自動車を買ったらいつ費用にする? 買った時? 使い終わった時? それとも…

2023年12月23日

質問

新車の営業用自動車を300万円で購入し、6年間使うと予測しているとして、正しく損益を計算するためには、6年間でどのように費用計上したらいいでしょうか?

パターン1

購入した最初の年に300万円を費用計上する。

パターン2

購入代金300万円を使い終わった時(6年後)に費用計上する。

パターン3

購入代金300万円を6年間で均等に費用計上する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

車
電卓

年間の減価償却費はどのように計算するのか?

スーパー・ミロクの二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。


社長

では、“固定資産の購入代金をどのように費用計上するのがいいか”の試験をするぞ

そう言うと次のような問題を出したのです。

【社長からの問題】

営業用の自動車を300万円で購入し、6年間使うと予測しているとして、正しく損益を計算するためには、6年間でどのように費用計上したらいいと思う?

ガソリン代とか保険料などは考えなくていいんだよね?


次男


社長

ああ、固定資産としての自動車の購入金額だけの問題だ

300万円で自動車を買ったら、その年度の費用になるんじゃないの? だから300万円だよね?


長男

うーん、1年目にいきなり赤字になっちゃいそうだなぁ。やっぱり使い終わった時、つまり6年後に、購入代金300万円を、費用計上するのがいいんじゃない?


次男

購入代金300万円を6で割って、6年間で均等に費用計上するじゃない?


三男

質問

新車の営業用自動車を300万円で購入し、6年間使うと予測しているとして、正しく損益を計算するためには、6年間でどのように費用計上したらいいでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

購入した最初の年に300万円を費用計上する。

パターン2

購入代金300万円を使い終わった時(6年後)に費用計上する。

パターン3

購入代金300万円を6年間で均等に費用計上する。

自動車を購入した代金300万円は、購入した年度の費用とすると、2年度目以降の費用が全く発生していないことになります。正しく損益を計算する上では、自動車を利用する期間にわたって費用が発生していることを前提とするので、購入代金の300万円を1年目の費用とすることは誤りです。

購入代金300万円を、自動車を使い終わった時(6年後)に費用計上するのでは、自動車を利用している各期に費用が計上されないことになり、正しく損益を計算しているとは言えません。規則的な費用計上をする必要があります。

自動車を利用している各年度の費用(減価償却費)は、購入した代金300万円を、使用する期間の6年で割って計算します(※)。したがって、1年目の減価償却費は、50万円になります。
(※)これは定額法による減価償却計算の場合であり、減価償却計算には定率法などの方法もあります。

ターニングポイントは、減価償却関連の用語の意味を理解したことだった


社長

さあ、計算結果は出たか?

3人の息子たちそれぞれの考えを聞いた松太郎社長は、次のような図表にまとめました。

【図表】3人の息子たちの回答

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目
パターン1 300 300
パターン2 300 300
パターン3 50 50 50 50 50 50 300


社長

お前たちから出た3つの費用計上案を並べてみるとこんな感じになる

息子たちの反応を見ながら、松太郎社長は購入した固定資産の費用計上の方法である「減価償却」について説明を始めました。


社長

これから説明するのは減価償却の話だ

え、ゲンカショウキャク? 難しい話なの?


長男


社長

いや、減価償却の説明では、聞きなれない用語がいっぱい出てくるから、その概念を理解してもらう必要があるんだ。3人ともちゃんと話についてくるんだぞ。じゃ、まず減価償却の減価という言葉だ

うん


一同


社長

さっきの試験で、300万円で買った自動車を6年間使うってあっただろう? 6年も使っていれば、車体に傷はつくだろうし、タイヤだってすり減る

あ、だから価値が減るんだ


次男


社長

そう、自動車の価値が減ることを減価というんだ。この減価は、通常は自動車の使用や時間の経過にともなって発生するから、決算書である貸借対照表に有形固定資産の金額を書くときに毎年減額していく必要がある。そこで、毎年の年度末時点での有形固定資産の金額を決める必要がある

うん


一同


社長

もうひとつ、ポイントがある。さっきの試験に話を戻すと、自動車を300万円で買って6年間使うのだったよな。その場合、減価は6年間で300万円発生することになる。この減価を6年で割って、1年当たり50万円の費用が発生していると考える。これが1年間の減価償却費と言うんだ

何でそんな計算するの?


次男


社長

有形固定資産は長期にわたって使用する資産だ。それに購入代金も大きい。買ったときに購入代金の全額をその年度だけの費用とするとその年度だけ費用が大きくなって、他の年度には費用が発生しないことになってしまうだろう?

有形固定資産は長期にわたって使用するのに、2年目以降は費用が計上されないのはおかしいってことか。だから、こういう計算をするんだ


長男

使用している期間全体に費用を配分しているんだよね?


三男


社長

そのとおりだ。まとめると、減価償却という手続きは減価によって価値が下がっていく有形固定資産の金額を貸借対照表にいくらで書くかを決めることと、減価によって発生した費用を有形固定資産の使用期間に配分することに意味があるんだ

なるほど~


一同


社長

ちなみに、自動車などの車両の他に、店舗などの建物、事務所の机・椅子・パソコンなどの備品、製造業であれば生産設備などの有形固定資産の多くに発生する。だから、新品よりも中古のほうが、有形固定資産を安く買えるわけだ

土地は値上がりするじゃない?


次男


社長

うん、土地は減価が発生しないので減価償却をしない

建物は中古があっても、土地の中古ってないもんね


長男

この後、息子たちは正しい解答にたどり着き、減価償却費の計算についての理解が進んだようです。

「減価償却費の計算」

有形固定資産の減価償却費は、使用している期間(これを耐用年数と言います)にわたって、減価によって発生する費用を配分するための手続きで、減価償却の方法には、定額法や定率法などがあります。

定額法の場合は、各年度の減価償却費は、取得原価から残存価額を差し引いて、その差額を耐用年数で割ることで、次の式のように計算します(ただし、実務上、残存価額をゼロとして計算するのが一般的で、税務上も平成19年(2007年)4月1日以後に取得した減価償却資産について、残存価額は廃止されました)。

  減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数

なお、耐用年数は、本来はその資産をどのくらいの期間にわたって使用するのかという観点から企業が独自に決定できます。しかし多くの企業は、課税額の計算にあたり、税法関連で定められた法定耐用年数(「耐用年数表」という表に示されています)を用いて減価償却費を計算していることが多いようです。法定耐用年数は、資産の種類・使用目的などにより、細かく決められています。

固定資産の物件管理業務や減価償却の計算業務、関係書類の作成の効率化に興味のある方はコチラもご覧ください。

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