成長企業の罠(2) 店舗を増やして売上が増えているケース

2023年4月13日

質問

ある地方都市を中心に店舗数を猛烈に増やしている飲食業の「みろくフレンチ」。毎年、着実に20%の増収を続けています。ところで、増収率20%が続いていれば特に問題はないでしょうか? 皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?

パターン1

既存店だけの増収率を計算してみる。

パターン2

日本に住むフランス人の増加率を調べてみる。

パターン3

全国の飲食業界のマーケット規模を計算してみる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

フレンチ
テスト

全社の売上高が増加しても喜ばない会社

「みろくフレンチ」は、ある地方都市を中心に、超低価格帯のフレンチの店を次々と増やしています。定食屋に行くような気軽さでフレンチを楽しんでほしい、という社長の思いで始めた店です。

昨年までの社長は、全社の売上高の増加率(増収率)ばかり気にしていましたが、今年はちょっと違います。

経理部長 社長、今月の全社売上高の対前年増加率が10%です。去年よりだいぶ下がっていますが、大丈夫でしょうか?
社長 全社売上高の増加率はしばらく見なくて良い。我々は全社の増収率ばかり気にして、大事なことを忘れていたんだ!

今でこそ、全社の売上高の増加率にこだわらなくなった社長ですが、それは前期が終わった頃のある事件がきっかけだったのです。

今年の増収率も20%! うちの会社は順風満帆だ!

前期が終わり、最初の経営会議でのことです。経理部長から、会社の売上高合計が対前年比で20%増加したことが報告されました。

経理部長 ……ということで、今年も増収率は20%です!
幹部社員 お~! 素晴らしい!
社長 みんな良く頑張ってくれた。ここ3年、毎年増収率20%とは驚きだ。おかげで今期も利益が増えそうだ。社員の賞与もはずもうじゃないか!
幹部社員 ありがとうございます!

賞与が増えることに大喜びの幹部社員たちを見ながら、社長はふと気になりました。

社長の心の声 <ちょっと待てよ。増収率20%は確かに高い数字だが、何か大事なことを見落としていないか? うちの会社の経営に全く問題がないと言えるのか?>

質問

ある地方都市を中心に店舗数を猛烈に増やしている飲食業の「みろくフレンチ」。毎年、着実に20%の増収を続けています。ところで、増収率20%が続いていれば特に問題はないでしょうか? 皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

既存店だけの増収率を計算してみる。

パターン2

日本に住むフランス人の増加率を調べてみる。

パターン3

全国の飲食業界のマーケット規模を計算してみる。

実は社長が選んだのはパターン1でした。既存店だけの増収率を分析するとはどういうことでしょうか……。


確かに、みろくフレンチはフレンチを提供していますから、フランス人の増加率と関係があるかもしれませんが、日本に住むフランス人の増加率を調べてもあまり参考にならないでしょう。

確かに、自社の属する業界のマーケット規模を調査することは重要です。しかし、みろくフレンチは地方都市を中心に店舗数を急拡大していますから、全国のマーケット規模は、あまり参考にはならないかもしれません。

中学生の娘の期末テストの点数が10%も伸びた!

経営会議で今年も増収率が20%だったことが報告された日の夜。社長が自宅に帰ってくると、うれしそうな顔をしながら、中学生の娘が話しかけてきました。

お父さん、この前の期末テストの合計点が385点だったのよ。前回350点だったから、35点も伸びたわ
社長 お~。それは大したもんだ。10%の増収率、いやいや、得点アップか!
それで、お願いがあるんだ。東京の本格フレンチに連れてってほしくて……

と、そこに妻が割り込んできて言いました。

あなた、だまされちゃだめよ。確かに350点から385点にアップしたけど、今回の期末テストは、英語が文法と英会話の2科目に増えているのよ。つまり5科目500点満点から6科目600点満点に増えているのよ
社長 えっ、じゃあ、新しく加わった英会話を除いた点数ではどうだったんだ?
前回の350点が320点に下がっているわ
ふふっ。ばれちゃったわ~
社長の心の声 <ちょっと待てよ。うちも店舗数が毎年増えている。つまり科目数が毎年増えているんだから、合計点数がアップしても当たり前ってことか。ということは、新規出店した店舗を除いた、既存店舗だけの増収率を見ないと、店の収益力が上がったかどうかは分からないってことか>

翌日、社長は経理部長に、既存店舗だけの増収率を調べてもらったところ、既存店の売上高は前年比5%下がっていることが分かったのです。しかも店舗別に詳細を見てみると、どの店舗もそろって前年比で売上が下がっていたのです。

社長の心の声 <なるほど。店舗数が増えているから増収になっているだけで、既存店の収益力が低下しているというカラクリに気づかなかったってことか。今は新規出店を頑張るより、むしろ既存店のサービスの見直しをして、足元を固めた方が良さそうだな……>

ワンポイント解説

「既存店舗の増収率」

店舗数を増やしているとき、新規出店した店舗の売上高も含めた全社の売上高で増収率を見た場合、既存店舗の収益力の低下が隠れてしまうことがあります。そこで、既存店舗だけで増収率を分析したり、また個別の店舗ごとに増収率を確認したりすることが必要です。

関連リンク

「成長企業が陥りやすい罠」についてもっと知りたい方はコチラもご覧ください。

おすすめ情報

MJS税経システム研究所『公式Xアカウント』を開設しました!

税経X

経営センスチェックの最新記事が公開されたらXでお知らせします。
また、経営に役立つさまざまな情報もXから気軽にお届けしていきますので、ぜひフォローをよろしくお願いいたします!

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら