P/Lが読めずに危うく大失敗!? 「経常利益」が赤字の会社の課題とは?
2023年4月23日
質問
父親が創業した小さな工場を継いだ2代目社長。1年間がんばって経営したところ、売上高は前期より増え、売上総利益と営業利益は黒字になりました。しかし経常利益は赤字になっています。あなたが経営者なら、その原因は何だと考えますか?
パターン1
広告宣伝費をかけ過ぎた。
パターン2
借入を増やし過ぎた。
パターン3
製品の販売価格を下げ過ぎた。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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売上、売上総利益、営業利益、経常利益、すべてが順調に増えている会社
「みろく精機」は、先代が創業した職人集団の製造業です。社員はみな職人です。技術力はピカ一で、大手企業からの注文も多いのです。
今年は、先代の息子である2代目が会社を継いで2年目です。2代目は大学を卒業後、大手製造業で技術者として腕を磨いていましたが、先代の病気もあり、会社を引き継ぐことにしたのです。
今期は、売上も利益も順調に増えていますが、2代目社長が会社を引き継いだばかりの前期は赤字で大変だったのです。
経常利益が赤字!? もっと、設備投資をして製品の品質を高めるぞー!
2代目社長がみろく精機を引き継いだとき、職人はみなやる気に満ちあふれていました。それは2代目社長が、みろく精機の社員が憧れる大手製造業の出身者だったからです。
2代目社長も、みろく精機の業績を一気に拡大させるため、思い切って銀行から借入をして設備を拡大し、そして広告宣伝をうって会社の知名度も上げ、さらに製品の販売単価を下げて、今までにないほどの受注を獲得したのです。
ところが問題は1年目が終わった決算で発覚しました。みろく精機の社員はみな職人なので、会社の経理業務も若手の職人が片手間にやっていたのですが……。
若手の職人 | 社長、大変です。前期の決算が一通り終わったのですが、赤字になってしまいました! |
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社長 | 何だって!? 決算書を見せてくれ。う~ん。確かに売上は3割も増えているのに赤字だ |
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若手の職人 | よく見てみると、売上総利益と営業利益は黒字ですが、経常利益が赤字になっているんです |
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社長 | 確かに経常利益が赤字だが……、ところで経常利益って何だ? |
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若手の職人 | さぁ……。私も職人なので、細かいことは分かりませんが、会社は経常的に赤字だってことでしょうか |
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社長 | まぁ、いろいろ考えても仕方ない。こうなったら、もっと設備投資をして、製品の品質を徹底的に高めるしかないだろう |
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社長の心の声 | <営業利益が黒字なのに経常利益が赤字だったって、一体どういうことだ? この1年の経営の何がいけなかったんだ?> |
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質問
父親が創業した小さな工場を継いだ2代目社長。1年間がんばって経営したところ、売上高は前期より増え、売上総利益と営業利益は黒字になりました。しかし経常利益は赤字になっています。あなたが経営者なら、その原因は何だと考えますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
広告宣伝費をかけ過ぎた。
パターン2
借入を増やし過ぎた。
パターン3
製品の販売価格を下げ過ぎた。
広告宣伝費をかけ過ぎたことで販売費及び一般管理費が増加した可能性はありますが、営業利益が黒字となっているのに経常利益が赤字になっている直接的な原因とはいえそうにありません。
実は、借入をしたことに問題があったようです。社長はそのことにどうやって気づいたのでしょうか……
製品の販売価格を下げたことで売上が増加もしくは減少という影響はあったと考えられますが、営業利益が黒字なのに経常利益が赤字となっている直接的な原因とはいえそうにありません。
若手の職人が決算書のセミナーで学んできたこととは?
社長と若手の職人が、経常利益の意味が分からず、とにかく設備投資を増やして製品の品質をもっと上げていこう、という結論になりかかったとき、思い切ったように若手の職人が言い出しました。
若手の職人 | 僕は毎年、見よう見まねで損益計算書や貸借対照表などの決算書を作っているのですが、そもそも決算書の見方を勉強したことがないのです |
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社長 | 決算書の見方か……。うちの会社にはそんなこと分かる人間はいないな…… |
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若手の職人 | 実は僕、会社の会計を片手間にやっているうちに何だか楽しくなってきちゃったんです。もっと会計の勉強もしたいので、決算書の読み方のセミナーに行ってきてもいいですか? |
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早速、若手の職人はインターネットで「決算書の読み方」というセミナーを見つけ、次の日、そのセミナーに出かけていきました。その日の夕方、会社では社長が職人たちを前に気合を入れていました。
社長 | いいか、みんな、前期は残念ながら赤字になったが、今期は黒字にするために、前期以上に設備投資をして製品の品質を高めていくー! |
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職人たち | おー! |
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と、そこへ、セミナーでの勉強を終えた若手の職人が会社に戻ってきました。
若手の職人 | 社長、大変です! |
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社長 | どうした? 決算書の見方が分かったか? |
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若手の職人 | はい。損益計算書には、5つの利益が出てくるのですが、最初に出てくるのが売上総利益で、次が営業利益です |
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社長 | なるほど、で? |
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若手の職人 | 3番目に出てくるのが経常利益ですが、これは営業利益に営業外収益を足して、営業外費用を引いて計算されます |
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社長 | 確かに、うちの会社は営業利益が10百万円で、営業外収益がゼロ、営業外費用が20百万円なので、経常利益が10百万円の赤字になっているぞ |
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若手の職人 | つまり、うちの会社は、売上総利益と営業利益は黒字なのに、営業外費用の支払利息が多過ぎたから赤字になったってことなんです |
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社長 | つまり、設備投資をするために銀行から借入をしたら、そのぶん支払利息が増えて赤字になったってことか……。こんな高い金利で無理に設備投資なんかするんじゃなかった |
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若手の職人 | このまま、銀行からの借入を増やして設備投資をして、もし売上が増えなければ、経常利益の赤字が拡大していたかもしれません。危なかったです |
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社長 | まったくだ。とりあえず、使っていない土地や機械はさっさと売って、そのお金で銀行の借入を少しでも減らすようにしよう |
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若手の職人 | それから、販売費及び一般管理費にも無駄があるかもしれませんから、広告宣伝費を含めて、中身を精査し、減らせる経費は減らすことも必要ですね |
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社長の心の声 | <危なかった。決算書は作ることも大事だが、作ったあとに正しく読めないと、とんでもない経営をしてしまうことになるな……> |
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ワンポイント解説
「経常利益」
損益計算書において、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を控除した利益のことを経常利益といいます。経常利益は、会社の経常的な利益を表しています。経常利益は日本特有の利益概念といわれ、また一般に「ケイツネ」とも呼ばれます。
お知らせ
2023年5月3日号は、ゴールデンウィークの連休中のため休載とさせて頂きます。次号は2023年5月13日号となりますので、引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。
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