固定費・変動費の分類が損益分岐点や利益計画に与える影響とは?

2024年9月3日

質問

家電製品を生産・販売する「ミロクカンパニー」は、経済の低迷に伴って、需要が減少傾向にあります。この状況を反映した利益計画を策定すべく、経理部長は、経理部の新人に対して固定費を集計するよう指示を出しました。次のうち、固定費に分類するのが適切ではないものはどれでしょうか?

パターン1

毎月ほぼ同額発生している事務所や工場の家賃

パターン2

毎月ほぼ同額発生している設備の減価償却費

パターン3

毎月ほぼ同額発生している材料費

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

家電
損益分岐点

利益計画における固定費

「ミロクカンパニー」の経理部に配属された新人Aさんは、利益計画の策定に向けて、経理部長から固定費を集計するよう指示を受けました。固定費について正しく理解していなかったAさんは、固定費ではない費目までも固定費として集計してしまったことで、利益を生み出すために必要となる売上高(損益分岐点売上高)を大きく見積もっていました。経理部長のアドバイスによって、固定費を誤って理解していることに気付いたAさんは、固定費の意味と、利益計画における固定費見積りの重要性を知ることになったのです。

以前 ~利益計画会議にて


経理部長

日本経済の低迷とともに、わが社の製品に対する需要も急激に落ち込む可能性がある。次年度の利益計画は慎重に考えなければならない。早速だが、Aさん、利益計画を策定するために固定費の集計をお願いしたい

こ、固定費ですか。利益計画に必要な固定費を集計すればよろしいのですね


Aさん


経理部長

そうだ。早速たのんだよ

承知いたしました! すぐにとりかかります!


Aさん

具体的な費目はわからないけど、固定的な費用だよな……。それらしい科目を集計してみよう


Aさん

固定費について正確な理解のないAさんでしたが、経理部長の要求に少しでも早く応えるため、固定的に発生している費目をひとまず集計して、経理部長に報告することにしました。

部長! ご指示のとおり、利益計画に必要となる固定費の金額を集計して参りました。ご確認をお願いいたします!


Aさん


経理部長

仕事が速いね! 早速確認してみよう。……おや? 固定費の金額がずいぶん大きいな。Aさん、どうやら固定費ではないものまで含めてしまったようだね

固定費について正確に理解していなかったAさんは、毎月ほぼ同額発生している費用をすべて固定費として集計していました。利益計画にあたっては、固定費について異なる理解が必要となるようです。

質問

家電製品を生産・販売する「ミロクカンパニー」は、経済の低迷に伴って、需要が減少傾向にあります。この状況を反映した利益計画を策定すべく、経理部長は、経理部の新人に対して固定費を集計するよう指示を出しました。次のうち、固定費に分類するのが適切ではないものはどれでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

毎月ほぼ同額発生している事務所や工場の家賃

パターン2

毎月ほぼ同額発生している設備の減価償却費

パターン3

毎月ほぼ同額発生している材料費

支払家賃は通常、固定費に該当します。
※固定費に関する解説はパターン3をご確認ください。

減価償却費は通常、固定費に該当します。
※固定費に関する解説はパターン3をご確認ください。

固定費とは、操業度(生産量や販売量など)に関わらず、一定額発生する費用を言います。したがって、発生している金額が偶然毎月ほぼ同額であったとしても、発生額が操業度に比例して変化する性質のものであれば、それは固定費ではなく、変動費ということになります。固定費と変動費の分類は利益計画に大きな影響を与えることになるため、注意が必要です。

固定費の「固定」の意味を勘違いしていた!

部長、ご指摘いただきありがとうございました。固定的な金額が発生しているものが固定費というわけではないのですね


Aさん


経理部長

材料費のように、操業度、すなわち生産・販売量に応じて発生額が変化するようなものは、固定費ではなく変動費に分類する必要があるんだ

なるほど! これまでは生産・販売量が安定していたため、材料費が毎月同程度固定的に発生しているように見えていただけだったのですね


Aさん


経理部長

そのとおりだね。特に利益計画を行う際には、操業度(生産・販売量)の変動に応じた利益計画を立てる必要があるから、操業度との関連で固定費・変動費を分類する必要があるんだ

固定費・変動費の分類と損益分岐点や利益計画への影響

とても勉強になりました。もし、私が計算したように、固定費を大きく計算してしまうと、利益計画にはどのような影響が出てしまうのでしょうか?


Aさん


経理部長

次の2つの図を見比べてみよう。下の方の図は、固定費を大きく計算した場合の図になる。利益を上げるために必要な生産・販売数量はどうなっているかな

図1図2

固定費を大きく(変動費を小さく)すると、利益を上げるために必要とされる生産・販売量(損益分岐点)が大きく見積もられてしまうのですね。固定費・変動費の分類と損益分岐点への影響をきちんと理解しておかないといけないと思いました


Aさん


経理部長

そのとおり。利益計画にあたって固定費を大きく見積もってしまうと、利益を上げるために必要となる生産・販売量が大きく計算されることになる。特に現在のように景気が悪化している局面では、過剰生産や、販売スタッフの余剰人員を生んでしまう可能性があるんだ

固定費・変動費の分類は、利益計画に大きな影響を与えてしまうのですね……


Aさん

経理部長に指導を受けたAさんは、固定費・変動費の分類は操業度(生産・販売量)に比例して増減するかどうかで判断する必要があることを学ぶとともに、利益計画に与える影響の重大性に気付かされたのでした。

「固定費・変動費の分類と損益分岐点への影響」

損益分岐点を算出するためには、費用を固定費と変動費に分類して見積もる必要がありますが、変動費を固定費として見積もると損益分岐点が高く見積もられ、逆に固定費を変動費として見積もると損益分岐点が低く見積もられることがあります。固定費・変動費の分類が損益分岐点にどのように影響するかを押さえておくと良いでしょう。

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