叱責する。

パターン2

達成困難な高い水準の売上目標額を提示する。

パターン3

同業他社の売上実績との相対的比較によって営業部門の成績を評価する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

目標
勉強

さらなる高みを目指して努力を続ける営業担当者

継続的に売上高を成長させ続けることは、多くの経営者を悩ませる経営課題の一つです。「MRC社」では、営業部門が達成すべき年間売上目標額を提示することで、営業努力を引き出そうとしてきました。しかし、目標額を達成したとたんに営業努力をやめてしまう営業担当者が続出し、多くの販売機会が失われていることが社内で問題視されていました。そこで、MRC社の経営者は、社内での議論を経て、これまでのやり方を改めることにしました。その結果、多くの営業担当者は努力を継続するようになり、同社の売上高は大きく成長することとなったのです。

数カ月前…。ある日の経営会議にて

社長 同業他社の売上高は順調に伸びているが、わが社はやや停滞気味のようだ。営業部長、現場の様子を報告してくれ
営業部長 社長のご指摘のとおり、他社に比べるとわが社の売上高の成長はやや停滞しています。しかし、予算上の売上目標の達成に向けて、各営業部門は与えられた年間売上目標額をしっかりクリアしています
社長 現場は頑張ってくれているのだな。しかし、同種製品を扱う他社があれだけ売上を伸ばしているのだから、わが社にも成長の機会があるように思うのだが……
営業部長 実は、ある営業部門長から、こんな声を聞いています。各部門の年間売上目標額をクリアすれば評価は高まるのだから、それ以上の努力はあえてしない。目標額をクリアしたことを知った営業部門では、翌年の売上目標を達成しやすくするために、余裕を残していると言うのです
社長 なるほど。どうやら目標の設定や運用の方法に問題がありそうだな。営業部長、各営業部門がしっかり努力を続けてくれるよう、至急妙案を検討してくれ

多くの営業部門では年間売上目標額をクリアしているようですが、達成すべき売上目標額をクリアしたとたん、努力をやめてしまうようです。どうすれば、各営業部門は努力を継続してくれるようになるのでしょうか。

質問

「MRC社」では、営業担当者の営業努力を引き出すために、各営業部門に対して達成すべき年間売上目標額を提示しています。しかし、設定された売上目標額を達成したとたん、営業担当者は営業努力をやめてしまい、その結果多くの販売機会が失われていることが社内で問題視されています。経営者であるあなたは、営業努力を継続させるためにどのような策を講じますか?

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パターン1

現場の努力を継続させようとしない営業部門長を叱責する。

パターン2

達成困難な高い水準の売上目標額を提示する。

パターン3

同業他社の売上実績との相対的比較によって営業部門の成績を評価する。

なぜ現場が努力を継続しようとしないのか、その原因を解明しないことには本質的な解決につながりません。叱責された営業部門長は、再び叱責されることを恐れて萎縮したり、売上目標達成のために様々な不正に走ったりする可能性もあります。営業担当者が自発的に努力を継続する仕組みを考える必要があるでしょう。

各営業部門が達成すべき売上目標の水準を高め、達成が困難な水準の目標を設定することでさらなる努力を引き出す方法も考えられます。しかし、あまりに達成が困難である場合、達成ができないことで自信をなくす者や、不正な手段を使って目標達成しようとする者が出てくるかもしれません。むやみに売上目標を高めることも得策とは言えないでしょう。

目標水準の高さに関わらず、固定的な目標を与えられた者は、目標を達成した段階で、さらなる努力をやめてしまうものです。そのことに気づいた営業部長は、各部門に対して固定的な売上目標額を設定することをやめ、各営業部門の同業他社にあたる企業の売上実績との相対的な比較を行い、各営業部門の業績を評価することにしたのです。ライバル企業の業績との相対的比較によって部門の業績が決定されるため、各営業部門では、同業他社を超えるための営業努力を継続するようになったのです。

ヒントは中学受験に励む小学生の息子との会話にあった

ある休日のこと。MRC社の営業部長は小学生の息子に話しかけました。

営業部長 今月末は模擬試験があるんだったよな。今回の目標は決めているのか?
息子 今回は模擬試験に向けて1カ月で20時間勉強するって決めてるんだ
営業部長 試験まであと1週間だぞ。ここ数日ゲームばかりしている気がするんだけど……
息子 だって、もう20時間クリアしちゃったんだもん。目標はしっかりクリアしたからね!
営業部長 おいおい。目標の勉強時間をクリアしたからって、勉強をやめてしまっていいのかい? あと1週間もあるんだから、もう少し頑張れるんじゃないか?
息子 う~ん。塾の友達も頑張って勉強してるって言ってたからなぁ。もう少し頑張ってみようかな
営業部長 そうだな。ライバルに勝つためには、ライバルよりも努力しないといけないからな

このとき営業部長は思いました。

営業部長の心の声 <これはわが社の営業部門にも当てはまることかもしれないぞ……>

相対的評価の導入

後日、営業部長は、固定的な年間売上目標額の設定をやめることを社長に提案しました。マーケティングリサーチ会社から四半期ごとに情報を入手することで各営業部門のライバル企業の売上実績や営業の動向を把握し、同業他社との相対的な比較によって、各営業部門の業績を評価することにしたのです。

営業部長 社長、各営業部門長と意見交換をしたところ、やはり固定的な年間売上目標が現場の継続的な営業努力を妨げていたことがわかりました
社長 そうか、各営業部門は目標をクリアしているから問題ないとばかり思っていたが、目標の設定方法によって多くの販売機会を逃しているとは気づかなかったよ。それで、この問題を解決する方法はあるのかね
営業部長 各営業部門に対する固定的な年間売上目標の設定をやめて、四半期ごとに同業他社の営業実績と相対的な比較を行い、各部門の業績を評価する方法に切り替えたいと考えています
社長 固定的な目標設定から、ライバル企業との相対評価に切り替えるというわけか
営業部長 そのとおりです。マーケティングリサーチ会社などから同業他社の営業実績に関する情報を入手する必要はありますが、固定的な目標をクリアしたのち努力をやめるという問題を回避することができます
社長 ライバル企業を超えられたかどうかで営業部門の業績を評価するということだな。この方法なら、各営業部門はライバル企業の動向を把握しつつ、彼らの業績を超えるように努力を続けようとするだろう。これは妙案かもしれないな

MRC社は、各営業部門の業績を相対的評価によって測ること(=相対的業績評価)にしました。その結果、これまで途中で営業努力をやめていた各部門は、ライバル企業を超えるために努力を継続するようになり、売上高の成長を実現することができたのです。

ワンポイント解説

「相対的業績評価」

固定的な目標額の設定は行わず、同業他社との相対的な比較に基づいて業績目標や重要業績指標(Key Performance Indicator: KPI)の設定を行い、同業他社の状況との相対的な評価を行うことを相対的業績評価と言います。固定目標を設定することで生ずる予算目標達成後に努力を継続しなくなってしまうという問題の解決策の一つと考えられています。詳しくは、以下の書籍などをご参照ください。
清水孝(2013)『戦略実行のための業績管理』中央経済社.

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