成長企業の罠(3) 従業員数を増やして売上が増えているケース

2023年5月23日

質問

企業向けに様々な事務機器を販売する、卸売業の「MJS商会」。ここ数年、営業社員数を猛烈に増やしながら毎年20%もの増収を繰り返していますが、人件費の増加により利益はほぼ横ばいです。皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?

パターン1

ライバル企業の増収率と比較する。

パターン2

営業社員1人当たりの売上高を計算してみる。

パターン3

販売する商品数の増加率を計算してみる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

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増収率ではなく、違う指標を追いかける会社

「MJS商会」は、企業向けに様々な事務機器を販売する卸売業です。ここ数年は営業社員数を猛烈に増やすことで、毎年、増収を繰り返してきました。

去年までは、全社の売上高の対前年増加率(増収率)を大事な指標としていましたが、今年はちょっと様子が違います。

経理部長 社長、今月も売上高が前年同月比で20%アップしました!
社長 そうか、大したもんだ。でも、今年は増収率は気にしないことにしよう。むしろあの指標が気になる
経理部長 分かってますよ。社長、例の指標も、この通り改善しています!

今でこそ、増収率ではない、違う指標に注目しているMJS商会の社長ですが、そのきっかけは前期が終わったときのある事件にあったのです。

今年も増収率20%! でも、利益が増えていないぞ……

前期が終わり、最初の経営会議でのことです。経理部長から、全社の売上高が対前年比で20%増加したことが報告されました。

経理部長 ……ということで、今年も増収率は20%です!
幹部社員 お~! 素晴らしい!
社長 みんな良く頑張ってくれた。ここ3年、毎年増収率20%とは驚きだ。ただ、人件費が猛烈に増えた結果、利益はほぼ横ばいだが……、まぁ、とにかく増収率20%は素晴らしい。今年も社員の賞与ははずもうじゃないか!
幹部社員 ありがとうございます!

賞与が増えることに大喜びの幹部社員たちを見ながら、社長はふと気になりました。

社長の心の声 <ちょっと待てよ。増収率20%は確かに高い数字だが、利益がほとんど増えていない。何か大事な問題が潜んでいるんじゃないか?>

質問

企業向けに様々な事務機器を販売する、卸売業の「MJS商会」。ここ数年、営業社員数を猛烈に増やしながら毎年20%もの増収を繰り返していますが、人件費の増加により利益はほぼ横ばいです。皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

ライバル企業の増収率と比較する。

パターン2

営業社員1人当たりの売上高を計算してみる。

パターン3

販売する商品数の増加率を計算してみる。

確かに、ライバル企業の増収率と比較することは大切です。しかし、利益が横ばいの理由を知るためには、まずは自社を分析するべきでしょう。

実は社長が選んだのはパターン2でした。営業社員1人当たりの売上高を計算してみるとはどういうことでしょうか……。


確かに、取り扱う商品の数から何かの傾向や課題が見えてくるかもしれませんが、MJS商会では人件費が増えているので、違う観点での分析をしてみるべきでしょう。


中学生の息子の期末テストの点数は伸びたが、徹夜続きでもう限界のようだ

経営会議で今年も増収率が20%だったことが報告された日の夜。社長が自宅に帰ってくると、うれしそうな顔をしながら、中学生の息子が話しかけてきました。

息子 お父さん、この前の期末テストの合計点が275点だったよ。前回250点だったから、25点も伸びて、ついに平均点を超えたよ!
社長 お~。それは大したもんだ。10%の増収率、いやいや、得点アップか!
息子 お父さんの喜ぶ顔が見られて僕はうれしいよ。今日はちょっと早いけど、テスト勉強でヘトヘトだから、もう寝るよ。おやすみ……

自分の部屋によろよろと戻っていく息子を見ながら、妻が社長に言いました。

あなた、あの子、この1カ月毎日毎日勉強頑張ってて、試験の直前は何度も徹夜したみたいなの。ちょっと体が心配だわ
社長 そんなに頑張っているのに、やっと平均点ということは、何か勉強のやり方が間違っているんじゃないか?
そうなのよ。さっきノート見たら、教科書を丸写ししてるのよ。写経じゃないんだから……
社長 何だか効率悪そうだな~。今度、家庭教師でも頼んで、勉強の仕方を教えてもらった方がいいかもしれないな
社長の心の声 <ちょっと待てよ。うちも売上高は増加しているが、利益が増えていないってことは、何か非効率な営業をしているんじゃないのか? この前、中途採用した営業社員が、残業してヘトヘトになるまで頑張っているのに全く売上がたたないってこぼしていたのを思い出したぞ>

翌日、社長は営業部長に、営業社員1人当たりの売上高の推移を調べるよう指示を出しました。すると、営業社員1人当たりの売上高は毎年大きく下がり続けていることが分かったのです。

社長の心の声 <社員数が増えているから増収になっているだけで、営業社員の営業効率はどんどん下がっていることに気づかなかった。このまま、営業社員を増加し続けたら、いつか赤字になってどうにも手を付けられなくなるところだった。今は営業社員の数より質の強化が必要な時期だな……>

ワンポイント解説

「営業社員1人当たりの売上高」

売上高が増えていても、その陰で非効率が発生していることがあります。営業社員が増えることで売上高は増えているものの、営業社員1人当たりの売上高が低下している場合などです。営業社員数を増やすと同時に、1人当たりの売上高が低下しないよう、社員教育の仕組みを整備しておくなど、仕組み作りも大切です。

関連リンク

「成長企業が陥りやすい罠」についてもっと知りたい方はコチラもご覧ください。

成長企業の罠(1) 市場全体が拡大して売上が増えているケース
成長企業の罠(2) 店舗を増やして売上が増えているケース

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