人件費が利益を圧迫!? 人件費増加を防ぐ人件費率の分析方法と改善策
2025年5月23日
質問
「ミロク商店」では、売上が伸びる一方、利益が思うように伸びていません。人件費の増加が続いており、人件費の問題が懸念される中、あなたが経営陣なら、まずは次のうちどの項目を優先して選びますか?
パターン1
まずは、全店舗の従業員の業務時間を一律で削減することを検討する。
パターン2
まずは、人件費の額が一番多い店舗の人件費を削減することを検討する。
パターン3
まずは、売上高に対する人件費の割合を店舗ごとに比較し、効率の悪い店舗を洗い出す。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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厳しい競争環境で安定した業績を実現!
「ミロク商店」は、ある地域でいくつか販売店を展開しています。現在は、人件費を適正な水準に収めることができています。ところが、数年前、売上が伸びる一方で利益が思うように伸びていませんでした。人件費の増加が続いており、人件費の問題が懸念される状況で、対応に悩んでいたのです。
数年前のこと ~人件費を適正な水準に改善するためにはどうすれば良い?
ミロク商店は、業務経験が豊富なシニア従業員による丁寧な接客を強みにして、地域のお客さんに支持される店舗運営を行ってきました。ところが、最近は売上が伸びる一方で利益を思うように伸ばせなくなってきました。人件費の増加が続いており、人件費の問題を懸念した経営陣は、ある日の会議で店舗の運営状況について話し合いました。
人件費がかかり過ぎているなら、業務時間を減らさないといけませんね。全店舗一律で、今よりも業務時間の削減をすることを検討しましょうか?
役員A
人件費の額が一番多い店舗を何とかしないといけませんね。その店舗の人件費を削減することを検討しましょうか?
役員B
売上高に対する人件費の割合を店舗ごとに比較してみるのはどうでしょうか?
役員C
社長
みんなの提案はわかった。そうすると、わが社は、まずどこから取り組むべきか……
う~ん……
一同
経営陣は、なかなか判断できずにいます。
質問
「ミロク商店」では、売上が伸びる一方、利益が思うように伸びていません。人件費の増加が続いており、人件費の問題が懸念される中、あなたが経営陣なら、まずは次のうちどの項目を優先して選びますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
まずは、全店舗の従業員の業務時間を一律で削減することを検討する。
パターン2
まずは、人件費の額が一番多い店舗の人件費を削減することを検討する。
パターン3
まずは、売上高に対する人件費の割合を店舗ごとに比較し、効率の悪い店舗を洗い出す。
全店舗の従業員の業務時間を一律で削減することで人件費を削減することができるかもしれませんが、店舗間の違いを分析しないまま全店舗一律の対応をするのでは問題の解決にはならないかもしれません。
人件費の額が一番多い店舗の人件費を削減すれば、人件費削減の効果が大きくなるかもしれません。しかし、人件費が多い分、売上高も大きい店舗なのであれば、その店舗よりも他の店舗に人件費の問題が隠れているかもしれません。
経営陣が選んだのはパターン3でした。まずは、売上高に対する人件費の割合(売上高人件費率)を店舗ごとに比較し、効率の悪い店舗を洗い出すことにしたのです。どういうことかと言うと……
経営に詳しい友人から助言をもらった社長
ある日、社長は経営に詳しい友人のXさんと話をする機会がありました。
社長
最近、うちの会社、売上は伸びているんだけど、利益が思うように伸びていないんだ。どうも人件費の増加が続いており、人件費の問題を懸念しているんだが、どうすれば良いか分からず、困っているんだ
そのような時は、まずは売上高人件費率で見ると良いぞ
Xさん
社長
売上高人件費率?
売上高に対する人件費の比率のことだ。君のところは店舗がいくつかあるから店舗ごとに売上高人件費率を比較してみるといいよ
Xさん
社長
この比率を使うと何がわかるんだ?
売上高人件費率の分析と改善策
Xさんによると、売上高人件費率が増加傾向にあるときや、適正な水準(例えば、業界平均)と比べて高過ぎるときには、必要以上に人件費をかけている可能性があるとのことでした。店舗がいくつかあるような場合には店舗ごとに売上高人件費率を算出し、それを比較してみることで、この比率が高い店舗や低い店舗が浮かび上がります。特に売上高人件費率が他と比べて高い場合には、何らかの問題が生じている可能性があります。
売上高人件費率を引き下げるには、売上高を上げるか、人件費を下げる必要があります。ところが、せっかく売上高を上げたとしても、人件費がそれ以上に増えてしまうと売上高人件費率は改善できません。
また、人件費を削減するには、給与を減らすことや人員を減らすことなどがあります。ただし、給与を削減する場合、従業員のモチベーションを下げたり、最悪の場合には離職率の増加につながってしまうかもしれません。人員に関しても、ミロク商店のシニア従業員のように彼らがもつ経験やノウハウが業務の生産性などに直結していて、企業の強みになっていることもあります。安易に人員を削減すると、その従業員が担っていた業務を残された従業員で対処する必要が出てきてかえって業務の生産性が低下する可能性があります。Xさんとの会話をきっかけに、社長は、店舗ごとの売上高人件費率を比較分析しながら、業務の生産性を高められないかと考えるようになりました。
自社で売上高人件費率を使った改善策の判断へ
早速、社長は部下に協力してもらい、自社の業務状況を調査してみました。ミロク商店の場合、店舗ごとの売上高人件費率に顕著な差異が生じていることが分かりました。特に売上高人件費率が高い店舗と低い店舗における業務の状況などを比較分析したところ、この比率が高い店舗で業務の進め方などに無駄なところが多いなど課題が見えてきました。さらに検討を進めると、「人員の配置を見直したり、店舗間での人員の移転を行うことで、現在の雇用環境を維持しつつ、通常業務の生産性を高めることができるのではないか。それによって空いた時間を売上増加の施策検討に使えば、人件費を適正な水準に改善できるのではないか」という話になりました。売上高人件費率を使い、かつ店舗間の売上高人件費率の比較分析を行うことで、ミロク商店では、人件費を適正な水準へと改善するための方法を考えることができたのです。
「売上高人件費率を使った改善策の判断」
売上高人件費率は、自社が売上を上げるためにどの程度の人件費をかけているかを判断するための指標で、以下のように計算できます。
売上高人件費率=人件費÷売上高×100
なお、売上高人件費率は低いほど良いというものではありません。中小企業実態基本調査(中小企業庁)によると、小売業であれば業種平均では概ね12%から13%、売上高階級別に細分すると10%から30%の範囲で推移しており[努中1]、業種や規模によっても状況が異なります。業界の平均を参考にして、自社が基準とする売上高人件費率を考えることが重要です。
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